第三回【なんでしょう句会】おでん評 壱

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1 はんぺんはおでんにいれちゃいけないの    有理数 (数)
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2 さまざまにくち開けしむるおでんかな    紀野珍 (珍)
"<特選>波,好,鶴,妹,友 (10 点)波波,好好,鶴鶴,妹妹,友友,幽,凡,黒,科,蓬,碍,丼,く,光,白 (20 点)"
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妹◎【評】おでんには、いろんな形状のタネがあって、贔屓のタネもひとそれぞれ。いろんなくちの開け方で、それぞれの好物を食べる。今まで、みんな、おんなじくちで食べてると思ってた。言われて初めて気付いた。

友◎【評】おでんって実は形のバリエーションがあって、しかも一つ一つがけっこう大きい(だから口を開ける)。人の開いた口を見て自分もまた口を開けていることに気づいた、のを想像した。

好◎【評】観察眼ですね。とにかくうまいと思います。歳時記の「おでん」のところに入れたい!

丼◯【評】大きく口を開けて大根を食べ、ちゅるっとちくわぶをすすりこむ。差し向かいでおでんを食べる行為は官能的かとも思う。

幽◯【評】おでんを食べる側からではなく、逆側からおでんの機能として「ひとの口をいろいろに開けさせる」がある、というふうに看破している。さまざまに、による新しい気づきもあってとても贅沢な句ですね。

碍◯【評】おでんの具のバリエーションの豊富さを、直接的なおでんの描写ではなく、それを食べる人を描写することで表現、という上級テクニック! 17字の中で「あえて遠回り」というこの技術、見習いたい。

波◎【評】おでんのある空間ではなく、おでんそのものをピシッと切り取った句。ごくシンプルで、辞書で調べなければいけないような言葉は一つも無いのに、それでもこんなにも新しく、確かだ。すごいなあ!

科◯【評】我々は口を開けているつもりで実は開けさせられている! という発見が良い。「さまざまに」も、色々な形の具のあるおでんらしさを捉えている。

蓬◯【評】「みんなで食べると幸せ」なんて手垢のついた言葉を使わなくても、同じことはもっと鮮やかに言える。行為の主導権がおでんにあるのも素敵。

白◯【評】このひとは、おでんの食べ方に興味があるようでいて、本当は一緒に食べているひとに興味があるんじゃないかなって。

凡◯【評】好餌さんのいうとおり、歳時記にのってそう!手練がいるな。

光◯【評】個々人が際立つ印象。でも「一緒に」ではなくてあくまでスタンドアローン感が漂う情景。この引きの視点はすごいなあ。

く◯【評】鍋でもカレーでも同じこと言えるか?いやいや「おでんならでは」感満載!いろんな形を食べるたのしさが感じられる。上級者の句だなあ。

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3 生き延びてあたためなおすおでんかな    波平 (波)
"<特選>朝,科,ち (6 点)朝朝,科科,ちち,幽,酒,友,凡,帽,栗,藤,朧,猪,蓬,く,爽,林 (19 点)"
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酒◯【評】(おかしいなー、この座に老人はいなかったはずなのになー。)おでんは、生き延びるという大仰で切迫した物言いをしてまでありつきたいものではない。はずで、そこに「洒脱」みたいなものを感じました。

ち◎【評】「生き延びて」と大きく構えておいて、おでんをあたため「なおす」。ケチくさいけど枯れたサラリーマンのおじさん。一人の生活に満足しているから結婚とは無縁。

爽◯【評】生き延びたからおでんをあたためなおすことができる。冷えていたおでんがあたたかくなっていくのをその人はどんな風にみたんだろう。

幽◯【評】何か死と向かい合うような出来事があって、それをくぐり抜けて帰ってきて、なにごともなかったかのようにおでんを暖めている様子。生き延びたことの恐ろしさを紛らわすかのようで面白い句です。

林◯【評】病み上がりにごはんを食べられるよろこび。あるいは人の死に接して、ものを食べ生きている自分をふと意識するとき。おでんを温め直す行為の素朴さが「食」と「生」をしみじみと結びつけていて、素直に共感

科◎【評】スケールのでかさにしばし言葉を失う。大病後とも解釈できるが、もっと広い意味での、人生すべてを見据えての「生き延びて」だと読んだ。温め「なおす」もすごいし、完全に脱帽です(←評じゃない)。

蓬◯【評】のっぴきならぬ事態発生で家を離れざるをえなくなった。収拾がついて、ようやく帰ってきた我が家でまずおでんをあっためる。原因の詳細がなんであれ、その風景はハードボイルド以外の何者でもない。

栗◯【評】会社が倒産し一家心中でもしそうな雰囲気だったが、父が思い直し家族は命びろい。昨日のおでんをあっため直し、なんとかなるよと慰めあってる図が浮かびました。14字の中に時間がある。ドラマだなあ。

藤◯【評】別に九死に一生を得たとかではなく、いつもどおり出勤して帰ってきただけ。日常と非日常はことばひとつで行ったり来たりできることを、さりげなく取り入れた句。

朧◯【評】〆切とか何か地獄を見たのかな。日常でも「しぬー」と言ってしまう事は多くて地獄の明けたあとに日常に戻っていく感じを大げさではなく切り取っていてよい。ガスコンロのかちっという音まで聞こえた。

凡◯【評】食べる前のおでんへの眼差しが感じられる。生き延びるをあまり重く捉えたくないな。

く◯【評】たいしたことがあったわけでもないのに、あえて「生き延びて」って言ってる気がする。あー、今日も生き延びたわー、おでん食べよう。おでんって、「日常」を表すものなんだな。

帽◯【評】上五は譬喩というか誇張法ととらえたい。ただ生きるならあたためるだけだが、生き〈延び〉るとなれば確かにあたため〈なおす〉だろう。使うと緩む複合動詞をダブルで使って成功した珍しい例。

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4 深宇宙サービスエリアのおでんかな    るいべえ (る)
"炭,朝,蓬,鶴 (4 点)"
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炭◯【評】夜の高速道路は照明灯が並び、宇宙のトンネルを走ってるように思える。疲れて立ち寄ったサービスエリアで合わせる何時間かぶりの他人と、おでんの暖かさが重なり、ほっとした心境。

鶴◯【評】夜のサービスエリアは異世界っぽいですよね。闇は深くて異世界はどこまでもつづいているよう。その不安の広さと、おでんの安心の小ささが対比されて、ファンタジーみたい!と思いました。

蓬◯【評】「おでん」から発想をどこまで遠くに飛ばせるか悩んだ作者の一人として「その手があったか!」と白旗。きっと深宇宙SAも蛍光灯が煌々と点ってて、あんまりおでんがおいしそうに見えないはずだ。

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5 鍋カレー鍋カレー食べ一週間    しっぽ (ぽ)
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6 おでんには甘い具ないよと姪に言い    朝顔 (朝)
"子,は,珈,数,知,森 (6 点)"
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森◯【評】たぶん外出先で何か食べる?と訊ねたら「おでん!」って答えが返ってきたんだろう。小さい子が甘いものだけを欲するわけではない。「酢こんぶ!アイスのコーン!」と答えてたことを懐かしく思い出して選。

子◯【評】よくわからない情景だけど、「姪に言い」の微妙さが気になったので。

は◯【評】質問が姪っぽくていいな、と。そう言われれば、ピンクのやつは甘そうですね。

数◯【評】なんとなく、若い叔父が小さい姪っ子に「甘いの」ってねだられてるような可愛らしい雰囲気ですね

珈◯【評】もうすぐ中学生になる甥や姪ともこういう会話をよくしたなあと懐かしくなって。でも子どものいる夕餉におでんは酷だよね。ロールキャベツと玉子ぐらいしか認識できないんじゃないのかな彼らは。

知◯【評】子供の頃はおでんはあんまり好きではなかったなあ。玉子しかおいしいと思えなかった。いつから好きになったんだろう。おでん食べたい、と言った姪に甘い具はないよ、と言っているのか。

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7 先生のおでんはおやつに入りません    藤幹子 (幹)
ち (1 点)
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ち◯【評】わがままな教師って素敵。大人になれば煙草も吸えるし泥酔もできるしおでんをおやつに数えたりできる。大人になることの魅力を存分に伝えている。上から目線で傲慢に、生徒にこう告げてください。

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8 丸いものばかりのおでん生返事    オカヤ (茅) <特選>朧 (2 点)朧朧,雪,百,凡,栗,藤,ひ,科,碍,噛,白,幹,森 (14 点)"
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幹◯【評】おでんが余り好きでないので良く解る!大根とガンモがあればいいの。あと手羽元か牛すじ。聞いてきている方は困惑しているだろう。おでん好きとの溝にニヤニヤする。

森◯【評】三角や四角もあるのに、確かにおでんは丸いものばかりという印象がある。煮込むほどに具の角が取れるからかな。生返事の口開いた感じも丸い。が、心ここにあらずの会話では角が立つよ、注意(自戒を込めて)。

噛◯【評】上の空なのは目の前のおでんが楽しみで気を取られてるっていうよりも一緒にいる人の話がつまらなくて、おでんをじっとみつめてる位しかなかったのかな。だからこその発見。食事って誰とするかが重要だなー

