第三回【なんでしょう句会】おでん評 弐

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58 金貸しのおでんちくわぶばかりなり    碍子 (碍)
崖 (2 点)
"崖崖,智,波,凡,藤,朧,舘,爽,森,百 (11 点)"
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崖◎【評】金貸しで決まり。金貸しを着想した時点で、この俳句はもう勝ってます。金貸しが強い分、他を投げやりにしないとならないですが、ばっちり。私から見ると傷はないですが、他の選評も読みたい。

森◯【評】ナニワの金貸し。店主の「毎度っ」の声が掛かるや、カウンターに腰掛けつつの「ちくわぶ」、「わ」にアクセント。景が見えたので選。

智◯【評】金貸しのおでんは、ちくわぶでないといけません。大根とか卵じゃ、なんだかしまらない。

舘◯【評】歯はキンキラキン時計もキンキラキンのくせに、商売にならない相手にはケチなんです。しかし金貸しとおでんを結びつけられるなんて天才だなぁ。最後まで特選と悩みました。

爽◯【評】金貸しとちくわぶがなんでこんなにしっくりくるんだ!しかも「ばっかり」なんだな。ダメ押しです。

波◯【評】ちくわぶを憎からず思っているので、ちくわぶを貧乏やケチの象徴にはしたくないのだが、金貸しがちくわぶばっかりのおでんならば、そこは私は譲らざるを得ないよ、と思った。金貸しが効いている

藤◯【評】金貸しといえば吝嗇ですからね。ひとにすすめるおでんばかりか、自分用のおでんもぜんぶちくわぶなのでしょう。さもありなん。

朧◯【評】ちくわぶって小さい頃から食べつけていない地方の人間からすると意味不明のものであるらしい。ちくわぶばかりの汁はだしがでなそうだな。金貸しには美味しくないおでんが似合う(ごめんね金貸し)。

凡◯【評】「理に落ちる」(金貸し=ケチ=食事も節約=ちくわぶばかり、つまり当たり前のこと言ってる)句だけど、理に落ちることが必ずしも嫌じゃないときもあって、多分それは対象のチャームと関わってる。

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59 おでん屋が密かに橋を踏んで去る    山科 (科)
"噛,爽 (4 点)"
"噛噛,爽爽,幽,平,屁,黒,ひ,林,黄,白,酒,茅,幹 (15 点)"
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酒◯【評】言われてみれば、おでん屋の去り際を見た事がない。作者も実際には見ていないのかもしれないが、たしかにきっと密かに橋を踏んでいるだろうなと思わされた。切れがない(三句切れでもない)のが逆に詩的。

茅◯【評】木の橋のぎし、という音がきこえそう。もうおでんのなくなっちゃったおでん屋が呼び止められないようにそっと帰って行く

幹◯【評】おでん屋さんを入れた句がこれだけだったようで少々意外でした(かく言う私も挫折したのですが)ただ去るのでなく、橋を踏んで、がいい。境界を越えて消えてしまったようだ。

黒◯【評】時代劇に出てくるような木造アーチ型の橋を想像した。悪いことをしている訳ではないのかもしれないが、おでん屋は「ひそかに」何をしているんだろう?と考えずにはいられない。ただの宅配じゃなさそう。

黄◯【評】リアカーを引く。なんて言いますが物積んでると引くなんてものじゃありません。ぐっぐっと足の指に力を込めて地面を踏んで進んでいく様。橋という言葉が屋台の一日の終わり感を盛り上げる。もう夜明けか。

幽◯【評】おでん屋のおでんに対する愛が感じられますね。橋をそっと踏んでやってきて、そっと帰っていく。おでんおでんと大きな声で呼びかけたりしなそう。知る人だけがこっそり行けるんだろうな。いいなあ。

爽◎【評】最初からこれ!とおもいました。それまでの屋台の熱が嘘のように去っていく姿。橋はその日の境にも思えて◎に。

林◯【評】夜明け、店じまいして曳かれていく屋台。ごとごとと小さな橋の羽目板を渡っていく車輪を思い浮かべて、いいなぁと。でももしかして、おでん屋の足が橋を踏んだのかな?

平◯【評】いつも知らないうちに来て、知らないうちに去るおでん屋。そういやあの店いつ閉店してんだろ?と、ふと考えた脳裏に浮かぶ情景でしょうか。おでん屋の足が橋を踏んだら、朝が始まる合図でしょうか。

噛◎【評】現代じゃなくて江戸時代。ちらちらと雪が舞う中、屋敷の前のかがり火でうっすらと影が作られてる屋台を引く後ろ姿。聞こえてくるのは木の橋が軋む音だけ。そんな情景がありありと思い浮かんで◎

ひ◯【評】子供相手の昼の商いを終え、夜の繁華街に向かうリアカー。鳴り物もなく、夕刻、そそくさと消えてゆく姿を思いました。

白◯【評】「密かに」橋を踏めるところで、もう軽くなってるのかな。いろんなひとをあっためて、寒い中帰ってゆく感じ。

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60 くつくつと温泉つかるおでんかな    (夕)
"芽,二,噛 (3 点)"
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噛◯【評】岩に囲まれた露天風呂にのーんびりつかってる姿って、なんかおでんっぽい。気持ちよさが伝わってくる。とにもかくにも温泉に行きたくなりました。

