第四回【なんでしょう句会】喧嘩評 壱

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129 ごまかしがバレてタイヘン申告制    少佐仮面 (少)
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じ○【129評】「バレてタイヘン」のカタカナがアナグラムでバレンタインとなってる非常に高等なテクニック。このことは申告制という言葉からも間違いないだろう。○。

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130 男ってバカよ二個目のみかん剥く    ちよ (地)
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和◎【130評】うーん、わかるわかる。っていうか二個のみかんじゃたりない(笑)

妹○【130評】そんなに深刻な事態じゃなくて、よくある痴話喧嘩だろうな。独り言か、友達への愚痴か、相手と同じこたつの中か、状況は謎だけど、喋ってる女のひとの座り方とか、みかんを口に運ぶ様子はありありと浮かぶ。

数○【130評】女友達同士、コタツに入りながらの愚痴。話してはみかんを食べ、みかんを食べては話し。おそらく、三個目も剥く。

珍○【130評】1個目のみかんで同じこと言ってたし、3個目でも言うね。そして友だちは聞き流している。扱っている喧嘩の他愛なさがうまく表れているなと。

ぽ○【130評】一人コタツに入ってぶつくさ言ってるところを浮かべました。悔しいのか、怒ってるのか、寂しいのか、みかん一個につき一文句。みかん食べてりゃ気がすむ喧嘩なのがいい。

白x【130評】「感じ」でしかないのですが、この女性(もしくは彼のいる男性)は喧嘩してても、してなくても、同じこと言ってみかん剥きそう、って思って喧嘩句に見えませんでした。

智○【130評】みかんは山盛りですね。こたつだといいな。まだ二個目ってことはこの後もえんえんと続きます。でも聞いてるほうも気楽にみかん食うよ。

碍○【130評】年の近い姉妹が、実家のコタツで、という想定。この句の眼目は、やはり、なんだかんだいって「女子は食べざるをえない」ということ。恋をしても失恋しても、浮気してもされても、女子は食べつづけるのです。

剣○【130評】ここにいるのは一人、それとも二人? 何となく一人炬燵でぷりぷり怒っている感じがしました。「二個目」もいいです。喧嘩というより諦めの境地の感もありますが二人はきっとこうして続いていくんでしょう。

舘x【130評】食べ物を粗末にしてはいけないのを重々承知しているが、喧嘩なら投げるべき。剥いたら(ったく手のかかる男ね、うふふ)になっちまう。投げてたら選句してました。

寝○【130評】みかん食べならが言ってることで、相手の「男」に対する甘えとか安心感が上手く表現されていると思いました。ねえ、バカよねえと相づち打ちたくなる。

C○【130評】話がループし始めている。剥かれるみかんは2個では終わらない

芽○【130評】憤懣やり方ないという風情。聞き役がいてもいなくても大きな声での独り言です。この怒りはミカン一つの甘さじゃ押さえられないので…手が黄色になるほど食べます。

黄○【130評】「二個目」が効いてます。電話で喧嘩した後、一個目は無心で食べて、二個目の時、つい独り言がでたんだろう。パニックになった時何かの動作の後、(自分の中で)整理されて言葉がでる感じ。わかります。

光○【130評】めりめりっと皮を剥いて、むしむしっと一個目を食べる。二個目に手を伸ばして、「男ってバカよっ!」また、むしむしっと食べる。小規模だけど喧嘩。それがかわいい。

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131 "Kill me!"は「殺せるものなら、さあ殺せ!」    yagimeiko (芽)
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好○【131評】なんかかっこいいよねこれ。英語の勉強にもなるし。こういう句が出てくるのがなんで句会の醍醐味。

栗○【131評】たしかに、本気で殺されると思ってないからこそ出る、言葉。映画で男女の痴話げんかを観てる感じ。客観がユーモアを感じさせる。でも、本当に死んじゃうと、サスペンス映画になる。

珍選外【131評】この並びじゃなきゃ取っていたかも(という人、自分のほかにもいるか?)。カギカッコや読点が活きていますよね。

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132 disられてgo shit goと呟けり    好餌 (好)
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酒x【132評】逆選も愛?ガッデーム!こんなものに愛なんか感じられませんっ!! え?go shit goが575とかかってる?ふーん。それって面白いの?

林x【132評】英語やアルファベットを入れるのが必ずしも悪いとは思わないのですが、「disる」はまだ定着性の弱い流行り言葉かなぁと。つまり遠くの(たとえば古い世代の)人に届きにくいし、残りにくい。

平選外【132評】go shit goは五七五だったのか・・・気づかなかった!面白いじゃないですか!

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133 スギ花粉総て貴様にくれてやる    兄妹 (妹)
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舘○【133評】まだわたしが花粉症を発症していなかった時、花粉症歴20年弱の夫に対してよくこう思ってた。しかし発症した今、これを言われたら泣く。謝る。ぎゃふんとなったので選句しました。

子◎【133評】花粉症で年中辛いので、素直に分かる。もらいたくない、ごめんなさいって言っちゃう方の立場で◎です。

屁○【133評】好きな乱暴さでした。(句の中の語り手が花粉症ととったのですが)自分の嫌なことを(それが相手にとって嫌がらせになるかどうかわからないのに)相手にやってやるというのが喧嘩のテンションぽくていいなと。

炭○【133評】花粉症の苦しみを知っていなければ作れない句だ。本当に恐ろしいことを言っているよ、これ…。

幽◎【133評】にしても他に言うことがあるだろう、というような想像力豊かすぎる暴言。「厭な眼に合わせる」ことにしてもほどがある。ねじ伏せられて特選に。

千○【133評】花粉症ではないのに、言われたら怖いだろうなと思ってしまった。なおかつ可愛らしさもある。

雪○【133評】ちょっと思いつかない乱暴さが「喧嘩」しばりっぽくて良い。よほど腹に据えかねたんでしょうね、しかもどこか陽性で、多分このひとは喧嘩が上手な人だと思います。憧れを込めて選。

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134 妻チェーン越しに笑みたり冴返る    マオリ (森)
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友○【134評】笑われて寒さを感じるというのが、いい! その寒さが気持ちではなく、気温なのも。

ぽ○【134評】きょえぇーーー。「シャイニング」のジャック・ニコルソンを彷彿させる恐ろしさ。あったか〜いはずの我が家にただいまと帰ってきたら、家にも入れてもらえず冴返る夫。な、何がバレたんだ!