碍◯【評】卵とかじゃがいもとか、丸いものばかりだと、箸でつかまえるの難しいから、話しかけられても生返事しちゃうよね。「箸じゃなくて、お玉使いなさいよ!」「うん」「って、ちょっと、聞いてる!?」「うん」

ひ◯【評】まさか、ボールばかりが残ってるおでんを、何も足さずに暖め直した訳じゃないよね…えっ、つみれとがんもどきも残ってたって…あ、そう。ふーん…。

科◯【評】「丸いものばかり」と「生返事」が似合ってる。どちらの言葉にも、とらえどころのなさがある。良い俳句はこういうふうに、言葉同士の取り合わせの妙を感じさせてくれるんだなあ、と感じ入った。

栗◯【評】今日はおでんよと出された鍋の中には、気の利いた具がない。大根、じゃがいも、つみれ。どれもいいがハレ感がない。巾着も入れろ。そんなおでんを出す古女房に、旦那が適当に相槌。生返事が効き長年連れ添った感

藤◯【評】生返事ってかたちにしてみればきっとたしかに丸い。それに、おでんの丸いものは、どれも白っぽくて、その白っぽさも生返事らしい色だ。正確な観察眼を称えたい。

白◯【評】最初のころは、まんべんなく具を入れていたのに、だんだん好物だけに進化したんじゃないかな。だから、返事も生返事。

朧◎【評】会話にもおでんにも集中できていない感じ。重大な話を切り出す前なのか、会話がつまらなくておでんにも「丸いな」としか思えないのか。意味の分裂はしましたが「生返事」がよかったので特選です。

凡◯【評】おでん(煮えてる)と「生」の実は二物衝突。僕も生返事で一句つくりたい。

雪◯【評】コンニャクすきなんでしょうね。丸いものばかりのなかで三角を探してて生返事。その隙に重大発表があったりして。「ということで車買っちゃったから」「ふーん、そう、......えっ」みたいな。

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9 おでんアリしばらく帰りません母    ミホノフ (穂)
"<特選>平,屁,る,ひ (8 点)""平平,屁屁,るる,ひひ,雪,C,帽,藤,猪,鯖,林,知,芽,茅,ふ,智,ち (21 点)"
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茅◯【評】家出するのに家族分の食事を作ってしまうのが母(的な女)。おでんなら時間たってもおいしいしつまみにもおかずにもなるし…という気の回し具合も悲しくていい。

ふ◯【評】俳句で書き置きとは!しかもしばらく帰ってこないとは!驚きにあふれた句。でもこの親子は“不幸”ではない。『猛スピードで母は』のイメージ。

智◯【評】おでんを作って書き置きも残してすごくお母さんらしいのに、どうしてしばらく帰ってこないのか。おでんは今晩食べちゃってよいのか。メモの不十分さもお母さんぽい。

ち◯【評】母は2時間以内に帰ってくる。それまでに夫と子らはきちんとおでんを食べ、もちろん母の好物を取り分けておき、後片付けをきちんと終えておけばまた半年間楽しい家族生活。妻や母であることを脱ぎたい日。

芽◯【評】同窓会にでも行くのかと思いきや、そのまま実家に帰ってしまうのか。母の思い切った行動に子供は心細さを覚えるのです。お父さん、迎えに行って謝って。

ひ◎【評】行き先が実家ならば、どっきり。誰かの身に危険が及んだのか、それとも、知らぬ間に父と不仲になっていたのか。ご近所のスナックでのカラオケなら、味わって頂けそうです…。

林◯【評】たまたまこれに似た別の句を知って好きになっていたので、「どっちを取るか」と一人勝手に悩んでしまった。惚れたあの子は忘れがたい、でもやっぱりこの子にも声かけたい…一票入れさせて下さい><(浮気)

平◎【評】詳細も告げずに居なくなるなんてえらい事なのに、おでんでまぁ大丈夫なのかな、と思ってしまう。具が少なくなるにつれ寂しい気持ちも出てくるのでしょう。物語の始まりだけでなく、展開まで仄めかす凄い句!

藤◯【評】行き先も告げず、いつ帰るかもさだかでないなんて不穏きわまりないが、しかしおでんが用意されているならなんとなくおとなしく待っちゃうかな…。この知恵の使いどころと心遣いが、いかにも「母」

里◯【評】こんな書き置き本当にありそうでこわい。でも母さんはきっと、おでんが無くなる頃に帰って来てくれるはず。

る◎【評】なんとなくムーミンママを思い出す。母が家を放り出しても別にいいのである。おでんという1日2日あけても大丈夫なものを用意するところが静かな決意を感じさせる。

C◯【評】おでんの量が母の怒りと比例しているとしたら、なんとも複雑な愛情ではないだろうか

鯖◯【評】ちゃんと作ったおでんのほうがコンビニで買ってきたおでんがおいてあるより深刻な気がしますね。

帽◯【評】事情の軽重はわからないが、それ以外のことはわかりすぎるくらいわかる。類想が多そうなのは残念だけど形が好き。

知◯【評】家出なのにおでんを作っておく母。家のことが心配なのですね。「しばらく帰りません母」が好きです。

雪◯【評】アリ、というカタカナで、すぐにメモ書きだと分からせるのがうまいなぁと。「おでん」の存在で、家出なのか、急用なのか、今まできちんと「母」であった人のやむにやまれさが伝わります。

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10 とりあえずビールおでんは大根を    ちよ (地)
"珍,じ,舘,麗 (4 点)"
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じ◯【評】なにから食べようか、と楽しみな感じが伝わってきました。おでんは大根から、今までそんなこと考えたことなかったですが、大根からだったかも、と思ってしまいます。

珍◯【評】なんでもない句でありながら、五七五にびしっとおさまった形のよさ、無駄のなさを評価。「とりあえず」なんだけどいちばん好きなふたつを選んでいるのがほほえましい。自宅でもお店でもいいな。

舘◯【評】わたしの注文じゃん、と思ってしまったので選句しました。どんなに身体が冷え切っていてもとりあえずキンキンに冷えたビール、おでんは大根。とても素直な句で好きです。

麗◯【評】その通り。できれば、まずはビール、おでんなら大根です。しばしば最初から甘いお酒を飲みたくなる者としては、その選択は大人のチョイスだと憧れるわけです。いい。いいな。

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11 熟慮しておでんの煮える音しづか    みつん (光) <特選>珈 (2 点)"珈珈,酒,じ,屁,好,穂,舘,噛,爽,林,茅,妹,幹,ん (15 点)"
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酒◯【評】屋台で独り酒してるおやじは、たしかにどこか気障かもしれない。仕事のこと、家庭のこと、ハタから見ればたいした逡巡ではないことを、おやじは独り屋台で思いめぐらすのだ。…というのを俯瞰で見た句。

茅◯【評】問われて、答えなんてなんにも考えてないのに眉間に皺を寄せてポーズだけ作っている人がはじめて発したことばがこの句。小癪なんだけど笑っちゃう。

妹◯【評】ぐつぐつぐつっていうおでんの煮える音、たまに、冷蔵庫がブーンっていうぐらいで、あとはシーンとした部屋、熟慮にはもってこいの環境。おでんを煮ながら、おでんの句を考えてたひとの句かも知れない。

幹◯【評】一人屋台で、あるいは台所で、シチュエーションと熟慮の内容はさまざまあれど、この静かな時間は確かに知っていたような気がする、そんな気になる句。

ん◯【評】言われてみれば、おでんって煮込む時間が長いから、考えごとに向いてるなあ。屋台って発想はなかったけど、だとするとまた違うイメージが広がって面白いです。

穂◯【評】「音しづか」と気づいたのは誰でもないのかもしれないが熟慮中の人と捉えても。熟慮しつつ耳の端にあるおでんの存在。人を夢中にさせないおでんというものの地味な感じが出ている。

好◯【評】熟慮して、がとてもうまいです。おでんの鍋がことこと煮える音が聞こえてきそう。これも歳時記候補!

