第一回【なんでしょう句会】模様評

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52 顔に縞模様つくりて日暮れかな 酒少鶴二飼=5
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酒◯【評】日暮れ時にうたた寝している呑気さや怠惰さが、「つくりて」のひらがなや、跡をわざわざ「縞模様」と言う子どもっぽさの可愛気のようなものとシンクロしている。行き届いた「テヘペロ句」。が、無季である必然性は感じなかった。

少◯【評】うたた寝は気持ちいいケド、顔にはセーターの縫い目の跡、オマケに日は落ちかけてることへの、ちょっとした後悔の念を感じました。

二◯【評】縞がなんの影か分からないのだのでなんだろ?と思いながらも すーと入ってくる全体が凄く好き。

飼◯【評】暖かくのんびりした一日を想像してにっこり。年末で忙しい時期にこのような句を作るところに作者の願望を感じた。そこに共感。

鶴◯【評】縞模様のやわらかくないなにかの上で寝たね。しかも日暮れまで。だったらいっそ布団で寝たらよかった…。おなじみの罪悪感と、肌色桃色の縞模様のかわいさに一票。

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53 マフラーの模様数えて待ってます 寝栗彗=3
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栗◯【評】「北の宿から」を彷彿させるが、待ってますの言い切りが、明るい。出来上がって、渡す約束をして待ちながら、袋の中からみえる模様を数えてしまってる。冬の初々しい恋人が浮かぶな。

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54 少年の模様破れて冬の虹 る黒重爽幽彗=6
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重◯【評】少年に何があったかはわかりませんが、〈破れた〉人の上に架かる虹の物悲しさに魅了されました。

黒◯【評】少年から青年への脱皮を想像しました。まさにいま脱ぎ捨てようとしている少年の皮の隙間から、一直線に虹が飛び出す様子が神々しくて◯。

る◯【評】少年というナイーブなものが破れたところに冬の虹、という言葉がとても美しい。破れている模様はなんだろう。服?だとすると、ジャイアンにボコボコにされたのび太みたいな格好が想像される。または、もっと繊細なものかも。 

爽◯【評】陽が出始め、どこからか集まりだした少年達。校庭のような見渡せる場所で二手に分かれてなにかを開始する。そこにかかる虹を思いました。

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55 模様なしばかりを乞うた年長さん く寝炭炭蓬丼ツ珍=8
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蓬◯【評】年長さんは小学一年生より年下なのに、なぜか一年生より大人ぶっている。もう柄物とか持ってられないね!と思っている。「さん」がないとそのへんの人物の機微が伝わらないので、字余りだけど無駄はないのです。

く◯【評】買ってもらった洋服を見て、「もうこういう模様ばっかりのやつはいや! 年少さんじゃないんだから」と着るのを拒否。ポニョのグッズよりも、ポニョが着てるワンピースのほうがほしい子だ。友だちになりたい。

ツ◯【評】見守る視線の先にいる子にとってそれは背伸びのつもりはなく、自然でまじめなチョイス。言葉も力も少ないけど、小学六年生より、ううん今より年上の自覚強かった頃です。その意識の表れ方のとらえ方がいいなと

丼◯【評】お兄ちゃんになったからポケモンとかゴーカイジャーとかのプリントはもう買わないんだもんね、という背伸びが可愛いので選びました。

炭◎【評】 「年長」というのは小学校の年長組だと考えました。修学旅行で下着の模様を馬鹿にされて、お母さんに泣きそうな顔でスーパーで無地をせがむ男の子が思い浮かばれます。自分の思い出と重なったので特選に。

珍◯【評】1)純粋に模様ナシが気に入ったので。2)お兄さん(お姉さん)だから年少さんに譲った。3)本当は派手なの欲しいんだけど一丁前に背伸びして無地に(奥歯噛みしめて)。僕は3)をチョイス。無季か。

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56 花模様しずくが垂れる五時限目 残夕彗=3
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夕◯【評】授業中ぼけーっと窓の外ばっか見てた高校時代を思い出した。目の前に名前のわからない花をつけた木。その花弁から垂れる(垂れそうな)雫を目で追いながらチャイムまでとりとめのない事を考え少しまどろむ。

残◯【評】冬の朝の教室は寒い。でもお弁当を食べ終わった頃には誰かが暖房のスイッチを消している。みんなが居るからみんなの体温で教室が暖かくなるんだ。青春だなぁ。耳下腺がきゅんとなったので選句しました。

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57 模様過多元日にだけ叔母と会う くる科科剣黒酒爽爽炭二波朧光光ツ=16
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科◎【評】「過多」→「だけ」の対応が素晴らしい。賑やかな上五から、「だけ」で急に静かになる。街もテレビも模様過多な元日。対して、疎遠な叔母と主人公との間には静けさと少しの気まずさ。ぐっとくる物語性のある句。

酒◯【評】模様過多な叔母、いるいる。叔母が模様過多なのではなく(それもあるのだろうが)、正月というものが模様過多で、元日にだけ会うような人とたくさん会うせわしなさもまた模様過多だ。何より「模様過多」という日本語が良い。

剣◯【評】模様過多なのは叔母さんの方でしょうか。アニマルプリントなどの派手な服を着て、よく笑いよくしゃべる。詮索好きだが憎めない、昔ちょっときれいだった気のいい叔母さん。そんな彼女が眼に浮かんで楽しい。

く◯【評】模様過多なのは叔母さんの洋服よね(さっきの年長さんと真逆だな)。元日だけ会うくらいの距離感の相手をあらわす言葉が「模様過多」っていうのがいいな。元日だから普段より3割増くらいで模様過多なのかも。

黒◯【評】模様過多は叔母だと読みました。花柄on花柄の服を着て、小型犬連れてて、親戚の動向にやたら詳しい叔母。悪い人じゃないけど一緒にいるとぐったりしそう。叔母も正月の模様の一部と化してる。。

波◯【評】あるある的に笑ってしまうだけでなく、叔母のうるささ、めんどくささ、あんまり会いたくなさなどが、「模様過多」、「元日にだけ」にしっかり詰まっている。

光◎【評】叔母との心の距離と決意としかし血のしがらみに寄る義務のやるせなさが「元日にだけ」に表れていてうまいなと思った。模様過多な叔母と、うるさい柄の振り袖で同じく「模様過多」な自分にがっかりしているとも。

朧◯【評】正月に踊らされて柄を合わせまくって着物なぞ着てみたが叔母との待ち合わせ場所に着いてみて、はたと「自分、派手…?」と気づいてしまう。1年に一回会うだけで親戚だよなそういえば、とも思えたので選。

二◯【評】叔母に元日だけ会うというリアリティー、と果たして模様過多とビジュアルに目が行くのも作者の居心地が伝わって、いい。

ツ◯【評】模様過多、の言葉が元日にぴったりきます(叔母との相性もナイス)。飾り付けられた景色しかり晴れ着しかり。親戚集まって会話も落ち着き、何となくテレビをつけたひとときを思いました。(番組のセットも派手)

る◯【評】叔母との距離感を「模様過多」で一言でとらえたのはとてもうまい。親戚にはだいたいこういう人がいるもんだけど、元日にだけ会う関係をどこか楽しんでいるようにも感じられる。 

爽◎【評】とにかくしっくりきた。他のだれでもない、叔母だなここは、叔母以外ないな。

炭◯【評】初詣は人が賑わい、テレビは特番ばかり。落ち着いた時を過ごしたいけど、親戚の家参りも行かないと。行事に振り回され、頭がくらくらする!