林○【134評】夫の留守中に部屋で何か見つけてしまったのだろうか。飲んだくれて朝帰り、に対する報復だろうか。寒さが身にしみそう。場面の切り取り方も季語もうまいなぁと思いました。

凡○【134評】喧嘩しばりなんだから、これくらいのは欲しかった。喧嘩といいつつ一方的に勝敗は決している感あれど。ふざけた内容のようで、しっかりした句でもある。

碍○【134評】妻=中・夫=外で選んだけど、後から考えると、妻=外・夫=中でも成り立つ句。ドアをそっと開けると、ガチャーン!とチェーンが引っ張られて、その隙間から、ミザリーのような妻の氷の笑み! ホラーだ。

穂x【134評】「笑みたり」からの「冴返る」ほんとにゾッとした。でも「チェーン越し」?プロレスみたいな? なら妻がいかつくて逆に凄み減るし…と思ったら玄関! 発想力不足の私が悪かったです!

寝○【134評】心当たりがあるから「冴返」るんだろ?で、妻が知らなかったことまでバラしてしまうんだろ?ふふふ。羨ましいぜ。(独り身より)

平選外【134評】採り逃しました!!

幹○【134評】チェーン越しで「笑む」のがとにかくいい。こわい。季語もばっちり。団地の重い冷たい扉や蛍光灯の光まで舞台が鮮やかに見える。 喧嘩というより夫が一方的に怒られそうなのが難?


芽選外【134評】すみません、私、完全に思い違いしてました。嫁が鎖がまみたいなのを振り回してる姿が浮かんでしまい……

噛○【134評】これ妻は笑わないんじゃ?って思ったものの笑っているのは怒っているより以上の恐怖。冴返るが気温にも気持ちにもかかってるのが良い。同じ状況で作句試みたけどチェーン越しは出て来なかった。上手い。

飼○【134評】この後夫は一晩締め出されたのだろうか、それとも家に入れてもらえたのだろうか。いや入れたとしてもそこはブリザード地獄だろう。うぅ怖い。

知○【134評】喧嘩の後、閉め出されたのか。笑っているのが怖い。空気が澄み渡って冷え込んでいる夜、チェーン越しにニヤリとしている光景が上手くできていると思いました。

酒選外【134評】締め出しが懲罰になり得るのは主に外が寒いからで、ただごとと思って選外としましたが、むしろ冬空の下に締め出されたのではないところが魅力で、「冴え返る」が効いているのか、と思い直してきました。

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135 (無効)鳥帰る海兵隊の縞は青    ジョシュー (助)
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136 知るか馬鹿放った晩の鱒の顔    炭余分 (炭)
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虎◎【136評】知るか馬鹿!て言い放ったあとの夕食の支度。鱒のぽかんとした横顔が、昂った感情とくっきりと対比する。そんな自分を客観的に冷めた目で見てるもう一人の自分を感じる。その複層的な景色が面白かったので◎

茅○【136評】漫画ならすごく大きいコマで、映像なら妙に長い静止画で鱒の顔をドーンと描写されたかんじ

平○【136評】面白い!死んだ魚の目に何か問われてる気になったのか、それとも相手が鱒に似てたのか。喧嘩してても腹は減るし、食ったら腹立ちも収まるし、喧嘩と食い物は相性がいいんだなぁ。

科○【136評】こういう些細な事が記憶には深く残るものだ。つらい気持ちとともに、鱒の顔(相手の顔じゃ無く)をいつも思い出すのだろう。「あのときの、あの顔……」と。

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137 家出して行くところなし春の暮れ    あま栗 (ん)
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好x【137評】そうですか。困りましたね。だったら家に戻れば、としか言いようがない句。

友○【137評】「そのまんま言った」感ありますが、句の作者がしたいことと句の感じが一致し、しかも題に即していて、それはそれでよいことだろうと思いました。「したい」とは僕が思っているだけですが。

百○【137評】じゃあなんで家出したんだよ! 行くところがないことに気づいてなかったからですよね。たいそう切なかろう時間の経過と「春の暮れ」がシンクロしました。

蓬x【137評】自分にも前科があるのだが、17音に全部のストーリーを入れてしまうとあんまりかっこよくならないんだ、きっと。上五か中七か、どっちかに絞って描きこんだらよかったかも。

波○【137評】句としては、そのまんまだけど、それでいいと思う。春の暮れとも合っている。変に技巧的でなくて正直で、それでいて結構切ない。キミのこの句に全国の家出経験者が強く同意しているぞ。

科x【137評】家出したから「行くところなし」が当たり前すぎる。それを「春の暮」のぼんやりとした切なさ悲しさとつなげるのもありきたりだ、と思ってしまった。

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138 けんかした母との最後の誕生日    けば名人 (ふ)
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少◎【138評】依然、継続中といった趣の中、「終わってしまった」感のある句。思い出しては後悔の念にかられてる。

朝○【138評】わけなく始まりはおとずれ終わりはいつだってわけをもつ(浜崎あゆみ)の逆というか、始まりはいくらかの必然、終わりは必然ではあるかもしれないが突然にして人事を超えるなにか。「最後の〜」は後からわかる

碍x【138評】いかにも涙をそそる場面、というのは俳句に向かない気がする。こういうのは短歌でやってよ、と思い、逆選。それに「の」をなくして7字におさめたほうがよかったのでは。

栗x【138評】すみません。あざとさしか感じませんでした。もし本当のことだとしても、俳句には向かない重さ。

C○【138評】重すぎます。しんみり

屁x【138評】実は最初並選としていました。ただ、よくよく見ると中七は、8でなく7にできたと思って。内容はくさいきらいもなくはないけど、個人的に思い当たるリアルさがあったので、そこは気になりませんでした。

芽選外【138評】最期ではなく最後なのだから…うーんって悩んでしまって。

知○【138評】悲しくて取ってしまいました。こういう別れ方は本当に悲しいです。

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139 白き皿タワシにレタス添え夕餉    甘噛 (噛)
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丼○【139評】出された男はどうすればいいんだろう。フォークで刺して無理やり食って口の中を血だらけにすれば許してくれるかもしれないなあ。ビジュアル的なシュールさが面白くて選。

百○【139評】ハンバーグとは言ってないのにわかる取り合わせ。「白き皿」なのもわかりやすさのためでしょう。計算高い女は、そしてしれっと『夕餉』とか言って外見てる。とても惹かれますこの人。

藤x【139評】これはあの伝説の昼メロ『真珠夫人』第二部にて、リリー(※源氏名)が夫・直也さんの不実を疑ってやらかした伝説の(二回目)タワシコロッケである。あれは喧嘩ではなかった。狂気の発露だった。だからだめ。

栗○【139評】出た、タワシコロッケ!おそらく中島丈博版「真珠夫人」を観た妻が、ヘマをしでかした夫を懲らしめようと、策を練ったのでは。夫がどうでるか楽しみ。

C○【139評】真珠夫人!(http://t.co/ctVBQe0Y

光◎【139評】女の人って怒りを亜相手に出す食事とかにぶつけるところがいやらしい。おぞましい。でもそのおぞましさをはっきりと句にされてどうしても目がいってしまったんだ。

波x【139評】これじゃマンガだ。そんなことする奴いないから、嘘過ぎて私にはダメでした。タワシ、レタスとカタカナが続くのはとてもよく、ただ、嘘すぎる!ということがどうしてもダメでした。

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140 残雪や傷つき傷つける私    波平 (波)
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廣○【140評】「残雪」が適切かどうかはともかく、「傷つき傷つける」といふところが気に入りました。

朝○【140評】「傷つき傷つける」というところがよかったです。焦点が自分に向いているのも、結局は、そうだよなあ(自分にとって、というのが恋だなあとか)と思ったりしました。「するほど仲がいい」の境地にはまだまだ私は。

ちx【140評】痛々しかったです。

飼×【140評】「傷つき傷つける私」の部分が安っぽい歌謡曲みたいだったので。うーん、最後「私」じゃなければよかったかな。となると「傷つける」も変わってくるか。どなたか!