舘◯【評】考え事があってでもご飯を作らないといけない時に鍋は最適。放っておける。台所の脚立に腰掛け考えてる姿がくっきりと浮かんだので選句しました。

爽◯【評】おでんの煮える音が「熟慮」の音にもきこえました。そういえばおでんは沸騰していないな、しづかだった!と納得した句。

林◯【評】昼下がりの主婦のイメージ。夕飯の仕込をしながら、一人きりのキッチンで何事か黙考している。彼女の頭のなかに呼応するように、鍋からはふつふつと小さな音が聞こえてくる。料理中って、こういうときある。

噛◯【評】なにを熟慮してたんだろう。本当は周りはうるさいのにおでんの音しか聞こえなくなる位おでんに集中して味の調整を考えてるおでん職人だったら素敵。ぜひとも食べてみたい。

屁◯【評】チビ太のポーンと抜けた笑顔がありありと。それがぱっと浮かんだだけで、一票投じたくなりました。
屁◯【評】おでんのくつくつ煮える音が、一点集中入り込んだ人の静けさをくっきり浮かび上がらせて、風景描写として秀逸だと感じました。

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12 酒尽きてちくわぶ残るおでん鍋    好餌 (好)
"珍,友,穂,る,珈,く,知,崖,妹,ん (10 点)"
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崖◯【評】あるある! これ良い句ですよ。酒尽きて、も含めて作者の方に、3年後、10年後「あああ、これ、作った作った」と鑑賞してほしい

妹◯【評】おでんで好きなのは何かって聞かれたら、一も二もなく、ちくわぶと答えます。こどもの頃から好物です。でも、ほとんど賛同が得られないことも、とってもよく知っています。かわいそうなちくわぶ

ん◯【評】ちくわぶ、関西では入れない(よね?)ので実は食べたことがないです。なので迷ったんですが「あるある」と言いたくなったので選。この句の状況を体験してみたい。

穂◯【評】さんざん飲み食いしたあとのおでん。煮詰まり、ちくわぶのでんぷん質でどろりとしている。場の雰囲気も同じくらいどろりとしてそう。たしかに私の周りの酒飲みはちくわぶ残しがちです。

珍◯【評】しこたま呑んで酩酊しつつもおでんは好きな順に食っている、というおかしみを取って。「尽きて」と「残る」の対比もいいですね。あざやか。

る◯【評】おでん種には明確なヒエラルキーがある。その中で最底辺を構成するのがちくわぶとこぶである。(好きな人すいません)なんとなく明日の朝飯にだしと一緒にご飯にぶっかけたりされそう。ちくわぶの哀愁。

く◯【評】残るのがちくわぶだという部分はわたしにとってはあまり重要ではなく、おでんが「残る」っていう絵が見えたので選びました。今回一番おでんで飲んでる感を感じた句。

珈◯【評】たしかにちくわぶで酒は進まない。腹にたまるし。だからか、出先で「腹を満たすために」コンビニおでんを買うとき、ちくわぶを選ぶことがある。無意識に主食扱いしてたのかも。

知◯【評】やっぱり残りますよね。ちくわぶ。好きなものを食べていって最後にちくわぶが残っちゃう。

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13 おでんだしからしいろまじりあひし黄身    マオリ (森) <特選>夕 (2 点)"夕夕,る,ひ,は,地,爽 (7 点)"
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爽◯【評】おでんの入ったお皿に自分の視界が近くていい。だしもからしもまじりあっている中で「黄身」はしっかりしてるのもいい。

地◯【評】おでんの色合いはさほどきれいではないのだけど、黄身とからしの黄色がピックアップされてとても鮮やかに見えた。

ひ◯【評】透き通ってなく、濁ってもいず、ぼんやりとした色彩。玉子の黄身も強度がなくて、ただ、からしの色だけが線としてある。おでんって、不思議な食べ物だ。

夕◎【評】あの濁った黄色は間違いなくおいしい色だから。それが14文字にくっきりつまってる。

る◯【評】あの濁った黄色はおでんの中でももっとも食欲をそそる。ひらがなの流れが濃さの微妙に違う汁の色合いにマッチしている。

は◯【評】だし、黄身が混ざっている様子か文字からも感じられる。そんなだしだと、こちらまで吸い込まれそう。

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14 汁のみの四日目おでんにうどん入れ    サトミ (里)
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15 三日目のおでんのつゆや午後三時    くにこ (く)
"好,朧 (2 点)"
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好◯【評】午後三時という時間設定がうまいですね。「三日」「三時」で数字を合わせるのは難しいところかなあ。私なら四日目にするかも。

朧◯【評】このつゆには大根のかけらや玉子の黄身の溶けたのやじゃがいもの小さいのがはいってる。おやつに炊飯ジャーあけてごはんよそってつゆかけて食べよーっと。実家の景色。

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16 おでん屋の女将こひしや濡れた足    甘噛 (噛) <特選>"舘,丼,森 (6 点)"
"舘舘,丼丼,森森,友,平,C,珈,芽,爽,ふ,百 (14 点)"
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森◎【評】雪降る夜に切にぬくもりを求める感じがよく出てる。熱々のおでんに人情のあつい女将、さらに美人女将(←美人ついた!)の白い肌に足を絡ませあたため合いたいというエロスな欲求までが感じられて唸った。

ふ◯【評】おでんのよさは、おでんそれ自体にあるのではないのだ。ほのかに漂うおでんの香りとおっさんの幸せ、恋心。おっさんに、今日もお疲れ!と言いたくなった。

芽◯【評】営業職で冷たい雨(か雪)の中を沢山歩いて徒労に終わった夜、女将の笑顔にお腹も心も温めて欲しいと言う強い憧れを思いました。女盛りなんだろうなぁ、女将

丼◎【評】雪やら雨で足まで濡れて冷たくなった体を温めたい。温かいおでんが恋しい。よく気がつく女将も恋しい。女将としっぽり、は夢想でしょうが。

舘◎【評】リア充句だなぁ。濡れた足ってなんて性的なんだろう。その濡れた足は誰が暖めるのか?たまらん。童貞や素人童貞には詠めない句だな。参りました。

爽◯【評】ひと目会いたいけれど、このひと会わせてくれなそうだ。私は女将に会えないけど、今度足が濡れたらこの句を思い出しそう。

平◯【評】おでん食いたいなぁ女将美人だよなぁ足冷てえなぁ、なんてやってるうちに、あれ、はたして目当てはどれだっけ?ほんとは全部なんだけど、我が家なら温もり、おでん屋なら女将を正解にしちゃうんだな男は。

C◯【評】鬼平犯科帳の世界。ぐっと来た。下五をいじってバリエーションつくりたい。「跳ねた髪」にしてナンノ風にしてみたり(いや、なんとなく。ナンノファンでもなく)

珈◯【評】きゅんきゅん!足指の感覚がなくなるほど冷たいみぞれの夜に、それでも会いたい気持ちの熱だけで早足で行く男。お酒のCMの設定にもなりそう。女将役は木村多江さんがいいと思います。

友◯【評】おでん屋を句にするときは店主を詠めばよかったのか、と思って。いや、もちろん、ふくらはぎも気になってる。

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17 鍋の底おでん微かに揺れ鳥目    鶴谷 (鶴)     <特選>"茅,林 (4 点)"
"茅茅,林林,蓬,噛,ん (7 点)"
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茅◎【評】屋台は外だから暗いのと酔っ払いのいいわけ感が混じっていて、読んでる自分も酔っ払っいくらくらする。景が「見える」以上に体感できた気がして特選

ん◯【評】おでん鍋の底の方って確かによく見えないけど、あれは鳥目のせいだったんですね、と、なんか不思議に納得してしまいました。

林◎【評】不穏で不思議な句。おいしそうじゃないし。暗い部屋で、井戸でも覗くように訝しげに鍋の底を見つめている。ああ具がよく見えない…深淵から見つめ返サレテイル…とか言って、次の瞬間ぱたっと倒れてしまいそう。

蓬◯【評】照明をつけそびれたまま日が暮れた台所の鍋の底。おでんの揺れに目がいくほどの静かさに惹かれました。

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18 おでん食べからし付けぬと口喧嘩    メタル彗星 (彗)
"栗,穂,舘,数,二 (5 点)"
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穂◯【評】「からしがピリッとするのがいんだろ!」「あっそ」「この甘辛い練り物にからしがあるから食えんだよ!」「ピリッとしてない食事でどーもすいませんね!」口喧嘩で収まるといいが…。

舘◯【評】いかにもありそうな風景を句にする才能にやられました。わたしもラー油で夫とやらかしました。ひとの好みにケチをつけたらダメ。

栗◯【評】人の好みとわかっていても、蕎麦に薬味、おでんに辛子をつけずに食べてる奴みると、つい文句を言いたくなってしまうよね。あるある句だな。気心知れた仲だからこその口喧嘩。ある種の風物詩。

数◯【評】私の地元では「からしみそ」というからしでないものを付けるので、こういうこともありえそうです

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19 悪童の笑み晴れ晴れと串おでん    酒井 (酒) <特選>栗 (2 点)
"栗栗,幽,珍,屁,波,ち,黒,地,碍,丼,ふ,穂 (13 点)"
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ふ◯【評】真っ先にチビ太が浮かぶ。「おでん好きに悪いヤツはいない!」みたいなことを言われてもなんだか許せそう、と思う。

穂◯【評】遊びの最中に駄菓子屋かどこかで食べてるのか、夜の食卓か。はふはふ頬張る姿が浮かぶ。もう遊びの続きがしたくてテレビの前に行きたくてうずうずしながら。膝小僧は粉ふいててほしい。

珍◯【評】元ネタを知らずとも取ってしまう人がいそう。それくらいちゃんと俳句になっていてビビる。チビ太は考えたのですが、作らなくてよかった…。特選と悩みました。

丼◯【評】生き生きとしたチビ太を想起させられただけでやられてしまった。

幽◯【評】おでんは悪童の悪戯の結果だと取りました。でもそれがお金だったり(やりすぎ)、お菓子だったり(幼すぎ)しないで、おでんってのがなんだか「ちょうど良い感じ」。

ち◯【評】いいなぁ、こんな悪童。鼻たらしてて冬でも半ズボンで、目のキラキラした男子。芯の強い大人になりそう。枯枝、傘、縦笛とか、棒状のものに男子は惹かれるんだなぁ。もう持ってるのにねー(爆

