第四回【なんでしょう句会】蒲団評 弐

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33 日暮れまでふとんリプトン文庫本    けば名人 (ふ)
 ひ,廣,和,好,凡,ん,る (7 点) 珍,夕,森,白 (-4 点) 3点
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森x【33評】中盤からの畳み掛けは単なるダジャレでもなくて悪くない、だからこそ「リプトン」に引っかかった。ふとんに篭もりっぱなし、をよんだのであれば、お湯を沸かすために立ち上がる可能性を感じさせては勿体ない。

廣○【33評】リズムがよかつたんだけどなあ。下五も「とん」がつくとなほよかつたか、と。

好○【33評】ふとんに入って紅茶のんで文庫本を読んでるの? ちょっと状況的に苦しいけど「ふとんリプトン文庫本」の楽しさに負けました。

珍x【33評】前回は「今晩分電盤本番」があったし、「またか」と(選句用紙だと同じ位置)。ライミング以上のおもしろさがあるように思えず、取れませんでした。ごめんなさい。

白x【33評】なんだかこういうリズム遊びを前にも見たなあ、っていうのもあったのですが、なんで、「ふとん」がひらがななんだろうって釈然とせず。

凡○【33評】案外、語感の面白さだけじゃなくて、案外「あるある」だ。布団には別に入ってないけど敷きっぱなしで「居場所」なんだろう。

ひ○【33評】いい調子のリズム感。休日の午後、ここで過ごすんだって心意気の様なものが伝わってくる。ダラダラしてるんじゃない、確信犯なんだ。

ん○【33評】なんか楽しそうな休日。リプトンが気に入りました。ティーバッグの紅茶、うっかりこぼしてふとんに染みつくってそう。でも気にしてなさそう。

剣選外【33評】多数ある「布団」=「気持ちよくて外に出たくない」という句は、その連想が当たり前すぎるように思えて今回取れなかったのですが、そういうものの中では韻が小気味よくて一番好きです。

鯖選外【33評】「牛丼・親子丼・西郷どーん村上ショージ)」をどうしても連想しますね。ぼくは。ショージさんが参加してたら採りますが。

る○【33評】言葉選びに語呂以上のものがある気がする。陽性の静かさとかなにか。リプトンがふとんの中では飲めないという意見もあるが、リプトンなしでは当たり前すぎる句になってしまう。

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34 島さびし蒲団冷たく重い冬    雪 (雪)
 白,C,知 (3 点) 好,科 (-2 点) 1点
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好x【34評】形容詞3つ!しかもどれもネガティブ!ここまで来るとあっぱれな気もしますが、べたべたすぎますなあいくらなんでも。

白○【34評】好爺さんの評を読み、そうだよね。べたべただよね、って思いましたが、蒲団の中途半端(と思えるよう)な重さの句がたくさんある中、これはいちばん重い蒲団だ、っていうところに美点を感じました。

C○【34評】佐渡島の句と比べてこちらを。日本海側の湿度の高い冬を想起して、これは佐渡島だなと。こちらの方が佐渡島を感じました

科x【34評】「冷たく重い冬」で、同じような言葉が重なり過ぎている。この9音を使って、「島さびし」につながる言葉をもっと色々言えたんじゃないか。

知○【34評】島流しをイメージしました。島と冷たい蒲団と冬。寒そうです。

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35 濡れ和紙や布団の上下止まり闇    甘噛 (噛)
 鯖,地,林,藤,飼 (5 点) 数 (-1 点) 4点
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鯖○【35評】怖い! なんでしょう句会初のホラー句。初は偉いと思います。

藤○【35評】間引きの句。木枯し紋次郎ファンとしては反射的にとらざるを得なかった(紋次郎は濡れ和紙じゃなくて蒟蒻で間引きされかけたのだがな)。

数x【35評】私の知識のなさなのか…意味が分からなかっただけです。どういう状況か読みきれなくて戸惑ってしまいました。

地○【35評】これは怖いよ。どこにも「死」とか「殺す」とか書いてないけど確実に誰か死んでる。でもきれいなので○。

林○【35評】間引きかな…。客観描写が怖さを醸してる。最後の「闇」が効いています。

平選外【35評】間引きだとわかってれば取りました!!これいい超怖いたんたんとしててそこがまたいい!!視点がどこにあるのかわからないのもいい!ググレ俺。

飼○【35評】最初は牢での間引きを想像したんだけど布団は支給されてないよな。となると家人による殺し!?きゃー。久しぶりに時代小説を読みたいと思わせてくれたので。

丼選外【35評】時代劇で見た記憶が。直接的な怖さのある句で、これも迷いました。

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36 ひとり旅出来ざるものに蒲団蒸し    好餌 (好)
 茅,朝 (2 点)
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茅○【36評】旅してえな、とかいつも言ってるのでしょう。自分で自分のうっとうしさをわかっている。うつうつ青春映画みたいでいいなと思いました。

朝○【36評】集団での旅、への憧憬。システムに組み込まれていたとはいえ、それのもたらすすばらしさ。大人になり、采配の自由は増えるけど、不自由の裏返しであるなにかを失う

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37 爆音をたてて去りゆく蒲団かな    幽樂坊 (幽)
 藤 (2 点) 鯖,猪,ん,酒,妹,好,ぽ,蓬,科,朧,ち,炭,C,幹,千 (15 点) 剣 (-1 点) 16点
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藤◎【37評】爆音と布団の意外な組合せがすばらしい。まっとうに考えて布団は引越トラックに積まれて運ばれて行くのだろうとは思うが、布団が単体ではためきながら猛スピードで去っていく光景を思うと、より美しい。

酒○【37評】今回の「あらがえませんでした」句。ふとんがふっとんだんでしょう。

妹○【37評】布団が吹っ飛んだ、って、もうちょっと穏やかな景色なのかと思ってたけど「吹っ飛んだ」だもんな!そら、ふわっとは行かずに、爆音が正解だよな!と納得。布団がどこまでも飛んで行く様を眺めたくなりました。