雪x【140評】残雪と傷、傷とわたし、それぞれの言葉の距離が近すぎて、じっとりとくっつきあった印象でした。その意味では成功している句なのかも。あとは好みですね。

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141 狼藉者目を見ずに噛む炉端漬け    みつん (光)
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142 ルノアールにて押印を迫る君    舘ざんす (舘)
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崖○【142評】(変に季語がないのが良い(さっきと言ってること逆じゃん!)まぁ、ルノアールって二重にキーワードだから、イジると変だし、マルチの勧誘をカフェでよく見る私には、吟行句かと思うくらい、腑に落ちた)

酒○【142評】深刻な状況に限ってどうでもいいディテイルが目に入ったり記憶されたりする。離婚届より迫る君より「そこがルノアールであること」が強く、崖さんの仰る通り無季で(が)いいですね。どこか長嶋小説的。

ふ○【142評】どちらかの家で会うことも拒むのか…。妻の迫力そのままに、私もこの句に気圧されて並選。前半のルノアールに対して後半の角張った字面がいい。

鶴○【142評】色のない句。ルノアールの看板も差し出された書類も白い四角。モノトーンの景色が、どろどろした関係も乾いた映画のひとコマのように切り取っている。

ぽ○【142評】なんかわからないけど、かっこいい!で取った。もう男はたじたじなわけですよ、ルノアールで。女は煙草なんか吹かせて足組んで、差し出す離婚届とか慰謝料請求書とか。君(=女)のかっこよさに惚れました。

ひ○【142評】婚姻届か離婚届か、いずれにしても駅前の店に連れ込んで周囲を味方につける策士の勝ちが目に浮かびます。のっぴきならない感じ。

珈○【142評】ルノアールをただならぬ場の代名詞にしたせきしろ氏の功績を讃えつつ、そうだなあ、これは婚姻届だとおもしろいなあ。あはは。

穂○【142評】あの頃はカフェだったのにいまやルノワール。もはや業務。冷えきった喧嘩の恐ろしさを感じます。この「君」はJ-POPのように不自然でなく、ある程度の年季と年齢を感じさせてよいです。

栗○【142評】まるで短編小説を読むような、ドラマ性と情景描写の見事さ。俳句の醍醐味を感じた。男と女の喧嘩の行きつく先には、無機質なルノワールの冷えたコーヒーがぴったりだなあ。特選とかなり迷ったが、僅差。

黄○【142評】談話室的な。ルノアールならさもありなん。直ぐ押印してるでょう。二人とも、ハンコ押す為だけにきてるから。お茶飲むまでもなく。この前にもう話は済んでいます。とっくに。

数選外【142評】ルノアールってお店なんですね。てっきり、画家のルノアールかと…それで意味が分からなかったのかぁ

噛○【142評】景が浮かんだ!その光景がシュール。居合わせて聞き耳をたてたい。ルノアールってビジネスライクな話をしてる人が多い中での離婚届。喧嘩しばりだからこそ活きる句

光○【142評】これはもう喧嘩じゃなくて喧嘩の結果の絶縁じゃん、と思ったのだけど、「ルノアール」を場に選ぶ「もうお互いのテリトリーには入らない」決意がドラマすぎる。かっこいい。

蓬○【142評】二人がうまくいってたころはスタバとか行ってたんだろうなあ。喫茶室ルノアールを知らないと伝わらないのは瑕疵なのかもしれないけど、知ってる身に伝わる場のひんやり感が捨てがたく。

麻○【142評】「君」の方も内心どうしてこんな事態になっちゃたのだろうと思ってるけどもうこれしか方法がないと、視界がぐわっと狭くなっている感じ。婚姻届ですね。

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143 白梅や先に謝るべきでしょう    寝る子 (寝)
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崖◎【143評】(小説家の川上弘美さんが頭に浮かんだ私に何か天罰は下るのでしょうか・・・ 素晴らしい句ですね。白梅という季語の中でも普遍性が高そう(高いって言いきれよ、俺)なものをすえたのもさすが。)

森○【143評】もっとも端的に喧嘩を言い表した句だなと感心。やさしく真理を説いて頂いたような清々しささえ残る。何かちょっとした感動がきっかけで、それまでこだわっていたことがちっぽけに思えることってある。白旗。

妹○【143評】これ、しばらく決着つかないかな。べきって言ってるし、このひとも折れるつもりはなさそうだ。もし、遅刻したくせに、謝るより先に言い訳から入るタイプのひとが相手なら、このやり取り、初めてじゃないはずだ。

廣◎【143評】白梅がいいなあ。もう、それだけで充分です。

百○【143評】「〜や」と「でしょう」の口語との組み合わせで惹かれる。そして口語の中身がちょい過激なこと。「〜や」とか言ってるクセにこえーよ。向田邦子かよ…。こわくて、うまくて美しい!

地○【143評】美しく怖い。お年を召した和服の美人がすぅっと言いそう。そうとう怒っているようだが、顔色は変わらない。顔相手の顔は見ない、白梅だけを見ている。怖い。

虎○【143評】最後まで◎にしようか迷いました。冷たい早春の空気と相まって、美しい句!と思いましたが、上五と中七下五の間が私には少〜しだけ遠すぎるような気がして。「や」のせいなのかな…。でもほんときれいな句です

藤○【143評】互いに一歩も退かぬ気迫のふたりですが、一方が「この白梅が散るまでにお前が謝れ。さもなくば絶交」と言い渡す句。このように風雅な喧嘩がしたいものです。

智○【143評】「べきでしょう」という丁寧な言葉がよい。怒っているけど激高はせずあくまで冷静なひと。でも「白梅や」がなかったら、印象がぜんぜん変わる不思議。

凡○【143評】紅梅と白梅は咲く時期にズレがあるから、謝る「順序」と遠く響き合ってる。「や」が気持ちいい。一方的でない「喧嘩中」感の言葉も出題にかなってる。

朧○【143評】一瞬、喧嘩中であることを忘れて白梅に思いを馳せてしまった。いやいやいや。冷静に考えてもまずはお前が謝れや。

穂◎【143評】師匠みたいな人を想像。ふぉっふぉっふぉと笑いながら「べきでしょう」などと。そこに陽光と白梅があって、まあまあ、いつまでも意固地になりなさんなと世界中から言われているみたい。