碍◯【評】そっか、チビ太かー! 全然気づかなかった。串おでんを手に、悪ガキだったころのような莞爾とした笑みを浮かべたお父さん、を思い浮かべて選。おいしそうなおでんだ。

波◯【評】子どもは嫌だが、悪童ならばまあよし。串おでんにぎってバタバタしているその笑顔も、また憎たらしい・かわいらしい。晴れ晴れで、冬のかーんとした空も見えた。

地◯【評】チビ太!理由はそれだけかも。でもいい句です。チビ太でなかったとしても、串おでんを持った子が笑っているだけで気分がよい。

栗◎【評】おそ松くんとチビ太。背景に土管が見えるよう。串おでん、という言葉にやられた。子供の頃、おでんは串に刺さってこそだった!どうして自分の句にこの言葉を思いつかなかったか悔やまれ、特選に。

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20 街あるきおでんも缶にはいりけり    まる子 (子)
"数,千,知,幹 (4 点)"
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幹◯【評】驚きか慨嘆か。単純に驚きだといいな、辛気臭くない。おでんが缶に入っちゃうのか!と、手にとってためつすがめつしていそう。多分私もする。

数◯【評】缶のおでんあるなぁ…なんかちょっと寂しさもあるけど、時代の流れかなって風情

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21 余所見するしゃらくさいおでん冷えはじむ    平ん (平)
科 (1 点)
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科◯【評】たたみかけるようなリズムが良い(余所見する、しゃらくさい、でそれぞれ切れると読んだ)。そのリズムが、余所見している相手に対し「しゃらくさい」と言う主人公の思いと合っている。

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22 風船やおでんが嫌いになる魔法    幽樂坊 (幽)
"百,帽,鯖,崖 (4 点)"
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崖◯【評】魔法きましたね。かけた人に言いたいのは「小僧、ソープへ行け」じゃなくて、ええと、奇想を俳句に盛り込むのって、難しいけど、こういう俳句はどんどん見たい!

鯖◯【評】なんでしょうコレ。赤塚漫画っぽいのかな。ホントなんなのコレ。

帽◯【評】上五には疑問がある。中七下五からはおでんを好きすぎて困ってる感が伝わってくる。もう恋。

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23 21世紀はトマトおでんになりにけり    渡邉朧 (朧)
"猪,麗 (2 点)"
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麗◯【評】トマト鍋の存在を知った時、衝撃的だった。トマトのおでんもあるのかな?(食べたことないが。)でも、けっこういける気がする。(しかしふつうに食べたいなトマト。)頭からトマトが離れなくなり選

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24 おでん鍋とろりと笑うトマトかな    ちねり (C) <特選>"幹,じ (4 点)"
"幹幹,じじ,地,虎,崖,穂 (8 点)"
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崖◯【評】擬人化は難しいとは思うんですが、トマト笑うのはいいですねー。だから「とろり」が成立する。モッツァレラチーズとトマトのおでんの描写です、これ。書かれていない黄色いチーズが見えました

幹◎【評】これはとろりの勝利。トマト鍋すら食べたことがないけれど、そんなこちらの戸惑いなど知らず鍋から婉然と微笑むトマトが、皮がめくれてとろけたトマトが、美味しそう…

穂◯【評】とろ火にかけられたおでんの中で丸いトマトがゆっくりと回転している。「とろり」「笑う」の表現がしっくりきた。茶色い中でひときわ赤いトマトに「笑う」という言葉がぴったり。

虎◯【評】おでんにトマトは、数年前まであまり馴染みのなかったわりと新参の具だと思うのですが「とろりと笑う」にその良さが集約されていて、惹きつけられました。言葉のきれいな句です。

地◯【評】おでんのトマト、食べたことないけど、きっとおいしいんでしょうなぁ。おでんの仲間に入れたので、トマトも笑ったのかもしれない。

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25 ほしいまま白とグレーをおでん鍋    よもぎ (蓬)
子 (1 点)
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子◯【評】つみれとはんぺんが好きな人なのだろう。おでんぽい具。「ほしいまま」が「白とグレー」である事の偏り具合が、好みとはまさにこういうものと思えて○。色だけだと食べ物感がうすくなるのが気になるけれど

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26 袋あけてぼとりぼとりのおでんかな    トモサダ (友) <特選>芽 (2 点)
"芽芽,雪,百,黒,ひ,朝,蓬,く,鶴,子,ち (12 点)"
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子◯【評】おでんというと浮かぶ湯気ほかほかと違い、一人きりの食事が想像される。「ぼとりぼとり」という音がいい。鍋の時の、ことこと、ぐつぐつと対比されてておもしろい。

ち◯【評】ぼとりぼとり、という音から、温める前の冷たいおでんなんだろうなぁ、と。熱かったらもっと注意してそーっと皿に入れるだろうから。冷たいわびしい感じが皮膚経由で伝わってきました。

芽◎【評】仕事で疲れて帰途に付き、何か夕飯を…と思い出来合いの具入りのおでん袋を購入。ため息をつきつつ鍋にあけている情景が浮かびました。でも、食べたらら体も温まって明日も頑張ろうと思うのです。

黒◯【評】ぼとりぼとりと音が聞こえてくるところから一人暮らしであることが想像できる。おでんを読み込んでいるのに、暖かさよりもむしろ冬の厳しさを感じられるところが面白くて○。

ひ◯【評】非常食としてまとめ買いした袋入りおでん。料理する気力もなく、非常食を常食にしつつある一人暮らし。はねさせずに器に移すコツだけがうまくなってゆく…。

鶴◯【評】そうだ!ぼとりぼとりだ!と、実感がやってくるスピードの早さ。音が再生されました!

蓬◯【評】それだけの句なんだけど、すごい写実。上五の字余りも擬音も、おでんを入れるテンポにぴったり合ってる。

く◯【評】とにかく「ぼとりぼとり」がおでんらしい!この言葉をどう入れるか、だけど、どまんなかに持って来て最後に「おでんかな」の王道(?)が気持ちよかった。

雪◯【評】「ぼとりぼとり」の写実の強さ、昔はなくて、でも今の台所には確かにあるものについて言ったおもしろさで、特選と迷いました。好きです。

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27 此頃は囲まずに食ふおでん鍋    あら丼 (丼) <特選>炭 (2 点)
"炭炭,雪,知 (4 点)"
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炭◎【評】コンビニでもおでんは買えるし、ひとりでもおでん鍋は作れるな…、と独り身の寂しさが見えたと同時に、思う当人が欠けた実家のおでん鍋の景も見えた。どちらにも取れて、かつ面白い句だと思い特選。

知◯【評】此頃はというところに前は囲んで食べていたのかなと想像させる。

雪◯【評】囲まなくなったのは鍋全般に言えることですが(一人鍋とかある)、「コンビニで買える、そのまま食べれる」独り身感の高さはおでんが上。「 此頃は」が個人の体験と時代の変化を二重映しにします。

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28 おでん屋のいっときふれるミワロック    レエベマン (爽) <特選>"凡,帽 (4 点)"
"凡凡,帽帽,炭,ひ,夕,黄 (8 点)"
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黄◯【評】屋台を畳んである時にしてある南京錠か。その屋台の味、親父さんが大好きな常連。今日もいつもの場所にあの屋台が来て。夜が来た。錠という固有名詞の硬質な言葉と温かい情景の広がり。世界観好き

炭◯【評】南京錠といえば「MIWA」だ。おでん屋の主人も習慣となって気にも止めないような「触れる(そして鍵の冷たさも分かる)」行為に良く目を付けた句だと思います。

ひ◯【評】アルミサッシのガラガラとした戸の鍵を回し、仕事の準備に取り掛かる。デザインされた店ではなく、居抜きで始めた商売。居酒屋兆治の高倉健かなあ。

凡◎【評】南京錠はMIWAロックと普通呼ばないから家の鍵か。だとするといっとき触れる特別感が弱いのだが、おでんという題材の郷愁的「良さ」と触れ合わないように作句する気概に卵一個おまけ的◎。

夕◯【評】寒い夜、店内はおでんの湯気で結露したアルミサッシ。狭い店の中でスペースを空ける為に端によける。不意にひやっと当たる湿ったサッシのカギ穴部分。温度差、湿度、賑いさえも感じられる様で好きです

帽◎【評】〈の〉が主格か所有かで迷うが、適確なブランド名で決して厭じゃない安普請感と外気との寒暖差をみごとに産んだ。〈いっとき〉の措辞に乾杯。

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29 おでん汁すするとき目を閉じる君    珈琲 (珈)
二 (2 点)
"二二,じ,猪,舘,地,数 (7 点)"
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じ◯【評】おでんを最後まで堪能してる仲の良さと、その光景を静かに見ているところがすてきだなと思い取りました。

舘◯【評】わたしは食べ物を口にする時に目を瞑る男が嫌いだ(中山秀某)とにかくこの句はその男の顔がちらつき本当にキーっとなった。初めてキーっとなった句なので選句しました。