鯖○【37評】「ふっとんだ」かあ。なるほど。でも違うかも。布団被ってバリバリ疾走するバイクと解する方が好き。わけわかんない句に重要なのは「一定以上のチャーミングさ」と「構文のわかりやすさ」だと思うな。

好○【37評】引っ越しの風景かな? あるいはバイクで配達のふとん屋さんか。昔住んでた家の近所にバイクで配達するふとん屋さんがあって、ひそかに「ふとんライダー」と命名してたことを思い出した。

ぽ○【37評】瞬間的に、「父」が思い浮かびました。そう、朝まだ私が布団でゴロゴロしていると、隣でむくりと起きた父は必ず「爆音をたてて」布団を去っていきました。信じられない!けれど、句になるとなんとも爽快。

剣x【37評】告白しますと、「布団がふっとんだ」を思いつかず、「アニメか何かが元ネタ?わかんね」とバツしていました。自らの言語感覚の鈍さを露呈。人が逆選をするとき句もまた人を逆選している。恐ろしいことです。

科○【37評】今回、「蒲団」という言葉のイメージから最もかけはなれている発想の句だった。軽トラの荷台に積まれてたのかなと思ったが、皆さんの「ふっとんだ評」を読んでそれも良いなあと。

朧○【37評】蒲団を処分しようと何でも屋を呼んだが来たのはぽんこつのミニバン。音もだが排ガスも真っ黒。「二語衝突」という言葉を針ふっ切ってやったわりにやけくそに見えないところがいいな。

ち○【37評】まったく意味がわからない。この句には理屈をつけたくなかった。意味がわからないまま味わうのって身体的な快感だと思った。ただのメチャメチャじゃこの快感は来ない。解釈は拒むけど快感は与えてやるぜ句。

凡選外【37評】特選にした「面談」句もだが、「それはなんでしょう」の結果みたいな句が布団は多かった。無理を解釈する能力が皆異様に強いのではないか。即物的な解釈も含めて皆あっぱれだなあ。

炭○【37評】最初何もひっかからなかったのが、読んでくうちに「蒲団単体」でエキゾースト音を立てながら走り去る景が見えた。モンティパイソンのアニメみたいなの。理由は深く考えない。

C○【37評】母親か奥さんかわかりませんが、蒲団を追い出されて片付けられている様ととりました。安住の地を返して欲しい

幹○【37評】長年親しんだ蒲団が、ボロボロの愛用蒲団が、粗大ゴミ回収のトラックに乗って去っていった。自分の汗と脂にまみれた分身のような蒲団が去っていくのはぽっかりとさみしい。

廣選外【37評】面白さうな句なんだけど、なんか雰囲気で「わかつた!」といふ自信がない。

ふ選外【37評】経験上5階からふっとんでも爆音はしないので、砲弾で吹っ飛ばされるとかそういう事かなあとイメージしたところ、私にはどうしても「散る」になっちゃったので選外に。でも「去る」だったらとても美しいなあ。

千○【37評】ふっとんだ、は思いついていなかった。廃品回収的な場面を思い浮かべつつの選。寂しさを突き抜けて、むしろさわやかさまである。

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38 夕や潰す吾の脱け殻の掛蒲団    あら丼 (丼)
 寝 (2 点) 穂 (1 点) 3点
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穂○【38評】「潰す」や字面のガチャガチャした感じに、起きたら夕方だったときの「ああ…」という気持ちが出てる。風圧で舞った埃が西日で光るのを見ながら、頭ん中は寝過ぎでガチャガチャしてますね。

寝◎【38評】「夕」と「蒲団」が一緒になると、不甲斐なさとか罪悪感とか、そういうものが寄ってくるような気がします。ずる休みしたんじゃないかな。(きっと重い綿布団ですね。潰し甲斐がありそう。)

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39 太陽の匂ひ少なき布団かな    崖元 (崖)
 少,百,友 (3 点)
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百○【39評】「太陽の匂ひ」まできて、はいはい太陽のね…と思ったら「少な」いんかい! でもだいたいそう! 匂いするときのほうがレアで、レアばかり詠みがちだからハッとさせられた。

少○【39評】期待して潜り込んだら、意外にひんやりでがっかり。あえて、その「がっかり」を描いてて○。

友○【39評】冬の布団を真正面から俳句にしたところに好感を持ちました。

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40 由紀さおり流るる昼餉蒲団敷く    舘ざんす (舘)
 子,炭 (4 点) 友,C,和,幹,に (5 点) 9点
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子◎【40評】なんだろう、このゆったり感。昼に、わざわざ蒲団を敷いて寝ようとする感じ。由紀さおりが妙にしっくりくるのが不思議。私の中で、蒲団=寝ると考えると、この句が一番眠気を誘ったので◎です。

C○【40評】これ作った人はエスパー魔美に違いない!(選評になっていない!!)流るるの『ルル』から自然に夜明けのスキャットへ入れて便利!!!

幹○【40評】昼の蒲団が味わい深い。由紀さおりというチョイスが作中主体の投げやり感を助長。たぶん一日中NHK

炭◎【40評】「るる」で徹子の部屋OPが浮かんで、凄いと思い特選にしたのですが、歌ってるのは由紀さおりでは無いそうで。「くう(昼餉)ねる(蒲団敷く)あそぶ(るる)」がそろってて、優雅(怠惰?)な句。

友○【40評】いま話題の歌しか知りませんが、いい昼だなあと。テレフォンショッキングのことは、あってもなくても選んでいた(はず)。

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41 真ん中に蒲団敷かれて寄る辺なし    レゴ黒木 (黒)
 黄 (2 点) 波,凡,炭 (3 点) 5点
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波○【41評】夜の褥と理解しました。真ん中にどーんと布団しかれて、さあ、いざ!と言われても、困っちゃうよなあ。いや、別にやる気が無いわけじゃないんだけど、ちょっと怯むよね、と。

凡○【41評】理があるけど、実感も伝わる。こういってるけど、面積でいえばむしろ広めの部屋なんだろう。

黄◎【41評】まず「寄る辺」がなんともグッとくる言葉ですね!6畳くらいの部屋に家具があって何人かで寝ている人が旅館などでに行って“デーン”と布団ひいてあるとどうしていいか…実際。この句分かります。イイ!