C○【143評】上手すぎて心にガツンと来なかった事と、誰の視点か(本人か相手か第三者か)が私の中で定まらなかったので並選。特選と迷いました

数選外【143評】これを発言なされた方はきっととても品があり、尚且つ凄まじい情念も持っていらっしゃる。これはもう、対等な喧嘩ではなくお叱りですね

噛○【143評】ギリギリまで特選と迷って並選。白梅の効果か清廉で高潔な女性が浮かびました。この取り合わせがすごく素敵。こういう人は激昂したり泣き喚いたりしないんだろう。見習いたい。

酒選外【143評】僕は白梅がとってつけたように見えて(梅桜でも山茶花やでも何でもたぶん「しっくりきたような気」はするだろ、と思い)採れませんでした。センセーの「紅梅との咲く順序が響き合ってる」まで読めなかった。

ん○【143評】白旗をイメージして。一緒に白梅を見に行った人に諭されたと。ですます調がいいと思いました。きれい。

波◎【143評】この特選は、感情的な特選です。先に謝るべきでしょう!皆で唱えましょう。白梅も、まあ、先に謝るべきと思っている人にとっては白梅である必然性はあると感じました。先に謝れ!

る◎【143評】老女の静かな断言。租にして野だが卑でない、みたいに、上品で静かだが従順ではない、という感じ。周りの人は無意識のうちにこの人に甘えていた(なめていた?)ことに気付かされて背筋が伸びまくる。

科○【143評】白梅を見て、その柔らかな美しさにそう言われているような気分になったのだろう。「謝りなさい……先に謝りなさい……」と。白梅って確かにそんな事言いそう、と思えてくる。

雪◎【143評】白梅の清冽な印象と「べきでしょう」の背筋伸びた言葉遣いが響きあって美しかったです。春先の空気の澄んだ冷たさや、まだすこし花の開ききらない時分の梅の香まで、しゃんとした怒りによく似合います。

鶴◎【143評】凛々しい句。ちゃんと怒っている感じがしました。でもその怒りに支配されていないことが白梅のかわいらしさから伝わります。勇気がわいてくる句。

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144 組み合ったまま転がって春の雪    酒井 (酒)
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崖○【144評】(座に投げられた句の解釈は自由という見解に立てば、これはホモセクシャルな俳句である。春の雪の白さ、わずかな温かさが、フレンチな香り。丘の上の発展場の風を私は確かに感じた)

森◎【144評】土手喧嘩句。ふたりはこのあとひとつの大きな雪だるまになって、玉から手をだしポカスカやるんだ。でもそれもすぐにおかしくなって大いに笑うんだ。雪解け近し。うらやましさを感じた一句。

妹○【144評】できればこの喧嘩は、いい大人同士の喧嘩であって欲しい。真冬ならそのまま、ごろごろ転がって、ふたりいっしょに雪だるまになるような、馬鹿の喧嘩だといいな。「今日はこのへんで勘弁してやる!」で決着。

友○【144評】「喧嘩するほど仲がいい」枠。ここは外せない! 土手の上から見ていたい。

数○【144評】大人の喧嘩なのに、子供っぽい喧嘩なんでしょうね。このあと、二人とも風邪をひくであろう気がする。それでなんとなく、仲直りしちゃいそうです。

ぽ◎【144評】憧れの目で特選。学ランの男同士、組み合ったまま転がって、そのまま大の字に並んで寝転びわっはっは。あ、雪だ。男と男の友情、青い春。いいなぁ〜。(ちなみに想定は千と薫)

剣○【144評】小学生の頃しょっちゅう理由もなくこういう喧嘩をしていた。今思うと相手とはホモっぽい何かが明らかにあった。「ファイトクラブ」じゃないが肉体の喧嘩は濃密なコミュニケーションだと気づかされる温かい句。

寝x【144評】豪快で清々しい、いい!と思ったのですが、シャーベット状になった春の雪が積もった上でゴロゴロしている姿を思い浮かべ、びしょびしょだよ?誰が洗濯すると思ってるの?と無粋な感想を持ってしまいました。

子○【144評】男性(男子小学生も)2人を想像。お互いにどろどろになって最後に笑っておわりそう。

千○【144評】男子中学生二人を想像。春の雪、が、青春、に空目できそうだし。

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145 憤る資格のありや犬洗う    鯖好き夫 (鯖)
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崖○【145評】(あのぉすみません、あんまり、そのワンちゃん、ゴシゴシしないで>< とまず思った。で、資格があるという客観っぽい主観と、憤りという感情を、犬洗うでまとめたのは出色。私の30倍本読んでる人の句だろうな)

友○【145評】なにかを「言わない」とか「まだ言う前」とか、そういう場面や思いを句にしたものに僕は弱い(既にいくつか取ってる)。でも、でも、「犬洗う」はバッチリでしょう! これだけは取らせて! と思って。

ふ○【145評】濡れた犬のしょんぼりとした感じが、この人のしょげ返った気持ちを表しているよう。

丼○【145評】何だかよくわからないが怒っている、という状況で、何も手につかない。犬が汚れているから洗ってやる。というか、単純作業がしたいだけである。犬はかわいそうである。

地○【145評】「犬洗う」いいなぁ。なんにでも付けてみたくなる。犬のとばっちり感がよい。いつもより乱暴に、隅々まで洗われる。

藤○【145評】犬かわいそう。犬たぶん洗われすぎ。犬の顔の困ったな度が高まっていくとともに、この人の顔の困ったな度もじわじわ上昇するのでしょう。

智○【145評】さっきの喧嘩のことをぐるぐる考えながらごしごし、わしわしと犬洗ってるんだろうな。犬はちょっと痛がっているかも。かわいそう! …とか一瞬でいろいろ思いましたよ。

凡○【145評】これもちゃんと「喧嘩」の最中だ。「資格のありや」の俳句っぽい言い方が、怒りの大きさをむしろ想起させる。犬がおかしい。

茅○【145評】犬の獣臭と湿り気がやるせなくていい。たぶんこの後犬が体をふるわせて目に泡が入ってさらにやるせなくなる。

黒○【145評】「犬洗う」がはまってる。言葉の選び方が上手いなーと思った。文句なし。

珈○【145評】不満が湧くときって同時に自分にも非がないかと不安になるんだけど、冷静に整理してみて「やっぱり怒っていいんだよな」とふつふつ思い出し怒りしてるあたりが、いい人。黙って洗われる動物として犬も最適。