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58 丼の底は模様や冬の昼 ひひ重重鶴麗麗ツ=8
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重◎【評】当たり前についている模様を(ついてないのもあるけど)もう一度気にしてみるというのが気持ちよくて特選。初めて入った店だとしても、見慣れた自宅の丼だとしても、底の模様に思うことは同じな気がする。覇気のなさも好み。

ツ◯【評】字数の少なさから、何だかお疲れの印象を受けました。へとへとなんだけども、底、模様、と思う気力は残っていたかと、模様と気持ちと両方発見したような。寡黙な人の発見と見ても、かわいい。

麗◎【評】お昼休みに蕎麦屋で丼を食べていて、食後ふと底の模様に気がつく。食べ物が胃に入り体が温まった満足感と、逆に空になった丼。模様をぼーっと見る様子がまさに冬。俯いて器を見ているが、薄灰色の冬空を見上げている感覚も。

ひ◎【評】夏ならおつゆを残すのかな、冬だから、つい飲み干してしまったのかな。親子丼ではなく、天ぷらそばだったのかな。読んで、おなかが空くのではなく、食べ終わったかの様な気持ちになりました。

鶴◯【評】丼(あったかいご飯)、底(お腹いっぱい)、模様(あ、無地じゃない。なんかうれしい)冬の昼(ちょっとは陽がさしてるな)。もう模様。定食屋さんのシーンがある、いい映画でも見たような気分になりました。

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59 白い髪市松模様似合わない 朧大=2
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朧◯【評】「白い髪」と「市松模様」がどれくらい似合わないのか考えたこともなかったので選。

大◯【評】市松模様と対比させられている白い髪の持ち主は、作者自身なのか、誰か別の人物なのか。白い髪とは白髪なのかブリーチなのか。市松模様の様に繰り返し読み返してしまった。

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60 朝霜や液晶画面の虹模様 ひ崖剣爽鶴鶴凡朝真=9
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剣◯【評】太陽が携帯の画面に当たって時々なるあれ、うざいなと思っていましたが、きれいという方向に持っていかれてハッとしました。こういう子供の眼をいつまでも持っていたいものです。

凡◯【評】液晶画面にも「古い時代の」ものがあるよなあ、と。電源をつける前だな。朝、指を揃えてまじまじとみたね。この「や」の使い方は玄人くさいね(悪い意味でなく)。

崖◯【評】写生句としてもいい。解釈の仕方次第でシュールにもなりえるのも、またいい。朝霜で切れているわけだが、砕け散った破片が虹になる、そんなことは現実にはないが画面の中ではありえる。

ひ◯【評】少し古い携帯の液晶、通勤途中に画面を見る。いつもの行為に朝霜のアクセント。良い事がありそうな気持ちになります。

爽◯【評】液晶の表面に水分がつくと虹のようになるのをおもいだしました。あのことについて、私もいいたかった!

鶴◎【評】霜がおりるほど寒い朝、きんきんに冷えた部屋では、液晶画面すらうっすら結露するんですよね。指でそっとなぞると、小さな水滴ができたところが虹色になって…いろんな感覚がよみがえりました。文句なしの特選です。

真◯【評】寒い朝にぎゅっと握りしめられた携帯電話、指圧で広がる小さく鮮やかな模様。普段は気にも止めない、むしろ要らない模様を虹に例える感覚を羨ましく感じました。

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61 風吹けば銀杏落葉の模様かな
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62 相棒と相撲の模様相模にて る茅重少森麗光残残朝妹=11
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妹◯【評】これは「しょあーがいいそう」だからこそ、すごくいいと思った。ここで敢えてこの句で勝負したのがすごい。くっだらなくて、そこが好き。「相撲の模様」のとこは特に、発声すると気持ちよくて繰り返し言いたくなる。

重◯【評】相模の「模」って模様の模で模造紙の模だけどどういうことなんだろう、と昔から釈然としていなかったところを突かれました。「相」の読み方が毎回違うのが技ありです。

茅◯【評】『え、相撲ですか。』『いきますよ、神部君。』BLですね。

少◯【評】光景云々より、その語感と、字面!もうこの句自体が模様を形作ってる

森◯【評】相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲模様相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲相模相棒相撲

光◯【評】なんでしょあーならではの言葉遊びぶりで思わず。相棒と相模のアパートで炬燵に入って相撲なんか見てたらもうそれだけでかわいいじゃない。私にとっては、 俳句に対する緊張が解ける句だなと思って。

残◎【評】天才だ。さすがです。相棒と相模原くんだり(失礼)で相撲なんてどんな罰ゲームだよ。相模ナンバーを相撲ナンバーって馬鹿にしていた(本当にゴメンなさい)昔。この作者もそうなのか?大好きです。

る◯【評】一見、ギャグみたいにも見えるけど、実は俳句としてすごくいい景色だと思う。「相撲の模様」「相模にて」というとらえ方がすごく鷹揚で、ちょっとおとぎ話のようでもある。 

麗◯【評】この作者(誰かわからない)を含む数人とTwitter上でこれらの言葉の話題で会話をしたことがかつてあった。句を読むまで会話をしたことすら忘れていたが、読んでなんとも楽しい気持ちに。作者は目白で自白せよ!

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63 はらり落つみぞれ染み込む水玉模様 寝残里大真=5
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残◯【評】雲が重い冬の午後、公園でぼーっとしてると足元の石がポツポツ濡れて、初めて降ってきたことに気づく。雨より軽いみぞれ。寒さを感じるけど心までは冷えてない感じが好きです。

真◯【評】はらり落つ、の軽やかに舞い落ちるような語感が好きです。全体に透明感を感じ爽やかさな気持ちになりました。

里◯【評】服の水玉の丸と、みぞれのにじんだ丸が合わさって手書きの水玉模様みたいなかわいさ。この服はワンピースかロングコートであってほしい。

大◯【評】着物の女の胸元であって欲しい。みぞれの氷が溶けるまで見ていたい。

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64 天井の幾何学模様冬の朝 芽芽崖酒助寝寝地白黄栗夕真真妹裏裏=17
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妹◯【評】そういえば、わたしの知ってる天井もだいたい幾何学模様だなあ、とあらためて気付いて。冬は、ぬくぬくの布団から出たくないから、少しでも長く天井向いていたいよね、という気持ちも湧いた。

夕◯【評】前後の記憶なくハッ!と寒さで起きた朝。普段気に留めてなかった自室の天井が目に入った事で今いる場所が分からなくなったのかもしれないし誰かの家に泊まってしまったのかも。熱出した冬の日とも読めるなー。

酒◯【評】起きて寝床から見上げたのではつまらない句だが、朝食でも食べながら冬日に照らされる模様を意識したととれば美しい。無機質とあたたかさの同居。クウネル的な白木住居、田辺誠一&はな的な現実感の薄い男女をキャスティングしたい。

黄◯【評】冬の寝覚めはことに辛い…ギリギリまで布団に入ってたい。勿論寒いので手も足も布団の中に入れて。ジッと天井を見上げる。蛍光灯、天井、縁…気付き!なんで幾何学模様に見えたかって?眼鏡を掛けて無かったからかもね。

芽◎【評】開け放たれたカーテンから外の光が天井に反射し、それを布団の中から見ているイメージがありました。「起きなくちゃ…それにしても光がきれいだなぁ」とボーッとした感じ。

崖◯【評】天井に注目するとすれば、病気は別にして自宅ではない。ホテルである。冬の朝だ。二重にあえりないが、ノーベル数学賞を受賞した人の朝の挨拶句で使える。

地◯【評】カーテンの影が綺麗に見える。ニヤニヤしながら、まだ布団の中。しばらく楽しんだあと休日なので二度寝する。

裏◎【評】冬の朝、空気が冴えて模様くっきり。なんとなく自分の部屋ではない感じがする。隣で寝てる裸の人を起こさないように息をころしているようなひそやかな感じが気に入りました。

白◯【評】毎日見ている天井というよりは、冬の思い出として、天井の模様すら記憶しておきたい、ってことかな。

栗◯【評】布団からなかなか出られない寒い朝に、天井を見つめてしまう。実感がとてもあるので選びました。寝られない夜も見つめるよね。

真◎【評】目が覚めたものの暖かいお布団から出がたい…首まですっぽり入って、じっと天井を見つめると幾何学模様が何かに見えてくるぼんやりとした時間。身に覚えがあり、懐かしい気持ちに。

助◯【評】句の腹にある「幾何学模様冬」の字面が格好よかったです、僕は風邪を引いて一日中仰向けに寝ている少年を想像しました。

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65 横断の模様白だけ踏んで朝 ひ芽甘地二二朧朧真飼裏数=12
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朧◎【評】朝の通勤、「横断歩道の白だけを踏む」のは自分内ルールを課している一人遊びではなく、力強く職場に向かう急ぎ足の結果だったのではないだろうか。季語なしですがたくましい印象が好きだったので特選。

二◎【評】私も道路の「線」を気にする派だし日頃の関わらざる終えない模様の最たるものが横断歩道かもしれない、(人によるが)。ちなみに私は白を踏まない派です。朝起きて出勤しない生活のせいかな?