炭○【41評】「真ん中に蒲団」敷かれる景なんて、旅行か親戚のうちに泊まった時しか見たことがない。もう他の行動が許されてないようで、寝ることしかできないよ。

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42 蒲団より矢放つタクラマカンまで    よもぎ (蓬)
 朧 (2 点) 茅,ふ,林,に (4 点) る (-1 点) 5点
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ふ○【42評】天井の低いこの部屋から、馬で駆け抜ける広大な砂漠へ、私も矢になって飛んでいった。浮かぶ映像の爽快さにやられました。ふかふかのあったかい蒲団で寝ているんだろうなあ。(私も今度から真似しよう)

林○【42評】インドアのきわみから砂漠までの大法螺な飛距離と、タクラマカンの語感が楽しいです。

朧◎【42評】ネットゲーム中のニート。タクラ、マカンと切れるのは本当は「タクラ=マカン」て書くんじゃないのかと思わせるほどのはまり方でした。これから「タクラ=マカン」と言ってしまいそう。

茅○【42評】佐々木マキさんの漫画の絵で思いました。本当にただ布団の中から矢を放つかんじ。で、びゅんと届いちゃうかんじ。想像ってきもちいい。

るx【42評】とても好き。逆選だけど。でも「矢放つ」の部分の言い方をあと一歩突き詰めないと雰囲気だけになってしまう気がする。

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43 春立ちて佐藤ふとん屋跡地かな    廣島屋 (廣)
 夕,屁,和,妹,蓬,友 (12 点) 朧,鯖,穂,地,ぽ,鶴,珈,林,舘,雪 (10 点) 22点
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和◎【43評】跡地、というのが一抹の寂しさを、他が晴れ晴れとした雰囲気をかもしだしていて気持ちのよい句だなとおもいました。佐藤ふとん屋っていう名前が昭和でいい。いかにも跡地になりそう。

鯖○【43評】佐藤ふとん屋跡地はいいな。「佐藤」「ふとん屋」「跡地」と真ん中にT音を持つ単語が連続するのが口に嬉しいからかな。

妹◎【43評】すごくいいな。更地になると、前に何が建ってたか思い出せないことのほうが多いのに、ちゃんと「佐藤ふとん屋跡地」として存在してる。ここは、そういうお店だったんだな。寂しいけど、心地よい寂しさ。

穂○【43評】なんだか卒業式のような気分になりました。固有名詞と「跡地」で寂しさを、春の季語とひらがなの「ふとん」で新鮮さやあたたかさを。ないまぜの気持ちを表現していてよいなあと。

地○【43評】「佐藤ふとん屋」は地域に根付いていたのだろう。両親や祖父母もお世話になってるくらい。それくらいにいいふとん屋。さびしいけど、さわやかな句。

ぽ○【43評】最初選んでいなかった句。けれど後から気になった、「佐藤ふとん屋」。もしかしたら、とうほくの地をを読んだ句なのかもしれないと思うと、選ばずにはいられませんでした。

鶴○【43評】子どものころ身近にあったお店は、今はほとんど残ってない。利用したことはなくても、なくなるとやっぱりさみしい。「ふとん店」ではという指摘があったけど、家庭では「佐藤のふとん屋」って呼んでいたのでは。

蓬◎【43評】凡先生の「ふとん屋じゃなくてふとん店」という呟きに理を認めつつ、これは話者の心の呼び名だからふとん屋でいいのだと主張します。肌寒い跡地に重なって見える、あるのが当たり前だった店構え。

珈○【43評】地元のふとん屋がここ3年ぐらいずっと閉店セールをしていたのに先日見たら本当に閉店日を掲示していたので驚いた。 それはともかく、ふとん屋(冬)の跡地に春というのが素敵。春ならさびしさも清々しい。

林○【43評】無いものの存在感を示しつつ、時の流れを感じさせ、うまいなぁと。佐藤という名、「ふとん」のひらがな、季語、どれもいい。空き地に陽があたり、やがて少しずつホトケノザなど生えてくる風景を想像した。

朧○【43評】散歩以上でも以下でもない、という感じが好きです。「ふとん店」でないのは自分も気になりますがそれを差し引いても好きですよ。

凡選外【43評】客が「屋」と呼ぶという読みには与しないな。「跡地」ならなおのこと屋号を言ってあげて。「俳句にするための」一字減らしだろう。「そういう風に」句作するの、危うい気がするの。続きは今夜。

舘○【43評】ずっと前から閉店セールをやっててでも全く閉店する雰囲気ではないふとん屋。でも久しぶりに実家に帰ったら更地になってる。春という別れの季節とも合ってるし、何より佐藤がいい!

酒選外【43評】迷って選外。「屋」は話題に上るまでそんなに気にしていませんでしたが、「題を固有名詞化してずしんと置く」ことがこの句での大きな企みなのだから、であれば固有名詞の在り様には繊細であってよかったかと。

酒選外【43評】選外としたのは、「ふとん(冬)屋」の「跡地」に「春」が「立つ(建つ)」というのが、僕にはtoo muchに感じたのでした。もっと無季な店(笑)の跡地の方がいい。これは好みだと思いますが。

友◎【43評】too muchと思った人はすくなからずいるかもしれないとは思いつつ、春の訪れをこうやって句にできるのは確かな技術と思いました。「ふとん店」が正確ということには全く気づきませんでした。

雪○【43評】晴々とさびしい印象が好きです。立春にとてもよく似合う景。確かに屋号で呼ぶなら「佐藤ふとん店」ですねきっと。でも「屋」のぶっきらぼうな感じもいいなぁ。「角のふとん屋」とかだと良さが殺されちゃうかな?

