第二回【なんでしょう句会】米評

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103 ガムスケボーセントラルパーク白い息 
<特選> 朧 (2 点) <並選> 朧朧,屁,子,凡,千,巻 (7 点)
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巻◯【評】ヒップホップのヤバいお兄さんかと思っていると、結句にいたって白いポエジーが発現し、そしてそれが(中央公園はもとより)十七文字の乾坤を循環するような冴え冴えとした感覚。

子◯【評】言葉のリズムがそのままスケボーに乗っているような感覚が「白い息」ですっとひと呼吸したよう。冷たい空気を身体の外にも内にも感じるのが冬らしくていい。アメリカでなく新宿にも思えるのが残念。

朧◎【評】前半で男の子性を存分に発揮して「白い息」できゅっと締めるのがすごい!大好きな“せつな明るさ”が詰まってます。

凡◯【評】既存の(アメリカ的)単語を並べて季語つけただけ(助詞「さえ」ない)の、僕もときどきやる「省エネ俳句」。作者がしたの斡旋だけ。だが、それがいい(←言いたかった)。景色もみえる!

屁◯【評】アメリカをイメージさせるモチーフをただただ並べ立てる力技にアメリカを感じた。これを特選にしてもよかった。

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104 吠え止みてペンシルヴェニア冬のなか 
<特選> 碍 (2 点) <並選> 碍碍,く,酒,里,る,科,茅,助 (9 点)
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酒◯【評】犬の声(聴覚刺激)が止んではじめて周囲の冬の風景が目に飛び込んでくる(視覚刺激)、という、五感のシフトと、数秒程度の時間の推移が気持ちいい。地名も句に溶け込んでいて、十七音全部でアメリカっぽい。

茅◯【評】犬(か、狼)目線なのかと思いました。吠えても、なにも帰ってこなくて、広い景色で。寂しくてかっこいい。

里◯【評】雪のペンシルバニアの住宅街、外繋ぎの犬が吠えるのをやめ、また静けさが戻る。映画のオープニングみたいな美しい光景。

く◯【評】全然経験したこともないのに、自分がこの情景の中にいるのが思い浮かぶ。犬(オオカミ?)の遠吠えが聞こえなくなって、静かに雪に降り込められている部屋の中。

科◯【評】「止みて」がすごい。吠え声の余韻だけを取り出して詠み、その余韻と静けさを「ペンシルヴェニア冬のなか」という俯瞰風景の中に満ちさせている。

碍◎【評】かっこいい! ジャック・ロンドンの『白い牙』みたい。狼だか野犬だかの視点。雪に包まれたペンシルヴェニアの街を見下ろす小高い丘の上で遠吠え。吠え止むと、あたりは静寂に支配される‥‥。

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105 友達に作戦という悩ましさ 
<特選> <並選> 森,甘,は,茅,知,大 (6 点)
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甘◯【評】あーあの時のなんかモヤモヤっとした感じ、違和感ってこういうことだったのか!って視界がパーっと開けた感じがしたので。

森◯【評】わりとふつうの言葉が並んでるんだけど正にアメリカ。映画で見るあのジレンマをよくあらわしていると思った。

知◯【評】アメリカ軍のトモダチ作戦ですね。作戦に友達を使うのがアメリカらしいが沖縄問題もあるし複雑です。アメリカのもう一面が少し見える感じがして選びました。

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106 オーッイエスイエェェッス!ノーはほんとにノーだから 
<特選> <並選> 森,蓬,好,ち,雪,鶴 (6 点)
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森◯【評】エロ的な絶頂かしらと思ったら、急に冷めた拒絶がきて、やっぱり女性の句だなと勝手に納得。

好◯【評】ほとんどやけくそなドライヴ感がいいですね。実は定型感もばっちりあるところが手練です。

雪◯【評】この勢いに、取らざるを得なかった。前半のあり得ない展開といい、後半の真顔のテンションの落差といい、自由すぎる魂に負けました。敗北と言っていいと思う。

蓬◯【評】これはひどい(褒め言葉)しかももしかして「無理矢理系のは撮れません」的下ネタ。が、ふつうの表記でも字余り気味な上五をこれでもかと強調したリズム感が出色。