ち○【145評】犬は洗われすぎるだろう…。犬洗う、がいいな!「犬洗う」は使える五音ですね _φ(・_・

光○【145評】怒り心頭で、ぷいっと喧嘩の場を離れて猛烈な勢いで犬を洗ってる情景。犬かわいそうだけど、きっちり「喧嘩」だこれは。

蓬◎【145評】喧嘩のあとの自問自答。そのときしている作業が人相手でも物相手でもなく、半分くらい心が通じる存在相手っていうのが絶妙だなあと特選。無季ですが、季語であるかのようにあまりにも「犬洗う」が堂々としてる。

飼○【145評】ぷんぷん顔の飼い主に力任せに洗われて困り顔の犬。猫じゃこの役は務まらない、絶対犬じゃないと駄目。

廣選外【145評】「犬洗う」はいいなあ。でも前半がどうも……。ちぐはぐ感がよいのかもしらんが。うーん。

知○【145評】この犬はガシガシ洗われていますね。この家のおとうさんでしょうか。「犬洗う」がいいと思いました。

百選外【145評】取り逃しました。『先に謝る〜』の句もだけど、その場にいないほうの人の怒りを踏まえているところが他の句との差かなと思った。

雪○【145評】自問と取りました。喧嘩はしたものの、考えれば後ろめたいこともあって、自分に怒る資格があったかと問わざるをえない。だけど、感情はやっぱり、怒っている。犬を洗う手つきまで想像できて好きです。

平選外【145評】無季のものは季節関係ないっぽい感が出てれば気にしない!という自分ルールで臨んだのですが、犬を洗うのは寒そうだったり汗かいてそうだったり季節が大事な景だと考えて採りませんでした。

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146 春立ちぬ争う声が彼方より    山科 (科)
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虎x【146評】喧嘩に自分が関わってない、という視点は面白いなと思ったのですが、あまりに関わりがなさすぎて。当事者じゃなくても、傍観者としてのハラハラ感とかが出てるといいなと。なぜ立春だったのか知りたいですし。

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147 春の闇ひるの仕返し少し噛む    珈琲 (珈)
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碍◎【147評】「春の闇」の湿り気をおびた暗さが、中七下五にぴったり。うまい! 「少し」も効いてる。こんな喧嘩なら大歓迎。ていうか、これ喧嘩じゃなくて、「昼はすごく乱れさせられたので、その仕返し」ってこと?

剣○【147評】「噛む」は言葉がつっかえる方の噛むだと思いました。昼に言い負かされたのが悔しくて、反撃の台詞を一生懸命用意してたのに噛んじゃったと。可愛くて良いと思いましたが、ガブッの方だと一転エロくなりますね。

寝◎【147評】昼間言い負かされて仲直りしたけど、本当は納得いかず、夜になって思い出して思わず噛んだ。相手の男は訳がわからない。(でも甘噛みなんだろ?ガール。かわいいな。)

鯖○【147評】イイね!でも男が噛んでる方だとキモいね!言葉を噛むって解釈はちょっと苦しいと思うな。「仕返し」は行動でしょう。

幹○【147評】喧嘩のち、ですね。散々言われてますがエロチック。春の闇の暑くも寒くもないまとわりかたがいい。

酒選外【147評】噛むのは言葉じゃなく、無論フィジカルにでしょう。とれなかったのは、中七下五だけで夜の景だとわかるから、「春の闇」がもったいないと思い。もうひとつ言えた(違う季語に何かを託せた)。

蓬○【147評】色っぽい句はかわいげもなくちゃ(少なくとも私には)だめだ。と気づいた今回だが、この句は申し分なし。闇という響きに、仲直りラブラブになりきってもいない奥行きが感じられる。それでいて春だし、もー。

幽○【147評】闇とひるがこんなにくっついていいのかしらと思ったがこれは良いのではないかと思い直しました。人に潜むケモノの臭いが生々しい。

千◎【147評】漢字とひらがなのバランスも含めて、性的なものを感じた。湿度のある句だと思う。

る○【147評】エロいっす。「闇」と「ひる」が隣接してるのは確かに気になるけど、「春の闇」で切れて、それ以降は主人公(?)の口語として読めばおかしくないかも。

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148 決戦に備え八丁味噌仕込む    ちゅう (ち)
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森○【148評】まずそこから!?とあまりの用意周到さに驚愕し、可笑しくも恐ろしくも感じた。八丁味噌って調べたら、二夏二冬以上のあいだひたすら熟成させるんですってね。長い、長いよ(でも味噌は美味そう)。

ふ○【148評】八丁味噌で相手は一体何をされるのだろう…。真剣さがおかしさを増幅させて、はたから見てたらつい笑ってしまうなあ。

地○【148評】またなんだかわからない句をとってしまったが、凄みを感じたので○。味噌を造る行程を想像すると笑える。その間ずっと怒っているからなー、この人。

穂○【148評】相当な長期戦を覚悟。根深い怒りと覚悟を感じます。でも決戦の相手とは高め合う一生お付き合いにもなりそうな予感。季語なのかわかりませんが味噌の仕込みはたしかに寒いいまの時期ですね。

寝○【148評】なんで味噌なのかよくわからなかったのですが、ここで仕込むのは間違い無く八丁味噌だ!と思いました。白味噌じゃない。

栗○【148評】夫婦喧嘩中に味噌を仕込むのは怨念がこもって怖いよな、と当初は想ったのだが、これって徳川家康だよね!八丁味噌で、戦を乗り切ったんだよね!天下統一は持久戦とみて、滋養のある味噌を仕込む。さすが天下人だわ

黄◎【148評】決戦!と言いながら味噌仕込むって…この可笑しさ!(決して八丁味噌LOVEだけではなく)白でも豆でも信州でもないんだなぁ。決戦と八丁味噌三河武士や尾張(戦国時代)も想起できて楽しいね!これは。

幽○【148評】うちに秘めた怒りを手仕事に向ける、ってのは考えてみれば良くある光景なんだよなあ。でもそれが八丁味噌ってのはすごい。長期戦覚悟を食材で表明。

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149 蹴る殴る蹴られ殴られ春うらら    疲労飽き (ひ)
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屁◎【149評】何度か読むうちにじわじわと効いてきたタイプ。中七までと下五の対比が好き。西原理恵子のマンガが思い浮かびました。あと、だいすきな「ケルナグール」を想起させてくれたのも手伝って、特選。

噛x【149評】口に出した時に殴る蹴る蹴られ殴られの方が気持ちよかったのと、喧嘩においてまず蹴るから入ったら卑怯だろうと。殴って倒して蹴りを入れた所で足払いを喰らってマウントポジションを取られるって流れが理想

珍選外【149評】これ「蹴る蹴られ殴る殴られ」の順じゃダメだったのかな。蹴る殴るをセットにしていることに意図はありそうだけど。

る○【149評】ゴーショーグンのケルナグールを思い出した。漫画的にボカスカ殴って煙?のかたまりになっちゃって、ああ、春だねえ、と。

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150 春日和場外乱闘うそほんと    ちこ (知)
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百◎【150評】月見て一杯ひっかけたのでそろそろ選評書きます。満月ですので、いくつかに分けようと思います。ややキンチョー