芽◯【評】これ、学生時代からの親友が横断歩道を渡る度にするんです。ピョン、ピョンって軽快で楽しげだったのを思い出しました。

甘◎【評】朝なのが良い。昼や夜なら遊びになってしまいそうだけど、出勤時、憂鬱で下向きながら歩いてるなかで「白だけで渡り切れたら今日は良い日!」って縁担ぎしてるようで、わかるーって思った。 

地◯【評】これは朝帰りではなく出勤や登校の朝。日常の中に楽しみを見出せるステキ女子。ラインを引き直して綺麗になった日は超ラッキー!

ひ◯【評】未だにやってしまう実感。何故、他愛のない事に、意味もなくルールを定め、実行しちゃおうとするんだろ…。

飼◯【評】きっとこの行為に何かを賭けているのだ。今日の社食、飲み会の席順、試験の山…。黒い模様を踏んだら負け、意地でも踏まない。ルールにすがる時ってある。

裏◯【評】白飛びした光と寒さと行為の相性が良くて写真みたい。好きです。

真◯【評】白い息を体に巻き何気なく一飛び。全部飛べたら1日うまくいくとか思いながら…大人になってもついやってしまうあの気持ちはなんなのかなと改めて思いました。

数◯【評】小学生の登校風景かな。横断歩道とは言ってないのに、伝わるのが不思議。みんな一度はやったことあるからでしょうね

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66 クリスマスうずまき模様ギュッと巻く 科=1
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科◯【評】うずまき模様が非日常の象徴になっている。それを力(意志)を込めてギュッと巻く。主人公にとっての、クリスマスの非日常性と楽しさ(「ギュッ」が片仮名なことでウキウキした感じが出る)が分かる。

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67 クリスマス模様の包みをそっと置く 彗=1
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68 くちづけてマーブル模様ラテアート 子黄珍珍じ数=6
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子◯【評】何が描かれていたのか分からないが、一度口をつけてしまったら最後にはどれもがマーブル模様に。液体の動きにかおりがたつ。

黄◯【評】カップに浮かぶ何がしかのキャラクターのラテアートが一口毎にスチームされたミルクとコーヒーが混ざりあう。落ち着いた雰囲気の喫茶店。穏やかな土曜の午後。コーヒーを飲む表現として“くちづけ”って素敵ですね

じ◯【評】ラテアート、模様が無くなっていくとこが楽しかったり寂しかったりします。そしてこれはバリスタである僕へのラブレターとしか思えませんね。という感じが全体から伝わってきますね。

珍◎【評】オトナなお姉さんの艶っぽい句、と素直に読んだのだけど、むくつけき中年男性を登場させてもおもしろいですね。口髭にマーブル。これも無季だった。

数◯【評】せっかく綺麗なラテアートだけど、飲んだらマーブルになっちゃうんですよね。くちづけてと表現したのところに洒落っ気を感じます

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69 らしくない模様の服を買ってみる 芽黒森森蓬丼光里大=9
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蓬◯【評】俳句としてはひっかかりが少ないかなとも思いましたが、短い言葉でとても共感を呼び起こされたので。八割くらいは「らしくなかったなあ、やっぱり」の結末が待っています(個人の感想です)

黒◯【評】たまにそういうことあります。「らしくない模様」という表現にハッとしたので選びました。私の場合、往々にして「らしくない模様」を持て余してしまうのですが。

森◎【評】わたしらしくない模様。それはつまりわたしが服の模様らしくない、埋もれてしまうのだと自覚している。それでもつい手をのばしてしまう服自体の魔力ってあるよね。錯綜した心もように共感

光◯【評】「模様」のお題を直球で使っていて爽やかだなと。「らしくない模様の服」に挑戦してみてしまう、その背景にきっと何かあったんだろうなあ、と人物の背景を想像させる句だと思った。

芽◯【評】今まで着たことのない模様の服を選ぶことで、軽い気分転換と言うよりもっときりっとした決意のような者を感じました。人生の(は大げさかな)新しい扉が開くような。

丼◯【評】今までの自分と変わりたい、という時に形から入るというのは私もよくやる方で、赤フレームの眼鏡に変えたりとか、淡い色のジャケット買ってみたりとか、そういう心機一転気分を清々しく感じた。

大◯【評】そもそも、この人は模様らしい模様の服をあまり買った事がないのではないかと勝手に思っている。とにかく、何かを変えたいのだろう。その為にはらしくない模様が必用だ。

里◯【評】小さな冒険心によって、現状をブレイクスルーするきっかけを得ようとしているのか。「踏み出す一歩」の瞬間が良い。

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70 木漏れ日がキミの頬の上丸模様 鯖夕=2
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夕◯【評】公園での日向ぼっこが浮かびました。恋人同士なのかなあ。いつも一緒にいる友達のような気がする。丸く付けたチークに重なるような日射しがかわいい。

鯖◯【評】光線自体は丸くないのに丸模様にしてしまう程のキミの頬の丸みよ。丸いなあ。丸くて良いなあ。でも言うと怒るんだろうなあ

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71 ラーメンのあぶら模様も飲み下し ひ剣少鶴朧ツツ光珍夕夕=11
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夕◎【評】お茶漬けのCMのような満足感と我慢できなかった罪悪感。ああっ!ってなる。いつも。

ツ◎【評】表面にただよう油膜にたじろぐ気持ちをえいと遠くへ押しやって、どんぶり両手にごくりといく図。昼休みの女性本人か、隣りの人を「あー全部飲んじゃったよ」と見てるのか。勢いと、最後の「し」の整い方が格好いい。

少◯【評】ただ、完食しただけでない、不思議な達成感というか…これは自棄なのだろうか。「飲み下し」に味を楽しんだようには見えなかった。

剣◯【評】しましまとかドット柄だけではなく、スープの表面に浮かぶあれも確かに模様だ、と驚いて一票。よほどお腹すいてたんですね。充実感が伝わってきました。

光◯【評】「あぶら」を開いたことに寄ってちょっと罪悪感と美味さが増した。模様をなすほどのあぶらを我慢できずにぐぐぐーっと、飲み「下す」ところがまた胃の腑にがっちり落とし込まれたスープを感じて更によかった。 

朧◯【評】とにかく美味しそうな湯気と匂いが浮かんだ句。「あぶら模様」っていい言葉だな。

ひ◯【評】テーブルでの差し向かいではなく、カウンターでの横並び。気詰まりになり、箸であぶらを繋げたり、食べ物を弄ぶ、そんな手持ち無沙汰な状態を一息に飲み干す力強さを感じたのです。

珍◯【評】このお題でラーメンの油を持ってくるかと感心。「あぶら模様」の表記が好みで、「模様も」の「も」に物語を感じさせるのもいいですね。無季ばっかり選んでる。

鶴◯【評】ラーメン食べ終わって、油のみずたま(あぶらたま?)くっつけて遊んでたんだけど、結局全部飲んじゃった…そろそろ帰るかー。という図が浮かびました。あの模様のこと考えてる人とは友だちになれそう。

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72 蔦模様きちがひの棲む冬ホテル 崖茅甘剣鯖酒炭二波波凡凡栗光雪雪夕じ=18
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茅◯【評】『おまえ行ってみろよ。怖いのかよ』『怖くねーよ、押すなよ。』子供の頃の思い出っぽい。世界のしくみが判然としない頃(今もしないけど)たしかに何かが「棲んで」そうな場所というのがあった事を思い出しました。

酒◯【評】企みのありそうな句だが、そのまま字義通りとりたい。蔦の絡まったイメージと、聞こえる奇声か何かからそう噂されているが、本当は気違いなんか居なくて、奇声は実際には猫のものかもしれない。(なんだこの評。)