ち◯【評】これ音読すると気分が上がります。ええ、アメリカ人になりきれます。但し必ず「エ」と「ェ」を区別し、半角の「ッ」で発音すること。私は天才的にこの句を音読できます。

鶴◯【評】漫画の絵で、体はひとつなんだけど顔がふたつある表現、で思い浮かべました。それはさておき、アメリカ人のノーは、ほんとにノーだよなーと実感したので選。

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107 インディアン海馬の底の母音かな 
<特選> 科,大,炭 (6 点) <並選> 科科,大大,炭炭,崖 (7 点)
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崖◯【評】インディアンで切れていると解釈すれば侵略者の気持ちということでダンスウィズウルブス。切れていないのなら、ここは頑張って助詞をつけてほしいですね

科◎【評】「海馬の底の母音」なんて言葉どうやったら思い付けるんだろう、と純粋に感動した。血脈、時の流れを感じさせ、海と母の漢字も盛り込んでいる。それらがインディアンとなんとマッチしていることか。

炭◎【評】インディアンの言葉は分からないけれども、原始の記憶を呼び起こされるような彼らの「遠吠え」が聞こえてくる。グランドキャニオンのように壮大な風景が見えて、特選です。

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108 ハグは嫌紙箱入りの中華麺 
<特選> <並選> 好,朧,凡 (3 点)
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好◯【評】「紙箱入りの中華麺」はまさにアメリカ。それもむやみなハグもいやだなあ、ということなんですね。無季だけどその必然性があると思いました。

朧◯【評】雑誌でしか見たことないけど紙箱ヌードル初めて知ったとき、たしかに驚いた。この人と旅行したら意見あいそう。

凡◯【評】おっしい!紙箱入りの中華麺だけでアメリカなのに!でも、上五のつまらなさを減点してなお○をつけたいほど、いい発見のある七五だ。

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109 賀状書きくコーヒーのうすさかな (※「く」はくの字点(書き書き)) 
<特選> 屁,重 (4 点) <並選> 屁屁,重重,帽,里,凡,鶴,巻 (9 点)
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巻◯【評】アメリカン! なんだか余裕綽々な感じがすてき。

里◯【評】何年も会っていない人と、何年も続いている年賀状だけの関係。それがコーヒーの薄さで上手く表されていると思いました。(「くの字点」が分からず読み飛ばすところでした)

帽◯【評】お題意識がこちらの読みを縛る例。お題「アメリカ」でアメリカン珈琲って。句跨りとオドリと〈かな〉の3点セットも効いた。

鶴◯【評】アメリカしばりでこれはどうなのかな?と少し思いましたが、賀状書き書きとコーヒーのうすさがあまりにぴったりで。年賀状書いてるときの、ぼーっとしてくる感じ。

凡◯【評】アメリカぽくないけど「出来た句」。かきかきの繰り返しの、合いの手のようにコーヒーが生きてる。

屁◎【評】「コーヒーのアメリカン」という軽い切り口とシンプルな情景描写がマッチしていると思いました。同じアイデアを思いついたけどこんな風に詠めたらよかったな、と。

重◎【評】年末だがバタバタしてない。大掃除も済んでそうだ。というか大掃除する必要がなさそうだ。(要するに巻さんのいう「余裕綽々」です、はい)

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110 カウボーイ扉をひとつ開きたり 
<特選> 茅 (2 点) <並選> 茅茅,幽,白,寝,重,芽,凡,夕,知 (10 点)
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茅◎【評】「扉をひとつ」のテンション高くない所にぐっときます。カウボーイといえば「あの扉」。片方をぐっと開いてもう片方は身体で押開けるのかな。静かに物語が始まるかんじ。

夕◯【評】ザ・アメリカ。西部劇。ならず者だらけの酒場に主人公が悠然と現れる物語の幕開け。「ぼくは落ち着きがない」の冒頭も思わず浮かびました。

寝◯【評】遠慮がちなカウボーイもいるんだなぁ。バーンじゃないところが好感持てました。

凡◯【評】添削して季語を入れちゃう「保守系俳人」の先生が浮かぶ浮かぶ。扉が「ひとつ」は余計ですノデ、とか言うんだよあいつら。「ひとつ」いるっつぅの!季語ない全体があー清々しいあー清々しい。