百◎【150評】じつは人気句になると思っていました。逆がいくつか入るかも? とは思いましたが、ノーマークとは。題に沿っていない、という判断があったのかな? 場外乱闘はケンカではない、と。でも、続

百◎【150評】続 ケンカはときに場外乱闘(プロレス)です。本人たちだけはわかる、『これプロレスだよな、な?』という心理。でも周りからしたら、本気のケンカかもしれないし、とりあえずコワいしヤだし。続

百◎【150評】続 そんな不穏な状況を救ってくれるのが、こういう句の視線だ。うそかもよ、ほんとかもよ、春だしなんかバカっぽいよ、と。ケンカも起きるのが世の中だけど、その全部をユーモアで包まんとするこういう目を、続

百◎【150評】続 大事にしたい。あと、五・七まで漢字のみ、五がひらがなのみ。この字面にも細かい気配りセンスを感じてよかった。言葉・単語に注意深いひとなんだろうな作者は。続

百◎【150評】続 そういうことで、私はこの句を長く覚えていると思います。スルーだった選外評も読んでみたいところです。完。

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151 ふははははお前も橇にしてやろうか    かとちえ (千)
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地x【151評】これは喧嘩じゃない、呪いだ。

剣x【151評】なぜ勝ち誇った笑い? これ喧嘩っていうか、悪魔と善い魔法使いの対決? 橇を引く犬とかならともかく、橇そのものにしてやるって… 何か元ネタが…? すみません、シュール過ぎて分かりませんでした。

舘○【151評】ぶはは、と笑えたので選句しました。トドメを刺す言葉として最高だと思います。人ってあまりに怒り過ぎると悪魔になる事を知ってるんだな。

ち○【151評】橇っていう漢字の見た目がとても恐ろしい。毛だらけだ。ふははははとマッチしている。魔術をかけあう特殊能力者どうしの喧嘩なのか。

平x【151評】橇に季語って以外の必然性も感じられなかったし、それを五七五を崩してまで俳句にする必要があったのか。酒席でネタ川柳の応酬してて最後のほうに出てくるぐだぐだな奴って感じでシラフじゃ笑えなかった。

黄x【151評】デーモン閣下の手垢がついた言葉のようにしか読めなくて…この「ふはははは」はあまり効果的ではないような。稔典先生の「うふふふふ」までいくと面白いんだけど。

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152 何時からか思想へ優劣禁忌化し    朝顔 (朝)
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友x【152評】どういう喧嘩なのかわからず……。また、「優劣」が「禁忌化」することと、なにかが「思想」に移行(?)することがどうつながっているのかもわからず……。熟語多用で「打って出た」感があるのに……。

珍x【152評】意味が通らず、狙いもはかりかねて。

芽選外【152評】思想と言うと重いですが、若い時に飲み屋で隣りあった知らない大人といろいろ話しているうちに論破されたりした思い出は沢山あるのです。ただ、それが喧嘩であったとは思えず…。

幽x【152評】ちょっと「世相を斬ろうとした」感が強いかなと思いました。

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153 窓の外雪降り積もり休戦    しっぽ (ぽ)
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子○【153評】喧嘩による無言も「あ、雪積もったね」「そうだね」という些細なことで、解けていくことがあるだろうなと思ったので。

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154 春の陽の擬音どほりに殴りけり    藤幹子 (幹)
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廣○【154評】まさに正しい殴り方だと思ひました。

好○【154評】妙にほのぼのとした喧嘩。昭和40年代の小学生の喧嘩みたいだなあ。「春の陽や」じゃなくて「春の陽の」にしたぼやかし方もうまいですね。

鯖◎【154評】喧嘩の演技性があっけらかんと出てて良い。文語だから古き良き「ポカリ」とかかな。まさか「メメタァ」とかじゃあるまいな。

数○【154評】いい喧嘩。真っ当な喧嘩。これぞ喧嘩。そういう、雰囲気。やはり擬音は「ボカッ」でしょうか。

凡○【154評】「そういうつもりで」という風にも取れるから、いつもの僕のように「どんな音なのよ?」と思わずにすんだ。「殴ってないのかも」とも思えて、それも嫌じゃなかった。なんでだ。

茅x【154評】「春の陽の擬音」が実際に存在しなければすごくいいと思った。「ぽかぽか」か!と思い至ったとたんに、感情を図にして説明されてしまったようながっかり感が。

ひ◎【154評】喧嘩しばりじゃなかったら、もっと評価が高かったのか…マンガの中のヒトコマの様な、ぴたりと構図も決まっていて気持ちいいのに。

舘○【154評】一番冷酷で恐ろしい句に感じたので選句しました。春の擬音は非常に明るい感じなのにその通りに殴るなんて、無邪気なだけに恐ろしい。楽しんで殴る感じが冷酷。

じ◎【154評】殴られたいなぁと思いました。ああ可愛いなぁと。

栗○【154評】どうしてポカポカは、どちらにも使われるんだろう!実際にはそんな音しないのに。ポカポカと殴るっていうのは本気で殴ってない、こづいてるんだよね。やっぱり春のように、かわいらしい。のろけ?やってろ。

飼○【154評】ぽかぽか。いや、殴る時にそんな音はしないと思うんですがね。この句が持つしれっとしたユーモアに押し切られてしまいました。

幽○【154評】とんちのような句ですが、佇まいがちゃんと俳句になっているなと思ったので選んでしまいました。両者の擬音の相反するイメージを無理矢理合わせて光景を作っても成立する力がある。

るx【154評】「蹴る殴る」も漫画的に読んだ立場からすると、「擬音どほり」と言えば「擬音どおり」になるわけじゃないしなーと思ってしまった。メタネタっぽくて笑いにくいというか。

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155 正しさで勝って二月の悔い残す    雪 (雪)
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酒◎【155評】正しい選のあり方ではないかもしれませんが、とにかく個人的な共感がもんのすごく、186とさんざん迷ってこちらを特選に。「正論ばっかり言ってると女の子に嫌われるよ!」って朧さんが言ってたな…。

妹◎【155評】正論で言い負かしはしたけど、もっと大人になればよかったって後悔してる。でもこれ、勝ったと思ってるの本人だけで、相手が負けてくれて収まったパターンかも知れない。悔いしか残らない喧嘩。グッときた。

ぽ○【155評】句の内容とは裏腹にとても潔い句だなと。殴り合いじゃなく、口で言い負かした。正論たたいて勝った。でもなんか後味悪い。それはもう負けだ。負けを認める潔い句。