夕◯【評】ホテルじゃないけどヒチコックの映画のオープニングと中州にある逃走中のやくざみたいなのばっか住み着いたボロボロのホテルを思い出した。いつの季節も殺伐としててそこだけ冬。きちがひ伝説が独り歩き。

剣◯【評】気違い、冬、ホテルとくれば「シャイニング」ですが、蔦と「きちがひ」で和風レトロな雰囲気もあります。冬ホテルという言葉すごい。エドワード・ゴーリーの絵のような楽しい怖さです。

甘◯【評】蔦が中にいるきちがひの思念が浸出してきたようで、そしてそれは青々とはしてなくて所々枯れ落ち茶色く朽ちていて欲しい。京極さんぽいなと思いました

波◎【評】圧巻の精神病院俳句!文句なし特選!静謐さ、そら恐ろしさ、襟を正させる冷たさ、不思議な美しさが選ばれた言葉、すべてにある。私たちのこころが狂うとき、次の春を待つホテルは森の奥にある。

凡◎【評】「ホテルが定宿」というのに憧れる。窓際の古い暖房装置。きちがいの噂。日本なら昭和初期のモダン。……蔦模様がやりすぎ感あるんだが、お題だからな。

光◯【評】「きちがひ」は「蔦模様」のホテルに「棲む」んだよなあ、と文字同士の親和性をやけに感じた。すごい映画的な構図が見える句。詠んだ人が件の「きちがひ」だったらもっと怖いね!

雪◎【評】クラッシックな雰囲気が素敵で特選です。蔦と冬、暖炉も絨毯も見えるよう。きっと夏がハイシーズンのホテル、冬の間だけその噂が囁かれ、庭でふと出会ったりする。夏に「その人」がどうしているのか誰も知らない。

じ◯【評】本格ミステリーといいますか、吹雪の中、蔦が絡まる古い屋敷に逃げ込む男女、次々と起こる殺人事件、をなんとなく思い浮かべました。火曜サスペンスとかのタイトルっぽいなぁと。

二◯【評】そこに自分も立った気になる。

炭◯【評】「蔦模様」「きちがひ」の言葉のおどろおどろしい感じ、そして「冬ホテル」。これは猛吹雪の中のホテルかなと。ミステリー小説の冒頭みたいで、わくわくする!

鯖◯【評】本当に蔦が這ってるとやり過ぎ感あるが模様だからOK

栗◯【評】ジャック・ニコルソンの恐ろしい顔が迫ってきたので!怪談俳句。

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73 落ち葉舞う模様が立体メタ視覚
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74 ひらがなが模様のようにみえた頃

  森炭地鶴藤藤波白栗雪朝珍里彗じじ妹裏=18
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妹◯【評】小1のとき、郵便の「郵」が、どんなによーく見て書いても、決してその通りに書けなくてふしぎに思ったのを思い出した。幼児ともなれば、もう、字かどうかもきっと危ういよね、そういう頃があったよね、と思って。

波◯【評】ひらがなって確かに模様!という気づきに目を開かれた。ものの、そのことをもっと掘り下げて欲しく、「みえた頃」だと、ただの回想になってしまうのが残念。

森◯【評】きっとそのころはもようってことばのいみもがいねんももちあわせていなかっただろう。でもそのちっぽけなあたまのなかはいまよりたさいな模様でいろどられていたにちがいない。その頃へのあこがれとおそれ

じ◎【評】みえた、だから子供(みえる、だと老人に?)。これ全部ひらがなだったら読み手も子供になりそうだなぁ。この句は眺めているのが好き。頃、とつくことで昔を辿ろうとします。

雪◯【評】 みえてたなー、と懐かしく。漢字が模様だった時期も、アルファベットが模様だった時期もあった。いまでもアラビア文字は模様に見える。でも「知ってしまったら戻れない」世界の一つですよね。愛惜をこめて選。

地◯【評】祖父江慎さんが「明朝体が怖かった。大人用だと思ってた。」と言っていた。そんな感じ。模様に意味があることに気づいた時、「あーっ!」 となったのかは思い出せない。

藤◎【評】「模様のように」がくどいがリズミカルでもある。15字中12字を占めるひらがなだけでなく、漢字(模様・頃)もまた模様のようにみえてくる(意味わかっちゃってるのにね)。口に出すより目に楽しい一句。

白◯【評】子どもの時のことかな、と思いつつ、和文書体製作者がゲシュタルト崩壊している図を想像。

栗◯【評】ずっと仕事をしてると、ゲシュタルト崩壊してくる、過酷な年末進行。でも過去形だから、もうその仕事やめたのかな。他人事ではないので選びました。

炭◯【評】 ゲシュタルト崩壊でしょうか?文字がふと瞬間に読めなくなるやつ。文字を覚えたての幼年期によく起きたので、疲れて文字が読めなくなった時に、一緒にその頃を思い出したのではないかと。白昼夢。

珍◯【評】そんなこと思ったことがない自分には新たな発見と共感が。すごい発想、ではなく、作者の体験なのでしょうね。自分なら「頃」は開いたかどうか…最後を漢字ひと文字で支えてるふうに見えるのがカッコよくもある。

裏◯【評】そんな頃が自分にもあったんだろうなあ。思い出せないけど。たまにひらがながゲシュタルト崩壊する時はバブーと言ってみよう。気持ち悪いか。

鶴◯【評】保育園に、木の板にひらがなの形の溝をほったものがあって、それを木の棒でなぞってひらがなをおぼえた。まだひらがなと知りあいたての、初々しい関係をうっすらとだけど思い出した。こころもとない、うれしい。

里◯【評】文字が読めなかった子供時代を懐古するのは、文字として読める現状に息苦しさを感じている?特に冬っぽくはないけど想像に時系列的深みが出来て面白かったです。

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75 雪降りし子供遊びてまだら模様 麗真飼=3
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麗◯【評】雪があまり降らない地域では、たまに降る雪はものすごく嬉しい。子どもはほんの少しの雪でも大はしゃぎし、歩き回り、集め、あっという間に茶色い地面にしてしまう。子どもは、かつての自分でもある。懐かしい景色。

飼◯【評】遠景の句と解釈。子供の姿は降り続く雪の向こうに見え隠れしている。。動きがあって好き。

真◯【評】ひと冬に数えるほどしか積もらない雪の日は特別です。まだ降り始めにはしゃいでしまい、泥んこになっている小さい子。いいなぁ、そんな日もあったなぁ…雪が待ち遠しいです。

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76 開かれた魚が描く血の模様 ひ雪=2
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雪◯【評】 これ、食べる予定のお魚なのがいいですよね。血にしては耽美じゃなくて、厳しい美しさの品格に惚れました。まな板に散った血は水で洗い流すけど、しばらく心に残る。水気のある感じも好きです。

ひ○【評】鮮烈な鮮血(…しまった)。まな板の上にどろっとした血があふれ、水に流される。とてもきれい。

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77 雪時雨死刑中止になる模様 科鯖重助森爽二蓬凡朧雪彗彗=13
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科◯【評】陽が差したかと思うと雪の降る不安定な天候が、死刑が行われるか否かの不安と対応しているのが良い。句全体に陰鬱な雰囲気をまとわせ、あくまで「模様」にすぎない、と匂わせている。執行される可能性もまだあるのだ。

重◯【評】殺伐とした刑務所に降ったり止んだりする情景がいいですね。句を詠んだ人物が受刑者でも、他人でも(受刑者との距離が近くても遠くても)趣があります。どうしてだろう。

蓬◯【評】「模様」の使い方がうまいなあと思ったので。重大な事実が伝聞でしかわからないもやもやした感じに、雪時雨のもやもやした空が重なってきます。

森◯【評】雪だか雨だかはっきりしないものが降ったり降らなかったり。どっちつかずのいのちが先送りにされている。報道口調と受け取った僕はそれをモニター越しに眺めているのだろう。窓の外の空模様は同じ