地◯【評】おでん以外の時はパッチリと目が開いてるのかな?いつも閉じてるけど、平たいお皿からすする行為が珍しいから気になるのかな?気になるんだね、いろいろ。

数◯【評】ニヤニヤしながら見ていて、目を開けたあと「何?」「何でもない」って、イチャイチャするとこまで想像してしまいました

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30 おでんなら大根ふつうの君がすき    雪 (雪)
"平,好,ち,朝,鯖,黄,ふ,ん (8 点)"
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ふ◯【評】「おでんといえば大根」と言わねばならぬような空気を気にしない(敢えて逆らうのでなく、そんなのは思いもよらなかった風な)、そんな彼女に私もきゅんとする。

ん◯【評】なんでも「ふつう」が好きだよ、と言っている句と解釈しました。もし自分がこう言われたら「えーっ」って言っちゃうかもなあと思いながら選。

好◯【評】大根はおでんにかかせないけどスター性は薄い。君もそうだね、という句なんですね。中央線的地味さがいいです。

ち◯【評】男の子がこう言ったとして。大根→君、と思いつくなんて。なんてひどいと思うが、それが平熱カップルの証なのかな。淡々と過ごす中にもほんわり愛のある感じ。味わったことないな…

平◯【評】俺は巨人とドコモと自民党が好きだ!なんて言ったら顰蹙ですが、おでんの大根は普通で定番で美味しく一番愛される。ふつう、だけならむっとなるけど、おでんの大根なら自他共に認めるNO.1なんだなあ。

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31 ラジカン閉館おでん缶開缶す    黄犬 (黄)
"平,波,凡,栗,虎 (5 点)"
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虎◯【評】秋葉原の街全体から感じられるメカ男子っぽさが、カンという音の繰り返しで硬質かつ緊密に表現されていて面白いです。閉館と開缶の対照も、閉じる→開く、という時系列になっていることで開放感が。

波◯【評】アキバ俳句のフロンティア!ただおでん缶のみでは物珍しいだけだが、ここに確かに秋葉原に居そうな男の香りがする。カンで押韻してラッパー気取りなのも、アキバの背伸びを思わせ、転じて好感に。

平◯【評】「ん」の連続で歩んだ歴史。「おでん」の「お」で狂ったリズム。でも「缶開缶」のKKKで新しい時代の幕開けだ!みんなで除幕式はできないけど、一人で気軽にopenできる新しい時代もいいじゃない。

栗◯【評】秋葉原二大名物、ラジオ会館おでん缶!消えゆくもの、生き残るもの。音と共に見事に景色が見える。秋葉原デパートもなくなっちゃったしなあ。惜しみつつこの町が持つドライさがカンカンカンと響いてくる。

凡◯【評】実は五七五からあまり外れてないんだな。秋葉原は移ろいの激しい町だからリズムが激しいのもあってる。……でも開缶まで言わなくても十分だったかもな。

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32 あつあつの おでんをみやげに 急ぎ足    ふみ (二)
夕 (1 点)
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夕◯【評】本当に何でもないんだけどちょっとうきうきする感じとか、もし誰かへのみやげなら待ってる人がいるっていいことだなあって気持ちがあったかくなった。

里◯【評】普通の句なんですけど、「みやげ」が待ち人を暗示していて、スペースも意識しちゃうけど、それが逆に、走ってる時の息つぎにも思えて来て、ほんと逆に、スペースにやられたーという感じです。

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33 郷の味、語り合いつつ減るおでん    なご (和)
は (2 点)
"はは,平 (3 点)"
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平◯【評】NYがメルティングポットなら東京はおでん鍋なのかな、なんて。各地の個性あふれる具材も伝統ある味付けも東京色に煮込まれるけど、おでんは汁じゃねえ具だ。あ、でも味は染みてる方が旨いよね。

は◎【評】鉢のような皿に盛られたおでん。多いと思っても、皆集まるとつい食べてしまうものです。毎回微妙に違うのも、郷の味。

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34 夢に来し菩薩黙つて食ふおでん    ことら (虎)
"雪,智,藤,穂,地,数,く (14 点)"
"雪雪,智智,藤藤,穂穂,地地,数数,くく,幽,友,幹,C,波,黒,る,朝,科,碍,噛,鯖,光,白,妹 (29 点)"
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妹◯【評】とにかく黙々と食べてそう。一定のリズムで噛んで、すごく美味しいくせに特に美味しそうなそぶりも見せず、でも気に入ったタネは多めに取ったりして、黙々と食べてる。菩薩が。

幹◯【評】夢はちょっとずるいかもしれないが、しかし夢でなくてはなかなか菩薩も現れないわけで。何しにきたんだよ!と突っ込むしかない、菩薩とおでんのとりあわせがすてき。

穂◎【評】黙々と着々と菩薩は食べ進む。穏やかな表情で。そんなにうまいのか、どこまで食うのか、このまま食べ尽くしたら菩薩はどう出るのか。ありがたさから次第にソラ恐ろしい気持ちになった。

智◎【評】ありがたい菩薩があらわれた。唇には薄井笑み。なのに、おでん。菩薩が黙って。

黒◯【評】ありがたいんだか何だかよく分からない句。夢の中に菩薩様がきてくれたのはいいけれど、ご宣託を下す訳でもなく黙っておでんを食べるだけなんてテンション下がる。せめて一緒におでんを食べておきたい。

幽◯【評】おでんでも鍋でもどうしても無口になるものですが、夢であっても菩薩であってもそのルールは崩れてない。菩薩なんだからもっと自由にすれば良いのにおでんに負けてる。面白いです。

碍◯【評】菩薩さまが夢に出てきて、ありがたいお告げを垂れてくれるのかと思ったら、一人でおでんかよ!という吉田戦車的なシュールさに選。〔{(夢に来た菩薩)が黙って食べる}おでん〕という構文は複雑すぎる?

波◯【評】夢に現われた菩薩がおでんを黙々と食べているって全くもって意味不明なのだが、妙な説得力がある。菩薩パワーを召還せしめた句か。

地◎【評】菩薩の文字が輝いてみえたので特選。黙ってモグモグして帰って行ったんだろうけど、ありがたい感じ。なんだかわからないところがすごく素敵。そもそも夢で菩薩なんだからなんでもアリだもんね。

科◯【評】おでん食ってないで託宣とかしてよ! とも思うが、同時に、ただ黙っておでん食ってるだけでも(救済とかしてくれなくても)菩薩は菩薩だ、と納得させられる力がある句。山川草木悉皆成仏。おでんも菩薩。

噛◯【評】菩薩とおでんの取り合わせの妙!黙ってないでなんか言ってよ!って突っ込みたくともそれを許さないほどおでんを食べる姿も神々しかったんでしょう。私なら起きたら即おでん食べて宝くじ買いに行きます。

藤◎【評】菩薩がおでん食べてるところが見たい!!めちゃくちゃ見たい!!菩薩みたいに美しいぼくの彼女、とかじゃなくてリアルに菩薩じゃなくちゃだめ。あまりにもその光景が見た過ぎて、採らざるをえませんでした。

白◯【評】菩薩様がいらしたのに、何のおかまいもできませんで、おでんしかなかったのです。でも菩薩様はその菩薩心で、黙ってお召し上がりになりました。

光◯【評】夢に菩薩、そしておでん。これは一体何を暗示しているのだろうか?と醒めた後に首を傾げることしきり。ただ、その姿は間違いなく神々しかったことでしょう。シュールなのになぜかびしっとまとまっている。

る◯【評】菩薩は何も言わない。ただイイ姿勢でおでんを食うだけである。静かな食べっぷりなのだが、いつの間にか大量のおでんをぺロりといっている。ありがたい仏画のようである。

C◯【評】この菩薩は不機嫌であるような気がする。菩薩なのに。怖いよ

数◎【評】こっちはもう驚愕しまくりなのに、菩薩はマイペース。でも、おでん堪能してそうな菩薩

鯖◯【評】「おでん食ふ」じゃなくて「食ふおでん」であることの意味をもっとみんなには考えてほしいな。じゃあ僕はこのへんで。チャオ!

林選外【評】菩薩は施しなど受けないのだ、と思って採らず。でも、もしかして「夢に来し菩薩/黙つて食ふおでん」と切れるのかなぁと今気になっています。

く◎【評】うつくしい!おでんで菩薩を出すこの作者に敬服。おでんを超えた美を感じさせつつおでん以外では成り立たない感もあり、もう特選にせざるをえない(なにこの大げさな言いかた)。

友◯【評】「菩薩」も「理由もなくなにかを黙って食べる」のも、それ単体での力がそもそもものすごい。すごいなあ(からっぽな評)。

凡選外【評】「夢」を使うと何事も描ける。夢とかいわなくても菩薩がくるだけでいい。今ちょうど芥川賞作家が新聞に受賞エッセイ書く時期だが、川上弘美さんは大仏がやってきた話を書いて誰も「嘘ー」っていわなかった。

雪◎【評】ぜひ菩薩さまのいらしてる前で、慈悲の微笑みに照らされながら、でも視線を伏せてもくもくとおでんを食べてみたいです。菩薩さまはすこし高い所から、こちらも黙ってみててくれるはず。

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35 父さんの無罪判決おでん食ふ    崖元 (崖)
"黒,虎,碍,光,黄 (10 点)"
"黒黒,虎虎,碍碍,光光,黄黄,友,智,凡,好,帽,猪,朝,爽,麗,千,知,酒,茅,ん (24 点)"
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茅◯【評】そんなに重い嫌疑じゃない気がする。おでんだし、「父さん」て呼んでるくらいだし。たしかに無罪判決ってマイナスからゼロに戻っただけで、そう目出度いって訳でもないんだなと納得した

ん◯【評】無罪判決のめでたくなさと、おでんがちょうど合うと思いました。ごちそう食べる気分じゃないよなと。でもちょっとだけ特別な感じがするから。

好◯【評】「無罪判決」が句材になっている俳句が珍しいので、ついいただきました。ほっとした感じが「おでん」にぴったり。

智◯【評】無罪判決が出た。でも「勝訴」を持って走り出るほど、晴れがましいわけじゃない。ぼそぼそと、言葉少なにおでん鍋を囲む。

黒◎【評】父さんに対する無罪判決なのか、父さんが下した無罪判決なのか分からないのがちょっとだけひっかかってる。父さんが「無罪!」と言い渡してみんなでおでんを囲んでいるところかなと思った。

虎◎【評】長い裁判闘争を終え、湧き上がる喜びよりもむしろ、ほっとして力が抜けた、という家族の情景。たっぷりだしを吸い込んで重たい具を口にしながら静かに来し方をもかみしめている。おでん、脇役として最適!