幽◯【評】よくある観音開きの扉のことですかね。日常動作のはずのそれを、わざわざ「ひとつ開く」と強調したところが面白かったです。味わいがあるな、と。

知◯【評】カウボーイなのに扉を静かにひとつ。面白いです。おしとやかなカウボーイ。

重◯【評】夕さんのいうとおり「西部劇だ。」ですね。せっかくのカウボーイなのに扉開いたとこしか言わないのが、いいなあ。緊張感だってなくもない。

芽◯【評】西部劇でカウボーイがバーン!と扉を開けて入って来るのをローアングルで撮っているイメージ。既に片手に拳銃を持っているから一つ(片側)なのかなぁと…。

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111 ロッキー見慣れぬ靴はき息白し 
<特選> <並選> ひ (1 点)
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ひ◯【評】以前に履いたのは、それ以前に購入したのは、いつだったのか…男には走り出したくなる時が訪れるものです。えいどりあーん!僕は狂い咲きサンダーロードで原付をかいました。

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112 馬鈴薯に贋金挟むや冬の小屋 
<特選> 甘,る,崖 (6 点) <並選> 甘甘,るる,崖崖,好,飼 (8 点)
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崖◎【評】ジャガイモに贋金をはさむとなんかよいことがある風習とか文化があったのか、ある時期の事件を指しているのか分かりませんでしたが、季語、カッケー。字余り、はみ出した感じに拍車かけー、で特選

甘◎【評】この句を読んだら他のどの国でもなくてアメリカを想像する。これぞアメリカ!このお題で最初に考えたアメリカは西部開拓黄金ラッシュ時代なのだけど、こんなにも上手にこの時代を表せるとは!文句なしの特選

好◯【評】これは「黄金狂時代」を踏まえているのかしらん。道具立てが揃っていて、でもあまりべたべたになっていないところがよいです。

る◎【評】見た瞬間特選。「冬の小屋」で良からぬ事を企む男たちが浮かぶ。アメリカと特定できる単語はないが、どう見てもアメリカ。「アメリカ理解度」が高い人の句のように思う。

飼◯【評】葉巻を咥えたごろつきどもが寒さに震えながら作業をしている絵が浮かんだ。ポテトはイギリスの代表的な食べ物でもあるのに、まずアメリカと結びついたのは、ハリウッド映画の1シーンのようだったから。

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113 米語なら得意なのにとビター干す 
<特選> <並選> 
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114 ノルマなのドーナツ三個朝食に 
<特選> <並選> 
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115 全米でナンバーワンは初動だけ 
<特選> <並選> 栗 (1 点)
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栗◯【評】映画宣伝の常套句。アメリカでは公開週末だけ大入りすれば一位なので、面白くない映画のことも多々あることを皮肉ってるのだろう。川柳に近いのだろうが、元宣伝マンとしては選ばざるを得ないな。苦笑。

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116 この味はよもや魚肉かウォール街 
<特選> <並選> 蓬,甘,雪,科,黒,飼 (6 点)
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甘◯【評】NYのシャレオツカフェでビジネスマンに混じって朝食にベーグルなんて頼んじゃって、悦に入ってる所で懐かしのチープテイストの代表格に出会っちゃったら!目を見開いて驚いてる姿が想像出来る!

蓬◯【評】魚肉といえばソーセージ、といえば個人的には日本の味。なので、ウォール街で戦う日本人ビジネスマンがランチで出会った故郷の味と読みました。懐かしくともべつに嬉しくない感じが「よもや」に凝縮。

黒◯【評】「よもや」が好き。魚肉、たぶんヘルシーとか言って「あえて」選ばれた肉なんだと思います。

雪◯【評】アメリカの味覚への、わたしの信頼のなさと響き合って選。ウォール街という、実務実用に偏った街と、栄養があればよしの魚肉の類似もよかった。よもや、の疑い驚きが、味気なさも情緒と思わせてくれる。