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44 死ねっ死ねしねしねしねと蒲団打つ    二羽剣 (剣)
 百,丼,廣,好,ち,噛 (6 点) 崖,子,黄,舘,知,麻 (-6 点) 0点
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崖x【44評】(見事に割れてるしw こういう句があるといいなあ。「死ね俳句」ジャンルにおいて評価の分かれる注目句だけど中七の死をひらいたのが気になった。意図はあったと思うが、ちょい不明。惜しい!)

廣○【44評】「引越し!」おばさんを思ひ出した。上五あへて字余りで「死ね死ね死ね」とかでも面白かつたと思ひます。

好○【44評】あはは、このたたみかけはインパクトあるなあ。「坪ちゃんの死ね死ねダンス」というものを思い出しました(意味不明)。

丼○【44評】漢字にすると一発の重い打撃、ひらくと軽いが連射が効く打撃。字で表現されて音読するときもそうなってしまう。日本語って面白いですね。

百○【44評】「しねしねしね」は、音だけがしょうがなく残った純粋な(怒りの)思いの表現だと思う。最初の「っ」も、音数あわせに思わせない上手な使い方だったと思う。

ち○【44評】最初の「死ねっ死ね」は漢字遣い、かつ促音のせいで、実感がこもっている大きな二つ叩き。「しねしねしね」は平仮名遣いで、死ねの意味もよくわからなくなって単なる反復運動となった連続叩き。うまいなぁ。

子x【44評】繰り返している割に、「死ね」から「しね」にトーンダウンしていたり、蒲団を「打つ」程度で済んでいるのがちぐはぐな感じがして逆選です。

凡選外【44評】句会で通っぽくみえる言葉シリーズに「取り逃しました」があるが、これでそれを言えるなんて、いい句会だ。正逆両方に取りのがした変な気持ち。

黄x【44評】これは五七五の定型にこだわる必要は無かったのでは。もっと思い切りできたはず。「引越!引越!さっさと引越!しばくぞ! 騒音おばさん」(←これ律はいいんですよね。余りの追い込みも迫力あって…)

舘x【44評】あーこれ夫の蒲団でやってた。わかるわかる、しかしわたしには喧嘩句に取れてしまった。今回喧嘩しばりが無かったら間違いなく選句してました。ごめんなさい。

噛○【44評】主婦が家族のことを思って幸せな気持ちで家事をしてると思ったら大間違いだっ!ひっくり返ったままの靴下にも殺意を感じるタイプなので、寒い中のにベランダに出て蒲団干してたらこうも思いたくなるよと◯

知x【44評】怖い顔で蒲団を思いっきり叩いているところが目に浮かびます。どなたかも言っていましたが、喧嘩しばりかなこれはと思いました。死ねが続いているところも単純に怖い。ごめんなさい。

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45 西向きの部屋は慌てて布団干す    トモサダ (友)
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46 卵恋背嘘布団で育てたもの    かとちえ (千)
 栗,光 (4 点) 科 (1 点) C,少,飼,和,ぽ,黒,珈,幽,友,雪 (-10 点) -5点
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少x【46評】ううん…、内容に納得はできるものの、前半の漢字がうるさく感じられてしまった。五感は良いなって思います。

ぽx【46評】最初意味がわからなくてスルーしていたが、何だろうと思っているうちにハッと気づいた。そして感動した。卵に恋に背(丈)に嘘まで。うまいなぁと思った。でももう少しうまい読ませ方があったのではと。どなたか!

珈x【46評】頭の四字の読み方がわからず(訓読みだと不要に字あまり、音読みだと意味不明)。あとなぜかヤンキーのあて字っぽく感じられてウッとなる。 他の方の解釈で句の意味がわかり「いい内容なのになあ」と思いました。

栗◎【46評】蒲団の中で、何かを隠し育てている点は2の句も同じだが、こちらには育てた人間の成長がある。布団でひよこを育てた子供が、恋をして、背が伸び、嘘も上手になる。歴史は夜作られる、を見事に活写しているので特選

黒x【46評】最初、意味を取れずに引っかかってしまった。何度か読んで意味は分かったが「育てたもの」を羅列することに面白さを感じられなかった。布団を胎内に見立てる発想は好き。

Cx【46評】色々な物が詰め込まれすぎに感じました。そこが良さなのかもしれませんが、私の好みで

光◎【46評】蒲団一枚の中に人の歴史があんのよ、ということをまるで少女漫画のような可愛らしさで言っていていいなあと。どうしても無視できない魅力を感じた。

飼×【46評】最初意味が取れなかった。「卵恋背嘘」の部分が独りよがりな感じ。でも布団で何かを育てるというイメージはよくわかる。

幽x【46評】他は良いけど、「背」を他動詞で「育てる」とはあまり言わないなと思ってそこが引っかかりました。テンポが乱れたかんじ。

友x【46評】既に言われていますが背は「育つ」ものだなというのと、4語がいろんな方向を向いていてどう受け取ったらいいか悩ましいのと、リズム勝負の句なのに下6で、上手いこと言った感が損なわれていると思いました。

雪x【46評】順序で言うなら卵 -> 背 -> 恋 じゃないかと思って、というのは後付けで、前半の詰まってるリズムに乗れなくて逆選でした。あと、どれも布団で育てた覚えがなかったです。ここは個人の共感の有無ですね。