凡◯【評】そういえば刑務所には南の気配が薄い(ブラジルとかにも刑務所あるが「脱獄」感が強い)。高い壁に雪が似合う。伝達される言葉も寒さに見合った簡素さ。

雪◯【評】 冬の閉塞感があっていいなぁと。多分TVからの情報で、窓の外は灰色の雨だか雪だかが降ったりやんだりしている。窓の外の天気もTVの向こうの人の生き死にも自分にはどうしようもない。じっと部屋で音を聞いている。

朧◯【評】「模様」をこちらの意味でつかったところがまず好き。句を口に出してみるとどきっとします。

二◯【評】事態と自身の身の置き様の距離感のしかたなさが「模様」という言葉でよくわかる。

爽◯【評】「死刑」ということばが強すぎるのでひるみましたが、それをまさって見えた景色に○。

鯖◯【評】ひょんなことから死刑囚の無実を証明する羽目になった元刑事。奔走の末執行直前に知事からの電話。刑務所前からレポーターが伝える。

助◯【評】「雪時雨死刑中止」の漢字の連続が好きで、音もまとまっていて上手だった。雪の白いイメージが潔白を想起させ、その暗喩にも惹かれた。

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78 往来の外套なべて模様無く C茅甘甘黒鯖子少寝爽地地藤波丼残雪飼裏=19
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子◯【評】無難なものをとりあえず、という日本の社会そのものズバリという気がした。人は多く行き交うのに活気がなさそうに感じるのも模様が無いから。閉塞感を身を包む外套に見ている感じがよかった。

茅◯【評】もくもくしたシルエット、煙った色の外套を着た猫背の人たちが同じ方向を向いて歩くディストピアSFとか寓話のようなものを思いました。

少◯【評】冬の朝、出勤が憂うつな人々の姿。模様だけでなく、むしろ、モノトーンにすら感じられる。

甘◎【評】雪で白く染まったなか寒さに背を丸めて足早にいく人達。外套に模様はなくても、その光景を切り取ってみるとそれ自体が模様のようでもある。モノトーンで描かれた風景画を想像しました。

黒◯【評】西新宿あたりの風景ですね。無地コート、メガネ、マスクのサラリーマンたち。あののっぺりした様子を的確に表していると思って選びました。

波◯【評】確かに、柄物のコートはコーディネートを選びますからねえ。オホホホ。ただ、なぜ連用形止めで句を終えたのかしら。そのせいで説教臭く、優等生くさくなってしまった気がする。

C◯【評】観察眼?発見力?とにかくその視点に敬服。確かに外套は地味。寒々しい光景

雪◯【評】 多分これ、そう観察した本人も模様のない暗い色のコートかダウンジャケットを着ている。往来の、といいながら自分もその一部で、冬空の下、なんとなくつまらなく立ち止まっている感じ。花でも咲いていればいいのに。

残◯【評】黒や紺の外套を着た群れがざっざっと同じ方向へ歩いていく。そう言われてみたら不気味な光景。でもみんながプッチのダウン着てたら、それはそれで気持ち悪い。今の季節の当たり前の光景を切り取る凄さで選句しました。

地◯【評】模様がないだけなのに、色もモノトーンに感じられた。自分もその中の一員であることに気づく。ミナのコートが欲しい(欲望)。

丼◯【評】職場での倦怠感から表を眺めてみると黒や茶色のコートを着た人たちと灰色の街並み。ますます物憂い気分になる。色を表現する言葉は無いのに色が浮かんでくる景に参った。

藤◯【評】本当になべて模様が無いわけではない。たぶん柄物のコートを着ている人もいる。ただ、往来にあんまりいっぱい人がいるから、わけわかんなくなっちゃった。そのくらい、この詠み手は元気がないのだ。

飼◯【評】たしかに冬に模様入りのアウターを着ている人は少ない。かといって大阪のオバちゃんで溢れても困るのであった。

爽◯【評】自身も模様の無い外套で往来を行く人なのかな。 自嘲にもきこえ。でも、ただないなーあーないなー模様くらいだったらいいな。

鯖◯【評】模様のないことを腐す様には取らなかった。シルエットがきれいなコートとかカッコいいし。冬気分出ていい。

裏◯【評】これはもう新宿南口でイメージ。信号が青に変わりいっせいに動き出す勤め人の群れが真っ黒でこわくてのう。本当に「なべて」という言葉がしっくりくる景色でした。

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79 模様から模様へ跳んだ靴のつめたき く科鯖凡残=5
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科◯【評】「跳んだ」とだけあるが、着地も言外に描いている上手さ。着地した衝撃を「靴のつめたき」と表現したのがすごい。「模様から模様へ」と「模様」を2つ離して書く事で、文字上でも跳んでいる感じを出している。

く◯【評】字余りなところも含めてかっこいい。ただ跳ぶだけじゃなくて、靴の冷たさを言ったことで想像できるイメージがひろがった気がする。結構大きなジャンプだったのでは。「つめたき」がひらがななのも冷たそう。

凡◯【評】まさに踏切線を超えて「ファウル」気味だが、いいフォームの跳躍。俳句でしか保存出来ないことを見据えてる人のGreat Failure!

残◯【評】歩道の水たまりから水たまりへ跳んだんだな。そのときは気づかないんだけど家の門を開けたあたりで足が冷たいとやっと気づく。一人になってやっと気づく。一番切なさを感じたので選句しました。

鯖◯【評】状況を想像することをこの句ではやめた。跳躍し伸びたつま先と冷えのイメージだけを味わいたくなったから。冷たさと跳躍の2方向からつま先への意識がフォーカスした。

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80 そのマフラー飼ってた猫と同じ模様 芽崖子藤朧栗数=7
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子◯【評】目に入った事から喚起される思い出がそのまま素直にでているところがいい。日常でも、何かから唐突に思いが喚起される事はよくある。

朧◯【評】まんま言った俳句。ひねりがなくて素直。でも「飼ってた」と過去形なところが、模様を覚えているほどかわいがっていた猫が「今はいない」ことを示唆していてせつない。好きです。

芽◯【評】ちょっと切ないような懐かしい思いが伝わりました。思い浮かんだのは黒キジ系のちょっとむっくりした猫なんですが。マフラーを優しくなでている感じでしょうか。

崖◎【評】芸事には制限が多い。俳句はその短さのせいで、実は散文よりも厳しい。解釈についても、同様だ。禁忌の一つ「好き嫌い」という印象批評がある。でも、俺、猫好きなんだYO!

栗◯【評】マフラーになりそうなのは、茶トラかな?今はいない猫と、目の前にいる君。ちょっと切ないけど、その後の「えー、じゃあニャンコ先生って呼んで」なんてユーモラスな会話も浮かぶ物語性で選びました。

数◯【評】急に「あっ!」て感じで言われたのかな。友人なのか知らない人なのか。知らない人に言われたのならびっくりするけれど、嫌な気分ではない。そんな偶然なかなかないと思う。素敵なめぐり合わせです

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81 雪の模様発見したのは物理学 C炭藤ツ朝朝=6
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C◯【評】理屈を言うと無粋といわれるけどさあ、雪の模様は理の世界で発見されたんだよ!