飼◯【評】皮肉っぽいユーモアが好き。世界金融の中心であるウォール街で魚肉って。確かにウォール街で行われていることはある意味"魚肉=インチキ"といえるな。

科◯【評】ウォール街にも魚肉がある。そのことを、皮肉も嘲弄も無しで、驚きのみで詠んでいる点が非常に好感が持てた。旅先で知己に出会った、という感じ。

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117 マフラーを解く眉きりりフーターズ 
<特選> 寝,じ (4 点) <並選> 寝寝,じじ,酒,科,幽,鶴,地,大,炭 (11 点)
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酒◯【評】ウケ狙いの作かもしれないが、ちゃんと俳句だ! 眉にフォーカスしたこと、デレではなく「きりり」なことに発見がある。フーターズで勇ましくあることの滑稽さ。特選と迷ったが、「解く眉」がやや難と思い並選。

寝◎【評】これはもう、ウラモトさんが描いたボンコバセンセイで絵が浮かんで、頭から離れませんでした。「キリリ」がいい。

鶴◯【評】フーターズに行ったことはないのですが、薄着の女の子のために暖房きいてそうなイメージ。外気との温度差でわくわく感が伝わります。眉きりりで、男の子に対する「ばかだなあ」感も。好きです。

幽◯【評】マフラーのふんわり度+きりりの鋭さ+フーターズもつなんとなくバカな感じ、ちょっとずつずれたそれらの感覚が共鳴しているようでした。

科◯【評】入店して席に着くことを「マフラーを解く」と表現したのが上手い。眉がきりりとしているなら、マフラーを解く動作も力強いんだろう。「フーターズ」を上五でなく下五にし、ちゃんとオトしている。

地◯【評】やる気がみなぎっています。地味なマフラーと太い眉毛が目に浮かびます。そこまでがんばって行く場所ではないとも思いますが、いい心がけです。わたしもフーターズに行ってみたいので、選びました。

じ◎【評】マフラーを解くことと眉きりりとの対比がまずカッコよくて好きで、それをフーターズで台無しにしている感が逆に気に入りました。玄人だ(フーターズの)。

炭◯【評】シリアスな顔になればなるほど凄くまぬけ。このマフラーを解く人、はぜひ吉田戦車さんに眉の太い男性として描いてもらいたい。(エハイクの様に)

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118 アパートの鍵で出世の摩天楼 
<特選> 芽 (2 点) <並選> 芽芽,屁,子 (4 点)
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子◯【評】アパートの鍵で本当には出世しないのだろうけど、そういう野心とストレートに結びつく感じが「摩天楼」にはあるなぁと思ったので。

屁◯【評】ちょっぴりスノッブな感じもするが、アパートの鍵ってフレーズ一発で贔屓。ビリー・ワイルダー好きなので。

芽◎【評】ジャック・レモンかとも思ったが、もっと近々でもいけるかと。映画のイメージもあるけれど、現実にもありそうな事で、逆に今っぽいような気がして。

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119 初春や全米泣いたとはしゃぐ子ら 
<特選> <並選> 妹,丼,C,藤,じ,裏 (6 点)
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妹◯【評】半ズボンが3人ぐらいで「全米が泣いた!」ってキャッキャ言ってる。けど、どうせあと5分もしたら、飽きてDSとかやり出すんだと思う。それにしても全米って、すぐ泣くし、よく泣くな。

丼◯【評】子供に映画をねだられて、全米が泣いたという話題作へ。親はその惹句がなんぼのもんかはすでに承知済みなのだが、乗せられるのもまあいいか。ほのぼのしました。

藤◯【評】なんでもかんでも「全米が泣いた!」で強引に締めて笑う、という遊びは大人のものかと思ってた。子どもがやってたらなんだかうれしいし、句にしてしみじみ噛み締めたい気分なので採りました。

C◯【評】「子ら」は子供ではなく、日本人全体(もしくはコピーをつけて煽る人達)と取った。泣きたい子供はまれではないか?そろそろ違う煽りを。「絶望」「二度見」「見て見ぬ振り」それなんのお題にしたい

じ◯【評】そうか、全米が泣いたって子供もカウントされるんだ、って気付かされました。子供のころには無かった宣伝文句だったから。

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120 にわとりを一羽づつ食ふ聖夜かな 
<特選> 幽 (2 点) <並選> 幽幽,好,ち,波,鯖,丼,少,凡 (9 点)
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丼◯【評】にわとりを一羽ずつ食べてしまうというだけでアメリカンなクリスマスを感じさせる豪腕に魅せられました。