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47 干蒲団乱れ打ちする団地かな    十猪 (猪)
 波,少,子,麻 (4 点)
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波○【47評】蒲団を叩き始めると興がのって、どんどん叩いちゃう。良い天気は全ての人に平等ゆえに、団地中がいっせいに蒲団干しているんでしょう。ぱんぱん響く音が聞こえます。

少○【47評】けっして一か所の事ではないですね。そこかしこから聞こえてくる。競ってるみたいだ。

子○【47評】干した蒲団は、日が陰る前、だいたい同じような時間に取り込むもの。埃を払うために蒲団を叩く音が連なる団地の棟に響く感じがよくわかる。「乱れ打ち」が同時多発的でいい。

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48 曙の布団干すなり冬日和    るいべえ (る)
 森 (2 点) 林 (1 点) 朧 (-1 点) 2点
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森◎【48評】「曙の布団」に思いを馳せさせてくれた時点で選(ベッドについての言及は朧気ながら記憶にあり)「曙が〜らしいよ」という伝聞なのか古文の解釈が心許ないが、とにかく一番グッときた布団(203cm超)作者に感謝。

林○【48評】何度か読むうちに、良い気がしてきました。確かに大きくて干し応えがありそう。曙が動くような、動かないような、といろんな力士が頭をかけめぐっておなかいっぱいになりました。もう曙でいいと思います。

朧x【48評】曙?高見山でなく?と思ったら最後、「にばい、にばい」でなんで一句作らなかったの?という悔しい思いに捕われました。

酒選外【48評】この季重なりはとても気になる。蒲団を干すのは陽気の下に決まっているのだから、季を重ねてまで冬日和を入れる必要を僕は感じません。曙は曙太郎のことと思うけど、言語的にはこれも「朝」で、コンフリクトしてる。

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49 蒲団潜つて夜々自尊心かき集む    兄妹 (妹)
 芽,ぽ (4 点) 丼 (1 点) に (-1 点) 4点
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丼○【49評】自分に自信がない頃の気持ち、よくわかります。薄っぺらいプライド塗りこめてやっと自分を支えている感じ。何の解決にもならないってわかっているのかいないのか。まずは蒲団から出ましょうか。

芽◎【49評】一日の終わりにヘラヘラせずにいられなかった人間関係を思い、ぐっと奥歯を噛み締める感じ。こういう時には一人泣いちゃっても良いような気がします。

ぽ◎【49評】あ〜暗い。暗いよ、あんた。と自戒を込めて特選。圧倒的な陰鬱さに完敗。でも、蒲団ってそういう場所だよね。誰も肯定しちゃくれないんだ。でも蒲団はあったかいんだ。それでいいんだ。

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50 (無効)空蒲団妻の匂いが残りをり    ジョシュー (助)
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51 ベル遠しふとんおばけも許したり    麻衣子 (麻)
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52 水槽の光の透ける布団かな    ちゅう (ち)
 猪,じ (4 点) 光,鶴,凡 (3 点) 波 (-1 点) 6点
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波x【52評】これは、なんだか良さそうなのに、意味が分からず、残念で逆選。二つ目の「の」は主格の「の」でしょうから、水槽の光が透けている状態の布団って意味が分からなくなっちゃう。残念だよー。良さそうなのに!!

鶴○【52評】昔熱帯魚を飼っていました。部屋を暗くしても、水槽の照明だけはずっとつけたままで、寝るにはまぶしい。布団を引きあげるけど、ぼんやり透ける。その少しせつないような記憶を呼び覚まされて、ドキっとしました。

凡○【52評】この日本語だと意味が通りにくいと思うけど、言わんとする感じは汲めた(と思う)。水槽と布団と光で、まだいけそう。

光○【52評】「透ける」に引っかかったが、敷きっぱなしの蒲団に水槽の光が落ちている景色が浮かんでしまって、その良さで取った。もう少しいじくったらすごい句になりそう。

じ◎【52評】気になると寝れないシリーズ。「の」が続くとこが気になったけど気になると寝れないシリーズだしいっかと思って特選。

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53 我を只綿の布団と思へ君    鶴谷 (鶴)
 噛,地,剣,に,麻 (10 点) 黒,妹,ひ,子,波,藤,酒,数,ん,光,飼,千 (12 点) 22点
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藤○【53評】エロ句ですね。我の下心に激しく共感しつつ、君が望むのなら本当にただの綿の布団でいつづける覚悟も感じられて好感を持った。また、羽根布団ではなく綿というところも、人体の湿気と重さを暗示していて良し。

酒○【53評】「それを俳句にすることが新しい」のと「それは俳句で言わなくていいだろ」の境界はどこにあるんだろうとか、考えさせられつつ選。このバカ句は、愛らしいバカ・良いバカだと思った。無責任だが何故かは説明できない。

妹○【53評】このひとは、きれいでやさしい口調でそう言うけど、「俺は単なる綿の布団だよ〜安心だよ〜(げへへ〜)」と思っているのが、むしろ丸見えだから、言わないほうがいいよ。

噛◎【53評】しょうがなく泊まらせることになった相手に「ソファで寝てよ。」って言った後にこんな風に言われたら、何冷静に阿呆なこと言ってるのって笑って頷かざるをえない。って言うか言われたい!こういう人好きだなぁ。

波○【53評】人ってなかなかに重いから寄り添えば眠れるかと言うと、実は眠れないもんだ。そういうことを言う奴はまあどこででも眠れるんでしょうけどね。という厚かましさが溢れている句である。

地◎【53評】すごくいいですね。「まぁまぁ」とか言うんでしょう、この後。結局何もなく(何もできず)寝ると思う。バカだけど、憎めない。

剣◎【53評】羽毛布団とかではなく綿であるところが謙虚で好きです。「何もしないから。お前をただ温めたいだけ」とか口では言いながら股間はきっとギンギンですよ。こういう男の強がりを可愛いと女性には思ってもらいたいですね。