ツ◯【評】雪柄に照れる相手にこう言って諭す図がなんとなく。説得力は、ないかー。冷たくカタい言葉の並びの中に、発見の喜びと、雪模様を美しく感じる人の情がうっすら潜んでいて好きです。

藤◯【評】句は情報だ。私は雪の模様を発見したのが物理学だとは知らなかった(考えたこともなかった)。この句のおかげで、私このこと一生忘れないと思います。物理学ぜんぜんわかんないスけど。

炭◯【評】キラキラした冬の表現の代表の氷の結晶も、科学の発見だよ、と。研究者の人がぼそっと言っている感じ。後、やきとりいさんへの挨拶句ですかね?「おおっ」て思いました。

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82 着膨れて待つ襟元の縞模様 茅茅幽黄大=5
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茅◎【評】待っている人の膨らんだシルエットに近づいてゆくとまず顔の表情でこちらに気づき、何か言う。口元をみるとその下に襟元、という視線の流れに忠実な気がしてすごくふつうのことがすごくわかったので特選です

黄◯【評】眼前には私より先に待っている人が。“着ぶくれて待つ”とはどんな場面だろう?どこかの待合室なのだろうか。室内でも寒いのか脱ぐまでもないのか?ただ時間を奪われながら何かをじっと待っているのだ。縞模様に目をとめて

幽◯【評】 これは街の光と影が襟元に模様を作っては消えていく、その「待つ」時間を描いていると感じます。しかし、着ぶくれているからその模様は歪になっていて、時間そのものが間延びしている感覚が面白かったです。

大◯【評】「着膨れてるだけだよ。ほら、縞模様だってこんなにのびてるじゃん。」

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83 広げたらどんな模様の恋かしら る鯖鯖幽じ=5
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る◯【評】ぱっと見少し甘い気もするが、「広げたら」という表現で「恋」が折りたたまれているもの、とイメージするとけっこうおもしろいとらえ方だと思う。「かしら」というわざとらしい語尾もそういうキャラに合っている。

幽◯【評】これ独り言なんですよ。だれかが「なになに」って言って見に来てくれるだろうと分かってて聞こえよがしに言ってるわけですよ。あーうざい。そんな模様ぜったい見てやらん。

鯖◎【評】恋模様というはるか昔に出涸らしになってしがんでも味のしない言葉はそもそもこういう味だったのかと教えてもらった感じ。

じ◯【評】僕の考えすぎだと思いますが初ピクニック、といった情景でした(広げる=ランチョンマットといった安易な妄想)。まだ少し戸惑っているけど結構前向きな感じかな。

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84 雨の模様みぞれの模様おじぎして 丼裏=2
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丼◯【評】朝の準備をしながらテレビ天気予報に耳を傾けると雨の模様、夜はみぞれになる模様、傘をお忘れなく。テレビに目を向けると気象予報士のお姉さんがお辞儀。音の印象ばかりが先行して浮かぶのが面白く選んだ。

裏◯【評】特選にするか迷った。はじめと終わりに蹲踞して形式ばった決め台詞を操り、地球を俯瞰してひとびとに未来を伝える儀式。天気予報。みぞれという単語は入ってるけど、もっと冬っぽさが欲しいなと思いました。

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85 マフラーの模様憎らし口喧嘩 CC芽甘剣剣助雪朝大大真妹飼飼裏数=17
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妹◯【評】どうでもいいマフラーの模様「なんか」まで憎々しくなっちゃうぐらい近いふたりの痴話喧嘩に思える。キーッとなったり、イラァッッとしたり、プンスカしてる気持ちが、まるで自分のものになっちゃいそうな句。

剣◎【評】口論相手の男は背が高くて、お洒落メガネをかけたインテリで、きっと弁が立つんでしょう。ふだんはかっこいいと思っていても喧嘩の時はそのかっこよさが気に障る。よくわかるなあ。素晴らしいです。

C◎【評】坊主憎けりゃ袈裟まで。自分が編んだ模様さえも憎らしい。編んだ自分までもが憎らしい。(別な誰かが編んだ模様という捉え方をしても面白い)

雪◯【評】可愛らしい。坊主憎けりゃ〜も連想させて楽しい。そうやっておかしみを出せるところに、この二人はあとで仲直り(だかうやむやにだか)、喧嘩別れはないだろうと安心します。赤の縞しまとかだな、癪にさわるのは。

芽◯【評】口喧嘩のきっかけもなんだったのか判らなくなっちゃって、怒ってることに怒ってて、仕舞いにはその模様までが。仲直りしたらそんな模様なんて気にならなくなるだろうにと思っちゃいましたよ。_

甘◯【評】喧嘩の時ただでさえイライラしてるから相手の全てに怒りが湧いてくる。でもこれきっと喧嘩は劣勢だな。視線を合わせたら言い含められそうだから、目線を下げてる。って思ったらすごく可愛かった。 

飼◎【評】そう、喧嘩してると終いに相手のすべてが怒りの対象となる。もうドS街道まっしぐら。でもこの句ではマフラーの存在がSっ気を和らげ、可愛らしい印象に。ちっのろけですか。

真◯【評】マフラーの模様を鮮明に覚えている様子に、喧嘩の前は素敵な模様だなとときめいていたのかもしれないと想像。そんな素敵な気持ちがあったからこそ一層相手が憎らしくなってしまう気持ちに共感。

裏◯【評】坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、と同じことを言ってるだけだとも思ったけど、マフラーの模様って特に個性が出る気がして、その急に憎さがわく感じわかる。何そのいきがったドクロ柄。みたいな。

大◎【評】ふざけたマフラーだったのか、怒りと同期するようなオプティカルな模様だったのか。いずれにせよ顔など真っ直ぐには見る事が出来ない。人が怒った時の素振りがすっと見えて着たので◎

数◯【評】憎らしいのは、マフラーの模様じゃないんでしょうね。その模様選んじゃう当人が本当は憎らしい。口喧嘩だけど、可愛い口喧嘩だと思います

助◯【評】浮気相手が編んだマフラーなので憎らしいのだと解釈しました。マフラーを編むのに相手がかけた時間、つまり他の女が自分の男のために献身的に過ごした時間を想うことが憎らしさの原因かもしれないと思いました。

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86 霜花の模様の話できるひと 朝=1
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87 亡き猫の背中の模様小春空 芽重波幽幽光里じ飼=9
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重◯【評】模様という題から、今は亡き誰かを想起する句が生まれたことに驚きつつ納得しました。空の穏やかな感じが落ち着いた心を思わせて素敵です。054の虹もそうですが、なにか救われるものがあります(勝手に関連付け)。

波◯【評】子どもの俳句はあざといなーと思ってしまうけど、猫の句には甘くなってしまい、見たこともなき猫の背中の模様を思う。小春空でさらにセンチメンタルが倍率ドーーーン!

光◯【評】猫は「背中」の生き物だよなあとしんみりする句。色っぽい猫背としっぽが目に浮かんでしんみり。これが「人」だったらお涙過ぎてだめだったと思う。そのバランスも良し。

じ◯【評】亡き猫と言える(割り切れる)時間経過が好き。もうずいぶんと弱っていて、ひなたぼっこするかのように死んでいたような情景を思います。

芽◯【評】これは080よりもうちょっと悲しい感じでしたが、麗らかな空に向かって猫を偲んでいる感じで、気持が救われます。こっちは小春空なのでぶち猫でしょうか。

幽◎【評】 空に描かれた雲の模様を見て、猫を思い出す。とりたててトリッキーな技巧は使ってなくて、素直に読める。なんだかいちばん気持ちが安らいだ句でした。にゃー!

飼◯【評】小春日につらつらと思い出す。日のあたる縁側でまるまっていた愛猫の背。空にはその背に似た雲が。ほっこりとした光景をくれた。

里◯【評】小春日和のうっすらした寒そうな雲と、死んだという飼い猫の模様というのが、よく合っていると思いました。「背中」というのも、去っていった感がしてせつない。

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88 乱酔の罪深き痕水玉模様 助藤数=3
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藤◯【評】おぼえがあります。ていうか、飲んだあとはだいたい体のどっかに痣ができてますよね。あれなんなんでしょうね。いつもそれみて悔い改めるんですけどね。でもやっぱり次飲んだらまた痣できてるんですよね。

数◯【評】どこで打ったのか、そしてなぜそんなところに出来るのか。そういうよく分からない痣が体中に。反省してる風だけど、この人はまたやっちゃうと思う。お酒はほどほどにしましょう

助◯【評】「乱酔の罪深き痕」と「水玉模様」の組み合わせが良かったです。水玉模様で罪深き痕を表すのが好きでした。

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89 盤上の模様まぎれて大晦日 甘黒黒子酒森地白蓬丼=10
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子◯【評】大晦日に親戚が集まると、トランプ、花札、将棋等々、子供も大人も入り乱れて遊んだ事を思い出した。乱れもひとつのかたちとしてまとまってみえる。

森◯【評】年越し軍人将棋のお誘い!とついつい心が踊ってしまった。炬燵に蜜柑に紅白駒。歌合戦と同時に試合開始するも両軍一歩も譲らずいつしかゆく年くる年。朦朧とした頭に除夜の鐘の音が凡と沁みる。勝利の美酒が飲みたいなぁ