白○【155評】心が痛い…。悔い残す勝ちは喧嘩下手の証拠かもね。

朧○【155評】正しいほうが勝ってなにが悪いとや。ぜんぶあいつが悪いんや、わては悪ないで。…なんか言うとったらわしが悪い気してきたわ。許してくれるかな。

ひ○【155評】勝ったのに勝った気がしない。論理と感情は別物ですが、会議の席の自分が思いやられてしまった…その晩、そのまま飲みに行っちゃえば、大概治まるのになぁ。

黒○【155評】はからずも正論を言い放ってしまった時の後味の悪さを的確に言い表してくれて○。

剣◎【155評】「正しさを主張する人間は色気を失う」(『パラレル』文春文庫刊)。正しさか、色気か。『シュークリーム・ラブ(仮題)』の、そして長嶋文学全体の追究するテーマの一つが17文字に凝縮され、お見事の一言。

寝○【155評】「正論すぎて怖い」と言われたことのある私には、身につまされる句。折れる優しさ、余裕、勇気、欲しいですね。

じ○【155評】勝負に勝ってなんとやらな句ですかね。2月と言えばチョコだったり卒業シーズンだったりか。ちょっと曖昧。

子○【155評】正論は言った方のダメージが相当大きいのは実感としてとてもよくわかる。ただそれが「悔い」かは疑問だけれど。

平○【155評】選外か迷いました。というのも、今回は自分なりの評価基準を考えててそれにはまったく沿わなかったもので。ですがそれを超える共感と歯切れのよさ、インパクトがあったので○。何がどう良いかはわかりません!

屁○【155評】喧嘩の勝った負けたの外側というか、その先に言及できているのがすごいなーと。内容的には素直に共感できた一句。

噛◎【155評】喧嘩をして争うこと事自体が勝っても負けても後味が悪いんだよなっていうのと、相手の納得を得られた所で感情としてはわだかまりが残るってモヤモヤしてる形がすごく綺麗に句になっている。

蓬○【155評】きれいに心理の機微を詠む、という句もいくつかあって、欲張りかもしれないがそれが物足りなく思えてきてしまった今回。この句は「勝って」を頂点に言葉がなだれ落ちていく。きれいさが図抜けていた。

炭○【155評】正しい事の強さは、当人の手に負えない時があるものなあ。それより「正しさで勝って」に「正月」のアナグラムが含まれている事を僕は見逃しませんでしたよ。(妄想に近いけどな!)

廣選外【155評】「二月」がキモですかねえ。語数同じで「五月」とか「九月」とかでもそれなりに成立しさうな……。

波○【155評】これは俳句としてはどうなのか、二月である必要性が本当にあるのか、難しい。が、正しさで勝っても悔いが残るだけだと気付いた、その気付きを私は評価しよう。次の喧嘩でいかせよ!

千○【155評】俳句から遠く感じられるほど論理的。この句自体が、正しさで勝っているみたいだ。ケンカは勝ち負けだけじゃないという真理。

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156 だからそれはと吠えたとき蜜柑届く    よもぎ (蓬)
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虎○【156評】喧嘩が外部からの干渉によって否応なしに中断される、しかも届いたのはおそらく実家か祖父母からの蜜柑。怒りがふっと削がれてしまう、その場の空気の動きが見えて、楽しくてすきです。

林○【156評】チャイムが鳴って、家族喧嘩は中断。オクターブ高い声で応えて、ハンコ持って出るお母さん。家族の内輪感が出ていて、蜜柑もそれにぴったり。

朝○【156評】不如意な外部からの侵入。それは、思わぬタイミングだからこそ。流れが変わるというのは、喧嘩、恋愛にかぎらずいろいろなところで起きて、それらの堆積の上に私達はいるんだなあと。

穂○【156評】「吠えた」ほどの熱気も玄関チャイムと配達員と蜜柑箱ののんきなオレンジ色に水を差され…。気まずいようなほっとしたような空気感がうまく表現されていると思います。

幹○【156評】緊迫する空気の中にピーンポーンと響くチャイムが間抜けておかしい。「蜜柑だったよ」とぶっきらぼうに伝えられても喧嘩再開もできず、の宙ぶらりんな空気がいいなあ。

黄○【156評】アパートだろう。(オートロックじゃない。)吠えたと同時に扉をノックされた。ドラマ的だが(完全につくりもの)そこがイイ。蜜柑だから救ってくれるんだろう

光x【156評】情景も意味もとても好きなんだけど、リズムを無視しすぎていて残念でならない。

剣選外【156評】情景は大変よく目に浮かぶのですが、「だからそれは…!」「ピンポーン」ということって実際にはあるんだろうか、俳句のために作った状況という感じがするなあ、などと理屈っぽく考えてしまいました。

科○【156評】怒っている自分に関係なく、自分以外の世界がある、という、自分を相対化した視点を上手く描いている。

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157 さびしいを使えば四字で済む文句    麻衣子 (麻)
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廣○【157評】大喜利みたいで最初は外してたんですけど、やつぱり木になつて……。

好○【157評】俳句としては理屈っぽいすぎて辛いものがあるけど、内容が身につまされて、つい。喧嘩縛りは感情に訴える句が多いですね。

ふ◎【157評】ほんとだ。本当に言いたい事とは逆を言ってしまうんだよなあ。口喧嘩の言葉に傷ついた女に、男が「言われたら言い返す、それだけだ」と悲しそうに言う、映画『きみに読む物語』のシーンを思い出しました。

鯖○【157評】意味内容のみの評価で並選。文の形は。。。

百○【157評】卑怯なり! でもたぶん主人公は「さびしい」って言わないんだろうな。こんな俳句作れるくらい明晰なんだから。…あー悲しい!

数○【157評】そうなんですよ。素直になればいいのに、ついあーだこーだと「言い訳」や「遠まわしな事」を言ってしまってこじれる。やってしまうんですよね…

少○【157評】つい、けんか腰。素直になれない。ストレートな句。

朝○【157評】 I want you. は、ときに要求や非難になる。要求や非難が必ずしも愛から来るかといえばそうではないが、しばしば、愛は、I want you になり、相手になにかを要求、非難してしまう

子○【157評】そうだなぁ、と思いました。

C◎【157評】ですよね

芽○【157評】色んな言葉で相手に訴えてしまうのです、だってそうしないと届かない気がするから。でも結局は4音。でも、その一言がプライドが邪魔して言えないのかも。

炭○【157評】喧嘩は後から考えたら簡単に言い表せるが多いものなあ。皆さんの選評の文字数の少なさも納得。

雪○【157評】文句をいいながらふっと「自分をまとめちゃった」瞬間なんでしょうね。この後たぶん喧嘩は終息しますが、たぶんそのさびしさは相手にはどうしようもないし、そのうちまた喧嘩になるかも。しかたないです。

平選外【157評】「君へのこの思いを詩にすれば五文字で終わるけど」っていう歌詞を知っていたので採りませんでした。俳句以外の形で表現されているものとの既視感もどう評価すべきなのでしょうか。ま、これは無季だけど。

