【それなん句会 予行編】投句一覧

1  おそるべき君等の乳房夏来る
2  反論のありて手袋はづしけり
3  広島や卵食ふとき口ひらく
4  城亡び松美しく色かへず
5  虹立ちて忽ち君の在る如し
6  あるほどの菊投げ入れよ棺の中
7  笑はぬ子麦茶を少し飲みにけり
8 「資生堂パーラーにゐます」春の月
9  ぬくぬくの卵酒って生意気だ
10 鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる
11 やせ蛙負けるな一茶これにあり
12 蚤虱馬の尿(ばり)する枕もと
13 枝豆の食ひ腹切らばこぼれ出む
14 いくたびか半分に切るメロンかな
15 片つ方の耳にないしよ話しに来る
16 むざんやなわが全開のかきつばた
17 まだもののかたちに雪の積もりをり
18 日盛りに蝶の触れ合ふ音すなり
19 ポンプポンプ音符ポンプの四重奏
20 どうしても動かぬ牛が小便した
21 生きかはり死にかはりして打つ田かな
22 隅占めてうどんの箸を割り損ず
23 夏の河赤き鉄鎖のはし浸る
24 酒少し徳利の底に夜寒哉
25 をりとりてはらりとおもきすすきかな
26 階段を濡らして昼が来てゐたり
27 月に行く漱石妻を忘れたり
28 トランプのダイヤに似たる夏心
29 雀のあたたかさを握るはなしてやる
30 色々の人々のうちにきえてゆくわたくし
31 冬蜂の死にどころなく歩きけり
32 松島やああ松島や松島や
33 寒燈やおがくずに海老ゐて静か
34 七夕や髪ぬれしまま人に逢ふ
35 さっきからずっと三時だ
36 こころ白くなるまで抱かれ桃の花
37 白南風やイラブー燻製こちんこちん
38 雨上がり土手のうんこのやわらかさ
39 こほろぎよあすの米だけはある
40 さびしさを入れたる舌やかき氷
41 手に指があってビールのコップに取っ手
42 手袋は手のかたちゆゑ置き忘る
43 柚子腐るあらかた腐って棚にある
44 この鍵で錠ひとつあく星の秋