蓬◯【評】これも「模様」の使い方がしゃれてるなーと。「盤上」で局面が「まぎれる」と表現されたら、個人的には将棋しかありえません。遊びだけど真剣な対局。手数が長くなって疲れてきたところに除夜の鐘。

酒◯【評】麻雀牌なら「卓上」だよなーとも思うが(軍将か?)、大晦日から新年のガチャガチャした感じはたしかに「模様まぎれて」いる。きっとだいぶんに飲んで、頭の中も「模様まぎれて」いるのだろう。

黒◎ 【評】軍人将棋ですね。大晦日にお酒飲みながら将棋して、バックには紅白からのゆく年来る年。いいなぁ。年越しの瞬間は混戦模様の盤上しか見てないと思われます。そんな「変化する模様」が楽しくて◎。

甘◯【評】盤上が軍人将棋にしか思えず、「大晦日までやってるのか!もうちょっと他にやることあるでしょ!大晦日だよ、大晦日!」ってツッコミたくなりまして。 

地◯【評】酒さんの評を見るまで麻雀だと思ってた。花札でもトランプでも軍人将棋でもいいや。古き良き大晦日。とにかく楽しそうでいいなぁ、と思った。

丼◯【評】晩酌しながら親類と囲碁を打っている。酩酊しはじめて盤上はもう乱戦である。が、盤を離れれば平和な年越しを迎えているようだ。盤の外の穏やかな光景を見せるのにうまさを感じた。

白◯【評】刻々と勝負の様子がかわってゆくまんま、なし崩し的に新年になっちゃって、ご挨拶。

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90 枯れ葉舞う幾何学模様風の中 C少黄=3
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少◯【評】風が吹くことで、寒々しいけど。枯れ葉の作る様に見惚れてしまってる感じがする。あるイラストレーターを思い出すも名前が出てこない!

C◯【評】BGMは小泉今日子の『木枯らしに抱かれて』。いや、なんとなく。もしくはブレンディ飲みながら庭を見ている原田知世

黄◯【評】ゆっくりと落ちていく枯葉。枯葉を点と見、点と点が線に、線と線とで面に見えた。ここまではありがちな話。それぞれの位置関係を保ったまま枯葉は風にのったのだ。ほんの少し回転しながら。

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91 セーターの模様にさがす鳥の群れ Cく爽凡じ大=6
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く◯【評】すてき句。電車で乗り合わせたひと(他人)のセーターをじっと見てる様子が浮かんだ。ちょっとしたことに注目して「おっ」ってなれる心の余裕、ほしいです。

C◯【評】085と対比して、よほど相手に興味がないのか。全体を通して、模様の発見はぼおっとしている時にあるのだなと思った

凡◯【評】ぜんぜん、鳥の模様じゃないセーターなんだろう。話を聞いてるようで聞いてない人だ。一瞬たしかにみえて、そのあと分からなくなったから探してるんだろう。

爽◯【評】距離があって鳥の群はさがせるのではないかなと。近すぎても一羽しか見えないし、遠すぎても「鳥の」群れかどうかわからない。その距離がむつかしいよなあ。

じ◯【評】自分も探してしまいます。大理石とか、犬や人に見える模様がいっぱいある。まぁ、セーターにってことは相手のセーターってことで、怒られているのに、って感じでしょうか。

大◯【評】もしかすると全く鳥とは関係ない柄かもしれない。セーターの編み目と模様を目で行き来しているうちにエッシャーの絵を見ているかの様に鳥が浮かんでは消えた。こう言う行為は僕もやりがちで共感してしまった。

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92 真白なる「はー」マフラーの模様かな 二蓬妹=3
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妹◯【評】「はー」の気の抜けた感じが可愛い。「はー」ってしてる顔はきっと無防備で、「はー」の顔も、マフラーに映える真っ白な「はー」も、ぜんぶその子らしくてぴったりなんだろうな(童顔の女子大生だといいな)。

蓬◯【評】季重なりかな?と一瞬思って、でも「真白なる「はー」」だけ取り出しても季節は成り立たないことに気がつきました。全部の言葉が実はしっかり役割を持っている句。

二◯【評】一瞬、真白なのに模様?と思ってしまう(私)後に来る「はー」の実際の息の長さに転じていいな。

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93 わからない土産にわからない模様
 くくひる科崖茅甘剣黒酒酒重助炭鶴白蓬蓬凡幽麗丼丼黄黄栗栗妹妹数数=32
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妹◎【評】なんにもわかんない!でも「いやげ物」のにおいがプンプンする!一読で掴まれてしまって、特選はこれしか考えられなかった。その土産、すっごく見たい。用途とか当てたい。ピクトイメージみたいに当てっこしたい。

重◯【評】特選と迷いました。言葉を失っているさまが浮かびます。お土産って概してそういうものだという諦念も受け取れます。この句は多くのそういうお土産を救う力があるのでは。愛誦します(自分がお土産買うときも)。

科◯【評】土産とは他人が他所からもたらす物であり本質的に謎の存在である、と気付かせてくれる句。更にそこには謎の模様! この異様な雰囲気が好きだ。「わからない」のリフレインが平仮名なのも、困惑を表現している。

茅◯【評】(価値が)わからない土産に(なんの形か)わからない模様。おいしくないから模様もまあ、わかんないけどなんでもいいやという投げやりさ、をわざわざ詠むことのおもしろさ。

黄◎【評】まずワ音と子音M音の繰り返しのリズムの心地良さイイ!。“分からない模様”とは見慣れない外国の文字の包装の事。アラビア語とかタイ語とか。きっと不思議な紙の匂いも。開封しても?。異国の匂いに包まれて…

蓬◎【評】選句してから人気を見て、これだけの人が人生をわからない土産と歩んでいるのかと感慨を覚えました。せめてその模様がなければわかる品物になるかもなのに。わからないの畳み掛けからにじみ出るせつなさで特選。

酒◎【評】あるあるネタ的だし、体裁も句「らしく」なく、ウケ狙いのような感じすらある。にも関わらず特選にしてしまったのは、まぎれもなく「風景を切り取って」いて、その景がおそらく今まで誰も詠まなかったものだから、と言い訳します。

剣◯【評】とにかく何が何だかわからないのですね。こんなのもらっちゃったけどどうしよう、という「ごっつええ感じ」的不条理な可笑しさがあって、リズムも面白い。しかし一体何をもらったんでしょうか。

く◎【評】もうこれは、こういうシチュエーションになったら絶対思い出すと思うフレーズ。声に出すとさらにおかしい(今度つかおう)。

黒◯【評】17文字しか使えないのに、二度も「わからない」が入ってる!外国の調味料とかでしょうか。模様とはアラビア語系の髭の生えた文字を想像しました。

凡◯【評】次、繰り返し句が流行るねきっと。これは、最初はまたがらず、次が句またがりというのも気持ちよさに関わってる。

崖◎【評】俳句は短いがゆえに、そこに凝縮された言葉を詰め込もうとする傾向が強い。この句は、わざわざ繰り返しているわけだ。何を犠牲にして、何を得たか? 韻文の音と、余韻である。

丼◎【評】妙な土産を挟んで、わからないと言いながらも、お互いの好みを承知して嫌いじゃないことを知っている。長い友達付き合いだからこそやり取りできる変なモノに二人の関係が好ましく映るのに強く惹かれた。

る◯【評】共感度で一番。というか、「わからない」としか言っていないのに共感されるという事自体、どれだけ「わからない」土産がこの世界にはあるんだ!簡単そうに見えるけど、かなり推敲したんじゃないかと思う。 

甘◯【評】あるある!って面白いと思ったのと同時に、わからない模様はおみやげ自体の模様でもあるし、相手の戸惑いの模様でもあるんだって気付いたら、凄いって思いました。個人的にはアフリカもしくは東南アジアの土産を想像。 

栗◎【評】どうしてこれをお土産に選んだのかな、と思うトレイか何かに、さらによくわからない絵柄。お正月の休暇明けに繰り返される情景が、繰り返し言葉で増幅されている。うざったさがよくわかる。