爽◯【評】なんの罪だったのかわからないけど、おでんがちょうどいいという説得力。不思議。

黄◎【評】有罪だろうが無罪だろうが、家庭には夕餉はあります。無罪判決の日、何食べる?赤飯、鯛、寿司…ナンセンスですよね…。鍋はガヤガヤしすぎだし…。!おでん。あ〜気が付かなかった。うん。何かしっくり来る!

碍◎【評】裁判が長引き被告も原告も疲れ切り、もう有罪でも無罪でもどうでもいい、という頃になって出た無罪判決。嬉しいのか嬉しくないのか、もうよくわかんない。その晩に食べるものといったら、おでんしかない!

凡◯【評】俳句も言葉だし句会は場だから、ディベートみたいに強い言葉を持ち込むことだけで衆目をかっさらう技があってこれは「無罪判決」が大・成・功の一句。動く動かないも「有罪」じゃないわな。動かない!

和◎【評】「お父さんシャツに口紅ついてる!」はたまた「一人1個の卵、お父さん2個食べたでしょ!」みたいな家庭内裁判の無罪判決を想像。濡れ衣がはれてやっとおでんを食べる父。その疲労と安堵がおでんに合う

里◯【評】あなた、このワイシャツのファンデの跡なんなの。冬なのにジャケット脱ぐわけないじゃない!でも話し合いのすえ無罪(どっと疲れる)!そこでほかほかと登場するおでん。ちょう癒される〜ん。

光◎【評】父の浮気疑惑。母のブリザードで凍り付く食卓に、おでんの湯気が。やおら証拠を提示し無罪を勝ち取る父。めでたしめでたしおでんがうまい。深刻さとそれがほどける瞬間が上手に組合わさっている。

麗◯【評】母親がまだブツブツ小言を言い続けているにしても、とりあえず危機を逃れた父親、その場の弛緩し始めた雰囲気の中、おでんが満を持して登場。やれやれ、と思う僕。いい風景だな。

帽◯【評】前回の〈隣人の事情聴取や初句会〉(だっけ)と同構文の続篇。やがて隣人は証人台に立ち父さんに無罪をもたらしたのだった。

知◯【評】「おとうさん洗面所汚したでしょ」「犯人はタマだったの?ごめんなさい。おとうさん」で解決。おでんがなんとも平和な家族の象徴。無罪判決というのがいい。

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36 橋の下半紙の釣りでおでんかな    栗人 (栗)
鶴 (1 点)
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鶴◯【評】半紙の釣りってなんだろう?それは橋の下で行われるの?おでんがもらえるの?と考えるうちに、「あなたの知らない世界」に興味しんしんになってしまい選。ど、どなたか!

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37 おでん鍋湯気の向こう握り箸    舘ざんす (舘)
"は,光,麗,鶴 (4 点)"
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鶴◯【評】家。握り箸を怒ったり、怒られて不機嫌になったり、それはさておき食べたり。意外と複雑なのが、団欒だよなあとしみじみ思いました。

光◯【評】湯気に煙ってよく見えない向かい側。それは確かに食卓を供にしている人物の手なのに、少しよそよそしいような隙間を感じさせる。ひとりじゃないのにひとり。寂しくないけど寂しい。好きな距離。

は◯【評】自分のその頃を思い出してみると、おでん、そんなに好きじゃなかった気がする。その点、この子はなかなかやるな、と。待ち切れなさそうな様子が微笑ましい。

麗◯【評】一人暮らしをするようになって、誰かと食べるおでんが恋しくなった。握り箸をしてるのは、待ちきれないからでしょう。食べる相手、あつあつおでんの湯気、待ち遠しい気持ち。美味しい要素で成り立ってる。

丼選外【評】握り箸から、湯気の向こうは子供か。落とした理由は中六の字足らず。なんとか出来たと思うから。

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38 牛すじをおでんに入れて三年目    あま栗 (ん)
"C,る,地,芽,森,子 (6 点)"
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森◯【評】どんだけドロドロやねん!と可笑しくて選。個人的につっこみを喚起する句は好き。はや三年の方がいいのかなとも思ったけど、四年目、五年目もありそうな今のままでいいなと得心。

子◯【評】それ以外の土地から関西へ移り住んだ人でしょうか。言葉と食べ物の地方色というのは、カルチャーショックであるので、3年経ってそろそろ馴染み始めた頃なのかと。しかし3年は新たな疑問も生む頃。心配。

芽◯【評】関西圏以外から引っ越して、今まで馴染みのなかった牛筋をおでんに入れるのも慣れた。こうやって人や土地にも馴染んで行くのかな…と。おでんというより「関東炊き」と呼ばれているかも。

地◯【評】入れ始めたきっかけが気になる。今よりも、それ以前が気になる句。転居なのか恋人なのか?三年目ときづいているということは、けっこう大きな転機だったのだろう。

里◯【評】牛筋を入れる習慣が3年目なのか、牛筋を3年間も煮込んでいるのか…。前者だと関西人と結婚した新妻を想像して良いし、後者でも「煮込みすぎやろw!」って、“両方とも”面白かったのが良かったです。

る◯【評】牛すじとはおでん界の中で最も論争的な具である。牛すじ断固否定派はけっこう多い。この家もずっと否定し続けてきたのだが、三年前に決定的な何かがあったのだ。家族の皆がおぼえている何かが。

C◯【評】牛すじを入れた理由。いろいろ想像してしまう。深刻な理由、くだらない理由。で、どうするの?過去と未来が牛すじで繋がっている。

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39 オリオンも子犬も集うおでん鍋    けば名人 (ふ)
"ひ,丼,麗,鶴,酒 (5 点)"
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丼◯【評】冬の大三角形を窓から見ながらおでん、という晩御飯も風情があっていいと思った。

ひ◯【評】四谷の土手脇の屋台を思い出す。冬空の下、燗酒と共に茶色くなったはんぺんを名前のついた野良犬とハンブンコする情景です。この店は、絶対にボラない。

鶴◯【評】「オリオン」「子犬」「おでん」これだけそろってわくわくしないわけがない。寒くても平気!しかもどれも楽しい「予感」のある語。予感の段階が一番楽しかったりします。

麗◯【評】凍てつく冬の野外の炊き出し。大鍋から星空へ、おでんの湯気と匂いが流れていく。まるで星座たちは鍋を覗き、人間は食べる合間に星を見上げる。寒さや孤独といった厳しさの中にある温かさが、胸を打つ。

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40 おでんになる前の大根も好きでした    凡コバ夫 (凡)
"幽,鯖 (4 点)"
"幽幽,鯖鯖,雪,茅,智,帽,藤,は,科,森,千,妹 (14 点)"
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茅◯【評】おでんってそんな汚れも知っちゃったね…みたいなことだったんだ、なんかごめんね、汚い大人で…

妹◯【評】単なる大根好きの独り言なんだと思うけど、我が子のように慈しんで育てました、とか、あのひとがくれた最後の大根でした、とかの秘話があるかも。さては、ただの大根じゃないな、って気にさせられた。

森◯【評】初めて会った時から好きでした、さらに言えば、出会う前から私たちつながっていたんだね、的な告白に胸を打たれ、吹いた。今のあなたが好きを言うのに、根源まで遡って我物にしようとする強欲さに脱帽。

は◯【評】「も」ですからね。おでんになる前も、おでんになってからも、そのほかでも、私は好きですよ。そう思うと、大根とはいえ深くて。

智◯【評】「おでんになる前の大根」まで読んで、面取りされて味の染みこんだ大根と、生のシャキシャキした辛い大根が同時に思い浮かんで、「も好きでした」だ。たまらんです。

幽◎【評】いまさら好きでしたって言われてももうグズグズになってますが……大根をわざわざ取り上げて言うこともなさそうなのにこのタイミングって。意外性のある告白形式がとても面白かった。

科◯【評】ということは、おでんになった後の大根も好きなのだろう。「おでん」というお題で、おでんになる前と後の幅広い時間を詠んだのが素晴らしいと思った。

藤◯【評】この人はよほど大根が好きなのだ…ビフォーアフターに心をはせるほどに。ものごとの形はひとつじゃない、複数の可能性があるんだ。ということを、まさかおでんで教えられるなんて。