ひ○【53評】一組の布団に二人…非体育会な男の子二人を想像してしまった…。

黒○【53評】こんなこと真顔で言われたら失笑する(キモーイ)。表記が古めかしいのも、女慣れしていない不器用な様を連想させてくれる。しかしまあ、こんな風に真剣に滑稽な景はとても好きなので○。

子○【53評】瞬間的に「重っ!」と思いましたが、謙虚でかわいい気もしてとりました。堅い言い方が効いてるのか。

光○【53評】素直に応じられないタイミングのずれをこういう風に誤摩化すのか。臆面もないな君。掛蒲団か敷蒲団かでも色々違ってこない?ねえねえ?といじりたくなる。

飼○【53評】愛嬌があってそれでいて間抜けなところがいい。求めてくる男に対して女が「あたしはただの布団だからやめて」と拒否する句にも取れる。面白い。

廣選外【53評】「我」と「君」に挟まれた十三文字は何か重いといふか、何か暑苦しかつたのです。

千○【53評】ひたすらに文句を言ってくれて構わない、的な意味かと思いました。サンドバッグに近いというか。言われたくはないけれど、心情としてはありえそう。

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54 布団かぶってもはねのけても無明    はやし (林)
 C,幽,科,ふ,芽,穂,虎,る,屁 (9 点) 9点
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ふ○【54評】暗闇も慣れれば何かがぼんやり見えてくるから、と言ってあげたい。

芽○【54評】とてもあがいている感じがこちらにも痛いように伝わって来ます。ため息をついて寝返りを打っても解決できるないと思いますが、その無明が判れば悟りの境地に…!

穂○【54評】「ても」を置く位置がお上手なのか、音読したときの「ても」「ても」のリズムが、悩んでドタンバタンしてる様子をうまく表しているなと思いました。

虎○【54評】ほんとに真っ暗闇なのですね。窓のない部屋なのだろうか。かぶったりはねのけたりの落ち着きのなさからも、現状に大きな不安を感じていると思われます。背中の下の敷き布団がぐらりとするあの不安感に共感。

科○【54評】「かぶってもはねのけても」で煩悶を上手く表現している。まったく寝付けない夜の気分が伝わってくる。

C○【54評】ストレスや悩み事で寝つきが悪い夜。いっそ起きて「それなん」とかやると良いです。

剣選外【54評】まったくの俳句初心者ですが、小さい「っ」の前で切れてるのは旧来のルールに反しているんじゃないかと思って取りませんでした。そういうことを脇に置けば名句っぽく、尾崎放哉作といわれても納得しそう。

幽○【54評】ちょっとあざといかな、と思ったんですけどね、実感としてはそうだよなと感じたのも確か。風邪引いて寝過ぎるとおきる。

る○【54評】実際、こう感じる夜はある。だいたいそういう夜は自分の精神がやばい。外界と内観が混じり合っていてどこまでも暗い。夢とは別の意味で現実の境界が危うくなっている感覚。

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55 薄明かりひとの匂いの蒲団部屋    オカヤ (茅)
 雪,碍,智 (6 点) 珍,白,凡,朧,朝,寝,炭,知 (8 点) 14点
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珍○【55評】「蒲団部屋」と言われてピンとくる人って意外と限られているんじゃないだろうか。「薄明かり」も「ひとの匂い」もイメージばっちり。うまいと思います。

碍◎【55評】蒲団部屋って、スキーの合宿所とかの、布団だけが置いてある部屋ね。ドアを開けると、カーテン越しに薄明かりに満ちていて、ぎっしり積まれた布団には、人の匂い。人がいないのに温かさが伝わってくる。

白○【55評】蒲団部屋って布団部屋じゃなくて蒲団だなー。ひとがいっぱいいる明るい時間にはわからないけど、しんとする時間にはひとの匂いを放つんだな。

智◎【55評】すごく鮮やかな句だと感じました。匂いはきっとかすかなんですね。「薄明かり」なのもぴったり。

凡○【55評】ひんやりしている気配や廊下も浮かぶ。特選でもよかったが……蒲団は季語だけど、部屋をつけたから、別の季語が上にあってもよかったかもね。

朧○【55評】「薄明かり」という言葉が静かさを伝える、なるほど!蒲団部屋にみっしりとこもった布団からは人の匂いか、そうだろうなー。自分が実感したみたいに景色が浮かんだ句です。

朝○【55評】「労働」も組み込まれる旅。におい、特に「体臭」にはとても過敏だった時期。今、一人じゃない。ささやき交わす誰かがいる。「あの時あの場所」のかけがえのなさ

寝○【55評】景が浮かぶ句。体験したことないのに。俳句っていいなあと思える句。好きです。

炭○【55評】「寄る辺なし」とは違った緊張がある。まだ親しくなって間もない人の家に泊まって、ドキドキしてるような。自分の頭の中の乙女が反応しました。

知○【55評】実際、蒲団部屋を見たことはないですが、古い旅館などを想像しました。古い布団が沢山あって、薄明かりで映画のようです。

雪◎【55評】いいなぁ。好きです。薄明の中にひんやりした空気も静けさもわずかな匂いもすべてを「言って」いて、読んだだけでその場に立てるようです。蒲団もしっかりそこにある。大好きです。

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56 これがこの国の布団ね美しい    白豆 (白)
 鶴,珈,朝,ち,る (10 点) 鯖,虎,森,珍,ぽ,蓬,科,寝,幹,友,雪 (11 点) 21点
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森○【56評】夢のようにふわふわしながらも力のある台詞。どこの外国のお嬢様か存じ上げませんが、なぜか誇らしい気分にさせていただきありがとうございます。