鶴○【157評】こういうけんか超多いと思う。半分以上そうなのでは。という実感がありすぎて選びました。

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158 母さんが渡しといてとチョコを置く    じょーじ (じ)
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森○【158評】食卓句。さりげない言葉だけで喧嘩をしっかりとよんでて景もはっきり季感もちゃんと。家族内の行事は絶対であり何よりも優先される。169のバレンタイン句と迷ったが息子のまなざしにグッと来て選。

丼x【158評】良く出来た川柳だなあと思ってしまった。なんでそう思ったのかなと考えると、「切れ」がないところが原因かなと。自戒を込めて逆選。

百x【158評】わかるんだけど、ここには良心しかなくて、それは魅力的じゃないと私は思ってしまう。そんな母さんを私はバカだと思う、という風に続くのだとしたら、そこにはリアルがあると思うんです。

珍○【158評】娘が弟と、もしくは父親と喧嘩中の句と取った。ツンデレ句。「置く」に照れくささが出ていてほほえましさ倍増。

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159 春色のかかとの音や鼻血跡    オカヤ (茅)
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地◎【159評】最初、軽快な春の句かと思わせての「鼻血跡」にびっくりした。それだけで◎。

じ○【159評】回し蹴りですね。トドメですね。顔いっちゃってますね。春色と血の色が近いのかなー。

平◎【159評】かかとの音が去ってくハイヒールの怒りを表してるようで、しかも春色の、がつくと卒業だったり女の子の成長だったりも伺えて良い。爽やかさと鼻血跡の惨めさの対比も面白い。

幽○【159評】春色とか音とかちょっといろいろ詰め込まれてる感じもあるんだけど、鼻血跡ってくらいだし、詰め込まれてても良いか、と思いなおす。春色なのに修羅場ですが、もう終わった後だし。

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160 起き抜けの喧嘩立春大吉の    廣島屋 (廣)
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智○【160評】起きてすぐ喧嘩! でも立春大吉。たちあがった喧嘩があっというまに台無しになるスピード感。

ち○【160評】演技のいい喧嘩だなぁ、爽やかだなぁ、と。起き抜けに喧嘩できるなんて健康な血圧でうらやましいです。口にしたときにスラスラ読める句、好きです。

ち○【160評】縁起のいい喧嘩だなぁ、爽やかだなぁ、と。起き抜けに喧嘩できるなんて健康な血圧でうらやましいです。口にしたときにスラスラ読める句、好きです。

幹○【160評】立春大吉が上手にはまった句。この喧嘩は後腐れなさそう。

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161 ブランコに不穏な二人漕ぎもせず    有理数 (数)
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森x【161評】やっぱり「不穏」と言わずに不穏な空気をよんで欲しかった。二人が子供なのか(だとしたら「不穏」は強すぎるかなぁ)大人なのかはっきりしなかったのも惜しい。好きになれそうな状況、景ではあった。

廣○【161評】ブランコを漕がないといふ句つて、あまり見たことないやうな。不穏だとちよつとわかりすぎますかね。不憫、とか。「せず」だから「不」のつく熟語いいかも。

丼◎【161評】ブランコを漕ぐでも無く座るのみの二人。人が見てるのも構わずに不穏な空気を発している情景。甘酢っペえなあと。それもまたいいではないかと。で、特選。

百○【161評】ブランコに座っている二人、というのはわりと見るかもしれないけど、それを「漕いでないな」って見る視点はそうそうみんな持ってるわけじゃないと思う。漕がないブランコはブランコにあらず。再発見。

ぽx【161評】いい。すごくいい。この情景描写大好きだ。と思って特選にしようとした。でも、これは「喧嘩」の情景ではないなと思った。想像がものを言ってしまって、大好きだけど選べなかった。

白○【161評】喧嘩してたら二人でブランコ座らないかも。はたから光景を見ていたら喧嘩じゃないかも。だからどちらかの視点なのかな。喧嘩が得意でない二人の喧嘩。

舘◎【161評】不穏な空気って何故か分かる。ブランコは漕ぐものなのにただ座ってるだけの二人。なになに、何があったのぉ?と聞けない雰囲気も出てる。とても好きです。

屁○【161評】喧嘩って派手な言い争いや殴り合いだけではないよな。こういう切り取り方もあるな、と、自分にはなかった視点の置き方に一点。今見ると中七と下五のつながりに少し勿体無さもあるのかな、とは思いましたが。

ふ選外【161評】作者が第三者じゃなかったら迷わず選んでいたなあ。でもその第三者の視点は映画のカメラのようにも感じられて、それはそれでいいのかもなあ。

る○【161評】恋人でも不良でもないのかな。一見して関係性のわからない二人。ブランコ(とか波の打ち寄せる岩礁とか)に二人でいる時点でただならぬ関係なのは確かだが、どういう関係かわからないのが不穏なのでは。

鶴○【161評】はたから見たら不穏。でも何となく、仲直りしたい人たちのけんかに思える。あちこちずるずるときて、最終的にブランコに座っちゃったのでは。

麻○【161評】言葉選びは、不穏または漕がないどちらかの描写だけでも充分伝わったかもしれません。でも、この風景を選んで切り取ったことが素敵です。思いのほか長話になってしまったのだろう。そろそろ手が鉄臭くなる頃

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162 春服の二人振りかへらずにのる    黄犬 (黄)
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酒○【162評】最初、作者に背を向けている人が二人居ると思い、状況がわからなかったのですが、なるほど、駅のホームで反対側の電車にそれぞれ乗る男女を悪戯な天使が俯瞰で見てるんですね!(←いやそこまでは言ってない)

朧○【162評】せっかく待ち合わせて出かける日だったのに、出先で喧嘩してホームで行き先の違う電車に乗り別れる二人。せっかくおしゃれしたのにな。

茅○【162評】カップルはたしかにやたらと振り返る。半ば義務的にでもお互いをみる。振り返らないっていうのはわざとじゃないと難しいし、だからこれは喧嘩だ。

ひ○【162評】喧嘩別れの、お互いの意地の強さが伝わってくる。一枚絵としてびたりと決まっているので、まるで、永遠の別れのの様…。

芽○【162評】同じ路線の西と東(北と南)に家があるから…いつもなら見送ったりするのに。お互い意地を張ってしまっているから振り向けないんですよね。折角きれいな色を着て来たのに…。

珍選外【162評】「のる」って、なにに? そこまで端折ってしまっていいものなのだろうか、と疑問に思ったら取れなくなりました。これはご意見たまわりたいです。

剣選外【162評】電車に乗る場面だと思いましたが、二人が振り返らないというのはどういう状況なのか、考え始めたら分からなくなって取れませんでした。喧嘩の雰囲気はありました。

千○【162評】ホームでの情景なんだろうけれど、春服の可愛らしさと、振りかへらずにの緊張感が、いいバランスだと思った。のる、は漢字でもよかった気がする。