里◯【評】おでんって、煮汁も、具の大きさも、煮えている音のトーンも、他の煮物・鍋物と比べて独特。音の「くつくつ」も、巨大な具を擬人化して「温泉」としたのも良い。

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61 おでん屋で同伴出勤たまご食ふ    ちこ (知)
"雪,栗,ふ,虎,黄,崖,妹 (7 点)"
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崖◯【評】ありましたねー銀座の並木通りの卯波の横。ちょっとオシャレな京風おでん屋さん。「ヘルシーな食べ物好き!」とか言われて。六本木なら麻布の「力」とかかな。いずれにしろ嬢の店は新宿じゃないですね

妹◯【評】気になった。このふたりの、今までとか、これからとか、年齢とか、男性の仕事とか、今どんな顔してたまご食べてるのか、とか。

ふ◯【評】口には出さないがお互い結構真剣に考え始めてる(女は仕事をやめる予感)。たまごエロス。

虎◯【評】同伴出勤、したこともしてもらったこともなくてwあくまで想像なのですが、おでん屋でたまご、てところはかなり「慣れてる」感があって、その余裕や穏やかさが奥行きとして感じられる良い句と思いました。

黄◯【評】しっとりした大人同士の関係なのでしょう。それぞれの立場をわきまえた関係。お店の開店資金出してくれた上客とママなんだろうな。おでんやで好物の卵たべて出勤のきどらなさ。夜の街はじまった!

栗◯【評】銀座の高級おでん屋。チイママあたりと、長年の上客。客はたまごを食うと精がつくと信じてる、戦中派か。昭和の夜の銀座の情景が浮かぶなあ。

雪◯【評】同伴出勤の経験がないんですが、きっと夕方、暮れはじめの寒空を避けておでんやさん。たまごがやさしくていいですね。

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62 おでんだろ君どこからか嗅ぎつけて    まへ (屁)
酒 (2 点)
"酒酒,C,朧,珈,地,二,く,鯖 (9 点)"
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崖◯【評】ありましたねー銀座の並木通りの卯波の横。ちょっとオシャレな京風おでん屋さん。「ヘルシーな食べ物好き!」とか言われて。六本木なら麻布の「力」とかかな。いずれにしろ嬢の店は新宿じゃないですね

妹◯【評】気になった。このふたりの、今までとか、これからとか、年齢とか、男性の仕事とか、今どんな顔してたまご食べてるのか、とか。

ふ◯【評】口には出さないがお互い結構真剣に考え始めてる(女は仕事をやめる予感)。たまごエロス。

虎◯【評】同伴出勤、したこともしてもらったこともなくてwあくまで想像なのですが、おでん屋でたまご、てところはかなり「慣れてる」感があって、その余裕や穏やかさが奥行きとして感じられる良い句と思いました。

黄◯【評】しっとりした大人同士の関係なのでしょう。それぞれの立場をわきまえた関係。お店の開店資金出してくれた上客とママなんだろうな。おでんやで好物の卵たべて出勤のきどらなさ。夜の街はじまった!

栗◯【評】銀座の高級おでん屋。チイママあたりと、長年の上客。客はたまごを食うと精がつくと信じてる、戦中派か。昭和の夜の銀座の情景が浮かぶなあ。

雪◯【評】同伴出勤の経験がないんですが、きっと夕方、暮れはじめの寒空を避けておでんやさん。たまごがやさしくていいですね。

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63 深海に潜むものなりおでん鍋    レゴ黒木 (黒)
"友,科,丼,千,茅 (5 点)"
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酒◎【評】57に「おでんの魅力を正面から云々」と書きましたが、これもそうでしたね。もうこの句だけで、おでん美味そうだもん。具体を詠んでないのに美味そうと感じさせる上手さ。訪問者の気安さもいい。

地◯【評】片手に酒瓶抱えてるな。ドア、バーン!「おでんかぁっ!」ちょっとかっこいいです。

朧◯【評】おでんの匂いでやってくるほどのご近所なのでなく、(今の時代なら)twitterで見てたのかも知れないな。でも近所で本当に匂いを嗅ぎつけたのであってほしいな。

C◯【評】遠くから嗅ぎつける事もカレーならわかる。でも、おでんだから味がある句なのかも。いい意味で昭和な雰囲気

鯖◯【評】こういう漫画などのメディアではみるタイプのキャラってあるあるに入るのかな。そういうキャラクターがおでん句群のなかからヌッと顔を出してチャーミングでした。

く◯【評】にやにやしてしまった。おでんはやっぱり気のおけない仲間や家族と一緒にわいわい食べたいなあ。作ってる途中からもう「あいつきっと来るよ」とか言ってそう。

珈◯【評】「近く通ったから」と突然来た(呼んでいない)知り合いが靴脱ぎながらにやりと言う感じ。この図々しさが許される感じと1人増えたぐらい問題なさそうさに、磯野家とノリスケおじさんの関係を思う。

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64 円卓のぐるりおでんを要とす    兄妹 (妹)
"黒,は,数,蓬,丼,千 (6 点)"
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丼◯【評】卓袱台を囲み中心におでんの鍋が鎮座して、いい食卓の風景である。暖かさに惹かれてついいただきました。

黒◯【評】これも大人数でおでんを囲んでいるところ。おでんを「要」としたところになるほど!と思った。列席者のおでんに対する期待度の高さを伺わせる。

蓬◯【評】円卓で中華料理が要だと香港フィルムノワールになりそうだが、いかんせんおでん。どうがんばってもシリアスにできない要を囲む面々に好感を持った。

数◯【評】結構人数集まってるのに、きっと主役はおでん。みんなおでんに目がない集団

は◯【評】今時にしては多い兄弟と、裸電球が見えた。おでんのせいだけではない暖かさを感じる。

千◯【評】寄せ鍋やすき焼きとは、また違ったあたたかさや光景がありそう。なんてことない内容だけれど、テーマに似合っている何気なさで、好感。