幽◯【評】トートロジーめいてますね。模様が分かれば土産も「わからない」なんてことはないでしょう。わからないのウロボロス。それが「模様」の二字によって入れ子状態になって、ますます酩酊を誘います。

ひ◯【評】縦書きだったら、その上、改行されてたら、もっと複雑な印象が残ったかも。「に」の字を中心にしたシンメトリィな記述が、なんだか、釣り合いを取りながら揺れる天秤の様。タカをくくった見切りの視点も印象的。

麗◯【評】深く共感。目で読んだとき、素通りできなかった。口に出して読んだ時、とても気持ちよかった。うまいなぁ!(なんのお土産か、想像も予想もせず。だってわからないもんなぁ、と)

白◯【評】わからないもの好きでしょ? ってわかりあった関係もいいけど、まだそんなに親しくないひとからの土産で、「何これ」とも聞けなくて、ここから関係がはじまるのだといいな。 

炭◯【評】 切れ字が無くどこで区切ったら良いか分からないため、だらだら読んでしまう。そのため謎の土産を貰った人の、その困惑した心境になってしまう。

鶴◯【評】特選の次にこれが好きでした。なんでそれ買ったの…その模様をなぜおしゃれといえるのかどうしてもわからない…たまには空気読んでほしい…でもそういうところが好きなんだけどさ。

鶴◯【評】句のリズムが良くて「わからない」のリフレインがよく効いていると思いました。すばらしかったのですが、結局良くわからなかったので、特選と悩みましたが波選で

数◎【評】「なにこれ?」「わかんない」「この模様何?」「わかんない」とにかくわかんないんだな。わかんないのに、むしろわかんないからしばらく放置しちゃいそうなお土産。開けたら案外普通のものかもしれないです

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94 セーターの波打つ模様に胸はなり 藤里里=3
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藤◯【評】これはあれですね、エロですね。ちょっと気になる女の子の胸が思いのほか巨乳だったんですね。ぴったりしたセーター着てたら目立ちますもんね。そりゃ胸もなりますよね。

里◎【評】ただの横縞模様が、ふくらんだ胸で波打って見えていて、それを見ている男の子の胸が高鳴るというシチュエーションを想像しました。男子目線の青春の一コマにきゅんきゅん!よって特選!

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95 冬研究棟ナノメートルの模様編み 科助助白黄=5
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科◯【評】冬→研究棟→ナノメートルとズームしていき、それにつれて寒さも強まっていく(研究棟、ナノメートル、という言葉の寒そうなこと!)。それが最後の「模様編み」で、ぽっと小さな暖かさが灯る。この構成の良さ。

黄○【評】遺伝子の研究なのだろう。4種類の配列をただひたすら追い求め。模様を編むという表現の工夫が、数式や机上の論を超えた学究を感じる言葉としてよいなぁと。あぁ今からでも私を解いて編み直してもらいたい。

白◯【評】遺伝子的な何か? と思いつつ、他にもいろいろ模様をなしている小さなものはありそう。寒い外と隔離された、四角い建物のなかでささやかな模様と対峙するひと。

助◎【評】「冬」を頭につけてあえて破調(というのかな)しているところが好きでした。顕微鏡の世界というイメージも良かった。

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96 重ね着と目じりにかくすうら模様 森=1
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森◯【評】女性は色んなものをかくしている。ふだんはおもてしかみせてくれないけど、たまにあらわれるうらが時に魅力的だったりする。それは弱みであり人間味である。とにかく一枚めくって模様をみてみたい。

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97 警告の模様を真似て毛糸編む 茅幽麗=3
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幽◯【評】 「毛糸を編む」はとてもゆったりした行為です。いっぽうで「警告」はどう考えても急いでいます。結果ずいぶん回りくどいことになってますが、その緩急のギャップが笑えて良かった。

麗◯【評】編んでいる時、手を動かしながら考えるのは編み物以外のことだ。(上手に編めるかなと思うことはあっても考え続けてはいない。)編む時間は、祈りの時間であり、編むとは念を込める行為でもある。身に覚えあり、選。

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98 流星に目をしばたかせ空模様 夕=1
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夕◯【評】確かに流れ星見る時いつも目をパチパチしてる!無意識だったけどそれに気づかされました。街の明かりが届かない所でキンと冷えた空気の中、たくさんの星の軌跡が見える様で好きです。

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99 エッシャーの模様のあはひ霜雫 崖崖=2
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崖◎【評】キレイで良い句だ。本来、◎にする句ではない。ただし、私はどんな句会においても、この句を○にはするだろう。エッシャーのだまし絵と、あはひの取り合わせには、思考の揺らぎのような発見があり(次に続く)
霜雫にもだまし絵の要素をみる。ただしエッシャーだモジリアニだといった「記号」を使うと、max70点になることは仕方ない。本来季語が担うべき役目に、補助輪をつけているのだから。ピカソモナリザはまた違う話。

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100 縞もよう春待つ背に射す日と影と C子子寝麗ツ珍里=8
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子◎【評】春待つ背中は前向きであること。けれど、日が差しもすれば影もできる。どちらか一方はありえない。期待と不安、そのゆらぎが日と影が作る縞模様に表れていい。

C◯【評】光と影で織られた縞模様。温さと冷たさ

ツ◯【評】だれかの背にできた明と暗の模様。相手と自分といいこといやなことが今ここの時間と場所にあって、これからは春。背の主は知らない人でも馬でも象でも車でも、関係の気配にほっとしました。

麗◯【評】春を待つこの背に透明なさみしさが見えた。(描かれた季節は違うが、宮本輝の『星々の悲しみ』の一幅の絵のようにも。)祈りたいような心持ちになって、選。

珍◯【評】切り取られた情景が素晴らしく口にしたときのリズムがいい。が、「漢字+ひらがな」のくり返しに(視覚的に)引っかかりをおぼえ、悩んだ句。「背」は、猫のかな。陽だまりの。

里◯【評】熱の吸収率の違いで白い部分は冷たく、濃い部分は暖かく感じるのが「日と影と」で美しく表現されている。「春待つ背に射す」の連続する2字語がリズム良く、「縞もよう」の交互するの濃淡とシンクロしている。

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101 針を刺し模様熱持つクリスマス 子少少波=4
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子◯【評】何か手作りしている。模様が出来つつある事は想いが形になること。熱持つ事が、逆に怖く感じて思わず寒くなった。クリスマスにあえて恐怖(本当はトキメキだろうが)を感じさせるところが新鮮。

少◎【評】大事な人への贈り物だろうか。ひと刺し毎に形を成す模様と近づく日。「クリスマス」に思いが募ってるんだろう。

波◯【評】「クリスマス」なんて、もう文字だけでも重いし意味合いも過剰で手垢にまみれた言葉を、さらりと純情可憐乙女模様なクリスマスにまとめあげていて、おお、素敵!

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102 白菜の安定感を模様とす くるる地白白残珍=8
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く◯【評】白菜の葉っぱの重なりを上から見たときの模様のことかなあ。すきです、あの模様。そして「安定感」っていう言葉がすごくしっくりくる。白菜は、安定感だよなあ。

残◯【評】味が無いくせにやたらとどっしりとしてる。味が無いくせに色のグラデーションが綺麗。わたしには無くても困らない野菜をきちんと詠むという才能にやられました。

る◯【評】この季節、すぐに豚白菜鍋が浮かぶ。白菜を放射状にどばーっと入れて、でも煮込むとそれほどの分量でもなくなる。地味で主役にはなりにくい白菜を「模様」としてとらえたのはとてもいい。  

地◯【評】投句者は絵を書く人なのかな。切る前の緑から白へのグラデーションも美しく、縦に切った時の葉の巻き具合も面白い。野菜をそんな目で見られるところがうらやましい。

白◎【評】模様をいたるところに内包した、模様でできた物体!!! と思ったらもうクラクラ。

珍◯【評】スーパーの棚にぎっちり積まれた白菜の、文字通りの「安定感」と読みました。1個取りかけてその安定感に気づき、「ほほう、これは画になるねえ」と。「店員さん、プロだね」(以上声:中尾彬)と。

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【なんでしょう句会 模様評】togetterまとめ http://togetter.com/li/229939
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