鯖○【56評】上5中7がいい。でも「美しい」が好みじゃなかったので並選にしました。

珍○【56評】中七と下五の間に三点リーダーか二倍ダーシが入る感じ。たっぷりためて、「うつくしい!」。話者の見開いた目が想像できるよう。楽しい句。

ぽ○【56評】これも最初は外していた。でも読めば読むほど味が出てくる句。日本に布団があってよかった、布団ばんざ〜いと素直に思えてきて、布団という文化にまで考えを巡らさせてくれた。布団は日本人の誇り。

蓬○【56評】会話体に挟まる「美しい」の不自然さが、かえって異国の人の台詞らしく思わせる。きっと明治の、お雇い外国人の聡明な奥様とかだ。

虎○【56評】わたくしマオリさんの解釈と総かぶりなんです〜!どうしましょ〜!外国のお嬢様がうっとりと呟くさまが目に浮かんで、こっちまで嬉しくなってしまう句でした。

科○【56評】意外性にはっとして選。「美しい」が単純な言葉なのが惜しいけど、「これがこの国の布団ね」が素晴らしい。なんでこんなフレーズ考えつけるんだろう。

朝◎【56評】和柄というのは「模様(デザイン)」ではなく「絵」で。異国にもお嬢さま向けの綺麗なベッドカバーはあるのでしょうが絵としてダイナミズムがあるのは日本独特で。国際結婚を少し想起し、ポジティブさをそこに。

寝○【56評】中央アジアあたりの色鮮やかな寝具を想像しました。「布団」なのかはわからないけど、この人にとっては寝具=布団なので「この国の」布団なのかなと。「美しい」と素直に言ってしまう程、圧倒的に美しいのかな。

ち◎【56評】ありふれた「美しい」という形容詞が、この句では新しい感じがしました。外国の方がシンプルに言う「美しい」のフレッシュさ。「美しい」が一番後ろに来ているのも感嘆感がうまく出ていると思いました。

幹○【56評】忌避されがちな形容詞「美しい」がここではとても効果的。異国の人がつたない言葉でも素直に伝えようとした気持ち、と感じられる。不思議と誇らしくなります。

廣選外【56評】「これがこの」がひとりで主張してゐる感じでいただかなかつたのであります。

酒選外【56評】なんとなく、これの良さがわからないとこの座でハイスコアはたたき出せない踏み絵のような句な気がして、採り落として困ってるのだけど、でも、そんなにいいのかなぁこれ…。悩ましいです。

る◎【56評】外国のお嬢様を想像した。「布団」はふつうの和風布団。初めて見るものをまず「美しい」と把握するのは単なる無知ではなく、精神のギアがニュートラルでかつ昂揚している状態、一言でいえば「若さ」だろうか。

百選外【56評】布団の美しさをピュアな目が話している様子は惹かれた。でも『布団』ってことは知ってるんだ、と思ったら取れなかった。「これがこの国の寝具ね」だったら取っていただろう。布団使ってないか。 

雪○【56評】「外国のお嬢様」読みが多く、確かに翻訳調の 台詞から納得ですが、布団という言葉が出るのは日本の人と読みました。異国を訪れて、初めて目にする全てへの興奮が、自室に通されてこの言葉に結実した感が上手い。

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57 蒲団干し死に損ないの二十四年    渡邉朧 (朧)
 林 (2 点) 穂,ふ,数 (3 点) 幹 (-1 点) 4点
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ふ○【57評】蒲団を干せる程度の悩みならまだ死ぬ気なんかないんだろ。がんばれ青年。

穂○【57評】死ぬ気なら蒲団など干す必要ないのに干してる。そうして今晩も生きて眠るのでしょう。そんな毎日を二十四年も続けている中年、と取り胸が苦しくなったが、蒲団が生命力の象徴にも思えます。

数○【57評】死に損ないと言いながら、ちゃんと蒲団干してる。ぜんぜん死に損ないじゃないじゃん。むしろ、生き生きしてる。そういう前向きな句に思えました。

林◎【57評】二十四年というのがほどよくライトでいいです。六十年だと悲愴です。諸々悩みを想像させつつも、まだ取り返しがつきそうだし、やさぐれた気分ながらもちゃんと蒲団を干していてエライ。寝ぐせついてそう。

幹x【57評】二十四歳なら死に損なう感慨には早いし、何かしら死に損なった歳から二十四年なのか。二十四年という具体的な数字の割に、そこに感興はわかなかった。死に損なって蒲団干す図は好きなのに。

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58 森ガール布団の中で巻くカール    ちこ (知)
 剣 (1 点) 芽,藤,酒,百,炭,千 (-6 点) -5点
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藤x【58評】森ガールは恐らく「ていねいに暮らす」派に属する種族である。ゆえに布団の中でカールは巻かない。そんな無精はしない。意外な組合せは高く評価するが、ある種の論理性・正確さに欠けてはならないとも思う。

酒x【58評】「作者がユーモアと思っているらしいものが少しも功を奏していない。」(146回芥川賞での、山田詠美による広小路尚祈「まちなか」評より)

百x【58評】固有名詞(特に流行ものの)を使ったり、韻を踏んだりするときは、よほどその句に必然性がないと読む人を説得しきれないと思います。

芽x【58評】girlとcurlの言葉遊びでしょうか。森ガールには清潔感がありそうなので、ちょっと違和感を感じました。

剣○【58評】逆選多数で意外。僕これ大好きです。森ガールなのに布団、面白いじゃないですか。にせ森ガールですね。でも森ガールって森に住んでないんだからそもそも贋物で。ただの駄洒落じゃないそういう批評性を感じます。

炭x【58評】ダジャレの印象が強すぎた。森ガールが布団にいる「景」より、句の「言葉」が残り、消化不良を起こしている。でも「山ガール」と勘違いして「山ガールはカール巻かないだろ」と思ったのも白状します。