少◯【評】クリスマスにチキンはアメリカ人からすると「?」らしいのですが(そりゃそうだ)、すでに風物詩なのかな。「しばり」というか「かぶれ」な感じも。

鯖◯【評】「にわとり」だし「一羽づつ」だし日本人だなこいつら。これはもう聖夜にかこつけた「にわとりを食う宴」だ。おもわず共感してしまった。

好◯【評】七面鳥の方がアメリカっぽいかもしれませんが、まあとにかくあの国のポーションの多さには辟易するもんね。でも、この句は別に苦しそうでもないところがいいな。

波◯【評】クリスマスにチキン一羽を前にフォークとナイフ持ってにっこりしてる絵が浮かんで笑えたが、そんな食わないだろ、と。シンプルな言葉選びの中に、あるくだらなさが良い。

ち◯【評】そうだ、あの巨体にはにわとり一羽ずつが最適だよね!と同意しつつ、アメリカでは、生魚を一匹丸飲みするマイクロポエトリー(日本縛り)が作られてたりして…と思った。

凡◯【評】マッチを擦ったらみえたね。鶏じゃなくて七面鳥って知らなかったんだな。アメリカでなくこっちが貧乏で把握が大雑把な感じがいい。

幽◎【評】雪の中にぽつぽつと建つ建物、どの建物でも必ず1匹のにわとりを食っていると思うと、にわとりと家との幾何学的対応がなんだか面白かった。

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121 ブランチやSLY流して雑煮椀 
<特選> <並選> く (1 点)
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く◯【評】アメリカは、日本にもあるんだな。ふつうの日本のお正月の光景なのに、アメリカだ! スライ(&ザ・ファミリー・ストーンだよね?)をお正月に聴く、というのがなんかオツな気がしてきました。

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122 アリゾナにいるんだまあそうなの坊や 
<特選> <並選> く,碍,る,裏 (4 点)
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く◯【評】つい笑ってしまった。「まあそうなの坊や」だけでももうアメリカっぽい。(なんとなく思い浮かんでるのがテレ東でやってた「オー!マイキー」)

る◯【評】スカイプとか、ネットを使って坊やと(日本の?)おばあちゃんが会話している景ととらえました。こうした句の形を取ることで、背景は消えて、ただ声だけが太平洋を越えて応答している。

碍◯【評】ネットは、思いもしない人と人をつなげる。チャット相手が、遠い国に住むチビッコだとわかった瞬間。「僕、アリゾナにいるんだ」。えっ、アリゾナってどこよ。「まあそうなの」くらいしか言えない。

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123 SPF50を二度塗る冬のグアム 
<特選> <並選> 珍,朧,C,千,彗 (5 点)
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珍◯【評】冬の季語で常夏の島へ旅させてもいいじゃんだってアメリカしばりなんだし、という心意気に感服つかまつり候。これは女性の作でしょうね。SPF50だし。

C◯【評】キャッチコピーのよう。この句を見てグアムに行きたくなる人もいるだろうが、むしろ日焼け止めの売上が上がりそう。

朧◯【評】冬なのに、グアムなのに、のどちらにも寄りそうな実感がまさに!と、グアムに行ったこともない人間に感じさせる力がありました。

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124 ダッシュボードに拳銃か冬薔薇か 
<特選> 帽,黄,C (6 点) <並選> 帽帽,黄黄,CC,珍,波,少,る,科,寝,重,芽,黒,夕,林,炭 (18 点)
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林◯【評】季語がアメリカンかつハードボイルドに料理されていて、ドラマの予感もあって。助手席には峰不二子みたいな女が乗ってくるのだろう。7・5・5でたたみかけるリズムもわくわくさせる。

夕◯【評】拳銃の物々しさもさることながら薔薇から漂うイケメン臭。ハリウッドぽさも感じるしアメリカではこういう事普通にありそうだなとも思える。ちょっぴりレッドウォーリアーズ

少◯【評】クライムアクションかラブストーリーか。ジョン・ウーっぽくもあるかな。この後の展開が気になる。

珍◯【評】「ダッシュボードに拳銃」でアメリカを表現するカッコよさ。破調で目を留めさせるのも巧妙なトラップのよう。クール!