鯖◎【評】「お、俺だって!」と思わず作者にではなく「句に先に言われた」感があった。うまく言えないけどそんな感じがしたんだ。

雪◯【評】告白調なのがいいです、さらに、「も」と言われるとおでんになったのが惜しいような、でもゆるしがあるような。ときめきとせつなさと心強さを感じます。

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41 透きとおる汁はとなりのおでんなり    百枝 (百)
"珍,珈,崖 (3 点)"
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崖◯【評】黒い汁は関東大震災の煮炊きからはじまりましたが、京都なんかだと、鳥とこんびで出汁をとった透明のが多いです。老鶏からとった出汁は大根に合います。出汁を複数用意しているおでん屋もあるにはある

珍◯【評】運ばれてきたおでん鍋を見て歓声をあげる隣の集団。自分たちの鍋に目を移すと、すっかり平らげられ卵の黄身なんかで汁が濁っている。そっちが清んでいるのもいまだけだ、と悪態をついて靴をはく。など。

珈◯【評】のっけから玉子や福袋を崩して食べてる自分の器と、大根や昆布を品良く食べる隣のひとの器の中を比べて「またやっちゃったな...」と恥じる自分、を想像しました。

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42 問いかけの染みるおでんの白を切る    じょーじ (じ)
"子,ん (4 点)"
"子子,んん,幽,炭,噛,光,林,白 (10 点)"
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子◎【評】なにかきっとよくないことをしたのだろう。問われて答えに窮し、ただただ手元のはんぺんを小さく箸で割っている。「白を切る」がふたつの意味があるのもいい。

幽◯【評】ちょっととんち的に過ぎるかなと言う気もしますが、問いかけて白を切るという普通の呼応に、おでんが割り込んだせいで、「白を切る」がはんぺん方向へ歪逸れてしまうという妙な構図が面白かったです。

林◯【評】手料理に込められた無言の問いかけにしらを切りつつ、白滝を歯でかみ切る。ああ染みている。堪能している場合じゃないが、してしまう。あなたはほんとに料理が上手いね。にらまないでよ、もぐもぐ…

炭◯【評】作ってる人の思いを分かっていながら、知らぬ顔して食べる人。食べながらでもいいから何か話した方が良い。そんな食べ方したら絶対消化不良起こす。

噛◯【評】どうやって誤魔化そうと思いながらとりあえず目の前に集中してる振りをしようとまだ味の染みてない具材に箸を伸ばしてみたものの全く味わえてはいないんだろうな。勿体ない!シロとシラかけてるのも上手。

ん◎【評】「白を切る」がうまいなあと思いました。「染みた」じゃなく「染みる」なのも好き。具は大根をイメージしました。食べ終えた後、モメそう…

白◯【評】おでんは「気もそぞろ」でも食べられるし、時間かせぎもできる、いい食べ物だ、って気づきました。

光◯【評】実は問いかけに同様しまくりで、まだ全然味の染みてない白滝をぐいぐい齧ってたりする男の姿が浮かんで笑えた。しかし食事をモチーフに攻められるのは俄然男性だな。

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43 麦酒箸ツナ片付けりおでん噛む    炭余分 (炭)
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44 戦前やおでんの種の浮き沈み    帽子 (帽)
百 (2 点)
"百百,好,朝,碍 (5 点)"
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好◯【評】「戦前」という新興俳句的フレーズに弱いので、ついいただきました。「浮き沈み」が比喩的に読めるのが長所でもあり弱点でもあるかな。

碍◯【評】浮き沈みとは、流行り廃りのことね。おでん種にも、流行がある。ちくわぶがスターだった時も、あったに違いない。戦前のおでんはどんなだったのかしら‥‥、というおでん盛衰史俳句。

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45 おでんこぼしおんなこぼれる夜の手前    ちゅう (ち)
"猪,千 (4 点)"
"猪猪,千千,藤,虎,丼,光,黄,森 (10 点)"
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森◯【評】たしかにおでんはこぼすもので、おんなはこぼれるものだなぁ。どちらも魅力に溢れてるのには違いない。〜さん、ガタッって夜がこれから始まるんじゃないかと期待され、夜のお手前って言葉も浮かんだ。

丼◯【評】おでんをこぼしてしまったのをたしなめることなく体の心配をしてくれるやさしい男がそばにいて、そして夜が迫ってくる。この中七は最強やもしれん。

虎◯【評】このおんなは今、恋人未満の危ういラインにいる男と共にいるんではないか、というところがぐわっと見えてきてものすごく楽しくなりました。「あ」て泣きそうな顔のおんな。「夜の手前」がセクシー。

黄◯【評】おでんはここぼしながら食べる自信があります。箸の持ち方がなってないので…蒟蒻が皿から飛び出して…安い大衆飲み屋なんだろうな。トイレに立つ度隣の人が入れ替わり…上気に満ちた賑やかな安酒場

藤◯【評】おでんと色気。そうそう、そういう組合せもあるんですよね。この「おんな」の後れ毛まで見えちゃうような、BGMの演歌まで聞こえるような、わざとらしいけど気になってしまう句。

光◯【評】おでん鍋をつつき合ったあとに、共有したその液体をこぼしてしまう→かかってしまう。動揺して女の部分が溢れてしまう、なんて妄想するとエロい。液体を共有することはかなりセクシーに感じるので。

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46 スパートは おでんに賭ける 3キロ減    あぶれ (炙)
夕 (1 点)
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夕◯【評】私かと思った。スタートダッシュにも使う。ご飯物食べなくても成り立つしカロリー低く出来るし。

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47 おでん炊く冷えきるまでに好きと言へ    十猪 (猪)
ふ (2 点)
"ふふ,珍,智,百,妹,好,栗,数,二,光,黄,ち (13 点)"
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妹◯【評】「好きと言へ」の強さに押されて「は、はい、そうします」って負けて取っちゃった句。

ふ◎【評】プロポーズの言葉を言わせたい女性の句ととった。女多分不機嫌。なにこの緊迫感。(でもきっとうまくいくのだ)

ち◯【評】うらやましいなぁ。こういうこと自然にできる女の人。男の人はこういう女の人にキュンキュンしちゃうんでしょうね。母性を持ちつつ色気のある女性。私もおでん炊いてみようかな…。あ、鍋ない…。

好◯【評】命令形のかっこよさがとてもいいです。「言え」じゃなくて「言へ」が効果的。

黄◯【評】おでんは「さめる」と読みたかったが「さめる」だとつきすぎなのかな…「ひえる」と読むからおもしろいのか。うーむ。「ひえきる」なので「さめる」なんてもんじゃないんだろうな…うーむ。気になる…

栗◯【評】おでんを食わせるほどの仲なのに、まだ煮え切らない男。でも、女の部屋におでん食いにきたんだもん。タダで帰れるわきゃない。決戦は金曜日、ってこのことだったんだな。言へ、が強情だが可愛い。

光◯【評】大分ふやけただらしない関係の男女。もうこのおでんが冷えるまでに好きと言わなかったらいなくなる私、という最後のおまじないか。かわいいじゃないか。ちょっと怖いところもな。

数◯【評】不器用な男の人の句に感じました。おでんくらい作るから、好きっていって欲しいって可愛い男

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48 おでんかよおかずにならねえ茶飯炊け    疲労飽き (ひ)
"じ,屁,る,芽,夕 (5 点)"
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芽◯【評】おでんだけじゃあ、喰った気にならねぇって感じでしょうか。炊かされる奥さんの困った顔が浮かんで面白いです。お前らは黙って喰っとけって子供には言うんでしょう。

じ◯【評】なんだかこちらまで勢いに押されてしまって取ってしまった句。おでんに恨みでもあったのでしょうか。まぁきっと茶飯炊くまでおでん食いながら待つんでしょうけど。

夕◯【評】白飯のおかずじゃないよね。怒るよね。でも茶飯なんておしゃれですね。

る◯【評】ガテン系のよく食うお父さん。おでんなんておやつみてえなもんだろという認識で固まっている。でもおでんに合うのは茶飯だというこだわりも持っている。威勢の良さが一番。

屁◯【評】なんといっても乱暴な口調が気に入りました。ちなみに、わたしはおでんで白飯食べられる派です。

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49 おでんたち味染み待ってたらもうない    箱 (は)
朧 (1 点)
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朧◯【評】「味染み待ってたらもうない 」がとてもよく、上の擬人化も気にならないくらいです。うきうきと味の染みるのを待つ気持ちは、おでん「たち」と言わせてしまうよ。るるー。

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50 わたしこのおでんみたいなかて黙れ    鯖好き夫 (鯖)
蓬 (2 点)
"蓬蓬,炭,智,林,千 (6 点)"
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林◯【評】なかて? かて? 何か言いかけた…? 正直ぜんぜん意味はわからないのですが、いきなり違う人の声で入ってくる「黙れ」のコワさが気になってしまって。何の修羅場だろう。

炭◯【評】「黙れ」が強すぎ!二物衝突ではなく、一方の打ち消しだ。 「家庭的な、と言おうとした」と見たけど、よっぽど気にくわない人だったのだろう。「おでん占い」の句と対照的。