千x【58評】韻だけを重視した句に思えてしまった。だとしたらとことんやってほしかった気も。森ガールが布団の中でカールを巻くのは、やっぱりイメージしにくいです。

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59 布団はぐまるまる背中足で押す    まる子 (子)
 智,寝,舘 (3 点) 平 (-1 点) 2点
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智○【59評】はいだ方は「早く起きろ」と思っているかもしれないし、はがれた方は文句たらたらかもしれない。けれどそれを全部そぎ落とし硬い質感が好み。「まるまる」がひらがななのも。

寝○【59評】背中を足で押すってやったことないなぁ。やってみたいなぁ。足で押して起こし起こされる関係を羨ましく思った句です。

舘○【59評】○時に起こしてと頼まれたからこっちは気合で起きて起こしてるのに起きやしない。気持ち良さそうに寝てる。頭に来ます。足で起こすのは当然ですわ。

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60 乱れなき蒲団の下に乳さぐる    紀野珍 (珍)
 酒 (2 点) 噛,森,剣,麻 (4 点) ふ (-1 点) 5点
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森○【60評】乱れなき、のちゃんと布団をしいてある感じが初々しくてかえって淫ら。上とか下とか確かに布団は重層的で、目標(乳)までの寝着の層も相まって、ガサゴソと美しいハーモニーが聴こえてきた(何だそれ?)探検句。

酒◎【60評】「乱れなき蒲団」がすごくいい。ゆーっくりそーっと伸ばす手に、まず御簾のある部屋が見えたけど、現代のぎこちない二人(蒲団に入った時点では友達、そしてその手はピシャリと叩かれる)と取っても良い。

ふx【60評】女起こせよ、と思います(やらないなら許す)。男性の心理はよくわからないのですが、女をそっと起こしてから、の方が甘美ではあるかなあ。というより母なるものへの隠している甘えたさ、憧れを言いたいのかなあ。

剣○【60評】俳句にエロを盛り込むのは短歌にくらべて難しいような気がするので、これは二重の意味で果敢なチャレンジだなと。あとこれ、蒲団が乱れてないってことは、彼女も緊張しつつアプローチを待ってると思います。

噛○【60評】勿論このあと蒲団が乱れることも考えられるんだけど、そうではなく眠りにつくための安心感として乳をさぐって欲しい。母性の象徴として乳を感じたので。

麻○【60評】まわりに人が寝てるんだよね、たぶん。ばれたら気まずいんだよね。隣のやつ寝たフリだぞ、気をつけろ。

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61 座布団をくるりと返す前座かな    yagimeiko (芽)
 崖,穂 (4 点) ひ,幹,じ,黒,栗,黄 (6 点) 林 (-1 点) 9点
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崖◎【61評】(決まっていたから。粋な感じだった。そして、この句って覚えやすい。というか忘れられない。良い句って、忘れさせない。この句を私は忘れることが出来ないと思う。だから、あの曖昧な獣を落としても特選。)

穂◎【61評】平易な言葉で書かれた名随筆みたい。かなり好きです。「くるりと」で前座の重鎮でなさ、若さ、身の丈、そそくさと袖に下がる(それが当然という風情で)様子まで出ている気がしました。

栗○【61評】寄席ではおなじみの光景。演者が変わる際の段取りを詠んだだけなのに、落語の世界が一気にひろがる。出囃子が聞こえてきそう。若い前座さんはきっと痩せてる。なんかうまいもんでも食べな、って心付あげたい。

林x【61評】私もはじめ座布団で句を作りかけました。が、それだと布団という語は入っているけど、季語としての布団とは別物になってしまうのではと。句会第一回のお題の「氷」のときの注意に習うと、アウトじゃないかな?

ひ○【61評】羽根布団包囲網の中、きらりと光る座布団。にぎやかで、静かで、若々しさが感じられました。

黒○【61評】「くるりと返す」の気負わなさ好印象。実際に寄席では座布団を返すことがあるのだろうか(落語見たことない)。それでも「きっとやる」と思わせてくれる句。好きです。

数選外【61評】布団で座布団にするのはいい発想と思いましたが、とるほどではなかったです。

黄○【61評】わかりやすさと強さがありますね。ストレートな物言いで、それでいて只事に落ちていないとおもう。「くるり」が効いてますね

幹○【61評】鮮やか。手の先まで見えるよう。寄席のことは良く知らないのに、そんな所作の噺があるのかな、と興味をそそられるくらい、表現した句。

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62 起きなさい布団剥がれて団子虫    しっぽ (ぽ)
 芽,少 (2 点) 蓬 (-1 点) 1点
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芽○【62評】お母さん、怒ってますよね。シャッとカーテン空けられて、「なに!その格好は!?」って。寒い朝で朝寝坊だと風当たりが強そうです。

少○【62評】なんというか、定番の姿。実際、こんな経験ないけど、わかりやすい画が浮かぶ。

蓬x【62評】五、七、五の中にひとつずつ絵が入ってて、しかも全部明瞭に理屈がつながってるので、オチの弱い新聞漫画みたいだなあ…と。どこかが飛び石になっててほしい。

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63 団子より恋より何より羽根蒲団    なご (和)
 ひ (1 点) 1点
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ひ○【63評】団子の対置と言えば花ですが、春の句にしたくなかったのかな…いい調子の中に羽根蒲団の軽さや柔らかさが描かれている。かなと漢字への拘りも感じられます。

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64 羽根蒲団そろそろ黒子おほひけり    黄犬 (黄)
 幹 (2 点) 噛 (1 点) 3点
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噛○【64評】黒子をポツポツと布類に生えるカビに捉えて、嫁入り道具として用意してある羽毛布団が使われることなくカビが生えてきているのかなと。いや置き場所がなく実家に放置してある羽根蒲団を思い出したので。

幹◎【64評】ちょっといいお家のお嬢さんが風邪引いて、見舞いにいったら顔の黒子を気にしてか、さりげなく蒲団を上げて隠していく、みたいに思ったのです。かわいいなー。