蓬◎【評】つきあってもないうちから幸せな家庭を妄想しちゃうタイプの女子と氷のツッコミ男子! なんてかわいい二人かと特選。ちょっと真似てみたいさえぎり形。案外これ十年後にいい夫婦になってたりするのよ。

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51 こっそりとおでん占いしてたんよ    白豆 (白)
"じ,炭,屁,波,虎,二,ん,鯖,麗,夕,幹,穂 (12 点)"
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幹◯【評】かっわいいなあ!おでん屋でこんな事こっそり言われたら惚れるしかないじゃない。関西方面のしゃべり方がたまらないじゃない。

穂◯【評】かわいい。そして恐ろしい。男性(でしょう)のだじろぐ姿が目に浮かぶ。う、占いの結果、ど、どうなんだ? この感じならきっとよい結果だろう。事の前後の妄想が膨らみます。

ん◯【評】こんなん言う人、かわいいし、こわいし。すでに両想いっていうか落ちてる感あり。主導権、握られてますよー、と教えてあげたい。

じ◯【評】ポツポツと言う感じが好きですが、これは実際に口に出したのか思っただけなのか。もし言われた際は堂々としていたいものです。

虎◯【評】まずもって関西弁の女子のかわいさが全面に出てて「ズルイ〜」て言いたくなりました笑。おでん占い、彼がどの具から食べるかの順番とかで占うんでしょうか。二人は付き合いはじめの大学生ぽいです。

炭◯【評】「横断歩道の白線だけ踏んでいく」みたいな自分ルール。それをぼそっと言うような感じが好き。でもおでん占いってなんだろう?食べる順番とか?

夕◯【評】関西弁はずるいよ。卑怯。絶対かわいくなるもん。最後まで取ろうか迷った句。でもかわいさに敗北。こんなん言われたら一発で落ちる。

里◯【評】あはは、確かに最初に取ったおでんの具とかで性格出そう!みんなででなく、こっそり一人で洞察して、後日「あの時実は…」ってのも面白い。私も占って欲しい。最初に食べる具は厚揚げです。なんつって。

鯖◯【評】ぼくはおでん占いされたくないですけどね。どーでもいい女だったら死んだ目で「はあ、そうですか」だけど気があったら感心あるふりするかなあ。でも長く関係を続けたいなら早めにそういうのキライだと言っ

麗◯【評】占いという名の、小さな賭けを一人こっそりしてたのかな。好きな人とおでん食べてるのが、まず、いい。その小さな幸せがあれば、恋愛の成就が確定していなくても今はよさそう。(そんなことないか…)

屁◯【評】「してたんよ。」この語尾は広島弁?岐阜弁?いつもは隠している方言をふと出して、親密感を演出する女の子の戦略とわかっていながら、それに落ちたくなります。

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52 玉子だけそういうおでんかそうなのか    小嶋智 (智)
"平,朧,猪,白 (4 点)"
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平◯【評】他のは食べちゃったのかな?作らなかったのかな?玉子だけ、でどーんと画面が浮かび上がるし、セリフで二人の関係や生活が物語になって伝わる。トマトやら高い大根やら入れなくても、まぁいいよね。

白◯【評】いろいろこれから知り合うんですよね。

朧◯【評】あきらめの口調が五七五とマッチしててよいです。でもお父さん騙されてるよ、子供とお母さんは大根とか練り物とか食べてたもん。玉子にいろんなだしが染みてるでしょう?

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53 帰宅して好物のないおでん鍋    yagimeiko (芽)
"珍,白,C (6 点)"
"珍珍,白白,CC,舘,は,珈,虎,鶴,子 (12 点)"
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子◯【評】家族だからこその遠慮の無さがあらわれている。楽しみのはずの夕食が一気にわびしくなる、その瞬間が気持ちいいほどさり気なくていい。

C◎【評】今、おでんはさほど、トキメク食べ物ではないと思うのです。加えて好物がない茶色いおでん。おでんには興奮より軽い落胆が似合う。ベストガッカリ賞

珍◎【評】こういう「笑ってしまうしかないさびしさ」みたいな情景はたまらなくツボで迷わず特選に。悲劇と喜劇は表裏一体であることがよくわかりますね。下五が「おでんかな」だとここまで惹かれなかったかも。

は◯【評】疲れて帰って、でも夕食はできてた…っておでんか。ありがたいんだけど、なんかなぁ、という感じが出ていて好きです。

舘◯【評】家族を養う為にクタクタになるまで働いて帰宅したら茶色のものしか残ってない。この脱力感が見事に表現されていると思います。星一徹ならちゃぶ台ひっくり返してるよ、きっと。

鶴◯【評】おでんってすごく美味しいけど、実はちょっとテンションさがる献立でもある気がします。名前のもったり感のせいかなあ。ましてや、餅巾着や牛すじなど「アイドル」がなくなったあとでは…

白◎【評】おなじ好みのひとと暮らしているんだもん、しかたないこと。鍋の蓋開ける前からわかってたんだ。

珈◯【評】フタあけて5秒ぐらい眺めて、諦めたようにフタをし、しかたなく火をつける、という動作が見える。でもこれは私にとっては漫画な世界で、父が厳しかった我が家ではこうはなりえなかったな。母はえらい。

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54 おでん食べたい君に会いたくなくない    かとちえ (千)
"C,帽,ふ (3 点)"
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ふ◯【評】帰り道で二つを秤にかけてみた。結果おでん買わずに彼女に会いに行った。この子は両方を取るということはしないと思う。「なくない」にやられました。

帽◯【評】スチャダラパーとかそのへんのちょっと古めのJラップ俳句。二重否定がチャーミングだ。おでんと君とを同列にあつかうふりしてホントはおでんなんかどうでもいいのさ!

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55 まるさんかくしかくがやがやおでんかな    はやし (林)
麗 (2 点)
"麗麗,波,く,崖 (5 点)"
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崖◯【評】挑戦的な句で、私は心ひかれました。おでんの描写に新しい発見をしようという意欲と、全部ひらがなにして、句集に入れたときに映えるようにもしてる。野心的です。いいえ、考えすぎではありません

波◯【評】目にして可愛い、音にしてリズムを感じる、平易な言葉で、しかし、おでんそのもので句にしようとしている点は、難しいことにチャレンジしていると思った。個人的にすごく好きで、特選と迷った!

里◎【評】かわいいかわいい!おでんそのものをこんなに正しくズバリと、かつファンシーに言い表しているものは他にあるだろうか。「こども新明解ファンシー版」みたいな辞書があったらぜひ乗せたい。

麗◎【評】おでんの鍋の蓋を開けた時まず目に入る湯気、そのあとに輝くような丸や三角、四角のおでんたち。大人になって久しいが、嬉しい時、自分の中のこどもも、こんな風にひらがな言葉で感嘆している。)

く◯【評】おでんのよさのひとつは、いろんな形があるってところなんだな、と気づかされた。「がやがや」が効いててたのしい。全部ひらがななのもいいな。なんかこどもが歌にしそう。

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56 おでんなんかかくれんぼにもなりゃしない    フジノ (藤)
"る,碍 (2 点)"
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碍◯【評】おでんにはいろんなタネがごちゃごちゃ入っていて、かくれんぼっぽい、というのを俳句にしようと思ったけど、ファンシーになるばかりでうまくできない! かくれんぼ無理! というメタ俳句。

る◯【評】宇宙人だね。(断言)おでん種に紛れて家庭に潜伏しようとしたが、これから煮込んで食われるという運命は予想できなかったのだ・・・。

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57 ひら天に歯型楽しや初おでん    左麗 (麗)
知 (2 点)
"知知,じ,珍,炭,屁,芽,二,夕,酒,子 (11 点)"
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酒◯【評】この「初」は子どもがおでんを初体験した「初」かな? そう(食べ物で遊んぶお行儀の悪いかわいさ)でなくてもたしかにさつま揚げを噛むのは楽しい。おでんを正面から魅力的に詠んだ句の中で一番好きでした。

子◯【評】歯型のついて楽しい食べ物ってある、と気付いた。「初」は子供にとって「人生初」ととった。離乳食の柔らかさでは感じない、歯型がつく位の硬さの物を食べられる喜びみたいなものを感じるから。

珍◯【評】「初」は「シーズン初」と取りました。毎年やってるけどやっぱりいいものだなおでんは、と。「楽しや」はあえて言わなくても、と思いつつも、「ひら天」の魅力にはあらがえず、選。

芽◯【評】初はシーズン初かと。初冬になって「やっぱりこれだな」等と言いながらひら天にかぶりつくのです。

炭◯【評】食べ物で遊んじゃいけないとは教わるものの、シーズン初の食べ物って、いろいろと味わってみたくなるものだ。この句のおでんが一番美味しそうに感じた。

知◎【評】こどもが初めておでんを食べると考えました。子供の頃は歯型がつくのは楽しいけれど、大人になって歯型を見られるのは恥ずかしかったことを思い出しました。歯型に着目したところがいいと思いました。

屁◯【評】ひら天って確かに歯形がつく!と再発見。あれほどきれいに歯形がつく食べ物ってなかなか無いのじゃないかな。ひら天食べたくなりました。