C◎【評】自分は濁点のはいる句が嫌いらしい。が、これは大好き。濁点使いのお手本。映画のシーン(車の外は降りしきる雪でガイシャス)のようでもあり、シュレディンガーの猫を想起させる句。カッコイイ

帽◎【評】句跨りに二者択一の疑問文という形が好き。「女か虎か」式のオープンエンディングもさることながら、意表を突く季語もいい。アメリカよりフランスっぽいけど。

波◯【評】かっこいい!拳銃、冬薔薇!でもちょっと昔の二枚目な感じの俳句。

る◯【評】名詞+助詞しかない句なのに、ドラマがある。入っているのは果たしてどちらか。ちょっと決まりすぎな印象もあるが、有無を言わせぬ言葉の速さがある。好みは分かれそうだけど、カッコいい句。

寝◯【評】愛憎ですね。薔薇でも拳銃でも成り立つシチュエーションの緊張感が伝わって来ました。

黄◎【評】禁酒法時代のイタリアンマフィア。なぜかジュリーで脳内再生された(あっあの歌か!)。冬薔薇は白でしょう。添えられて真っ赤に染まる。ベタな感じもするが照れないで。キザかっこイイ!

黒◯【評】カッコいいから○。車のドアを開けてくれた相手に「拳銃か冬薔薇」を予感している自分の気持ちを表した句だと思いました。何をやった相手なんだろう。

科◯【評】「冬薔薇」という季語にはこういう使い方もあるんだ! と驚いた。「と」でなく「か」なのも、主人公のハードボイルドな逡巡が表わされていて格好良い。

炭◯【評】「冬薔薇」は季語なんですね。ダッシュボード。拳銃、冬薔薇、すべてが冷たい。マフィアの男の運転する助手席に座る女性の不安な心境が思い描かれました。

重◯【評】冬薔薇が置いてあったら、拳銃が置いてあるのと同じくらいドキッとする!

芽◯【評】もう…すみません、ですが「サムライ」に始まる数曲の歌がリフレインです。ものすごくカッコいいです、ゾクゾクします。ちょっとレトロな感じも好きな句です。

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125 シアトルにいます色々ありました 
<特選> 朝,子,ひ,黒 (8 点) <並選> 朝朝,子子,ひひ,黒黒,好,酒,黄,鯖,雪,白,は,飼,夕,裏,大 (19 点)
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酒◯【評】取っておいて無責任だが、何が良いのか全然説明できない。棒のような物言いに「色々あった」感がよく現れているのか? 景じゃないけど「なんか見える」。イチローとか岩隈ととらず、そのまま味わった方が面白い。

夕◯【評】アメリカ版北の国から。「ダディ…僕は泥のついた100$札を盗まれてしまったわけで…」

鯖◯【評】今回地名をいれた句に地名が動くもの動かないものあった中でこれは「動いてそれが傷でない」句だ。動いた先々にそれぞれまったく別の個人がいるだろう。そのサンプルとしての「シアトル」もいい。

子◎【評】LAやNYでないところがじんわりくる。「アメリカにいます」ではなくわざわざ都市名を出すのは、何か本当にわけがありそう。それで?と言いたくなるけど言えないような、妙な拒絶感もある。

黄◯【評】「シアトルにいます」このIA(O)Uの母音の繰り返しの語感が良さが音読みしてみると心地よい!その後もIOIOAIAIAと続く語感も好き。意味は考えず、ただこの音のリズムに強く惹かれました

黒◎【評】何があったからシアトルにいるのか。なぜその気持ちを俳句にしているのか。分からないことだらけです。でも、この飄々とした雰囲気が好き。

雪◯【評】音の良さと淡白さが好きでとった句。いろいろ、の内容を聞くのは後回しにして、とりあえずお疲れさま、ゆっくりしてね、と思って。自分に向けて話しかけられた気になったのかなぁ。

飼◯【評】色々あったんですね。シンプルで好きです。

ひ◎【評】並置する二つの文章に得体の知れないドラマを感じました。イチローでもスタバでもなく、僕にとっての彼の地はシアトル喧嘩エレジーなので、季節もばっちり冬。素敵です。

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126 雪眼鏡タイプライター叩くかな 
<特選> <並選> 白,藤,光,炭 (4 点)
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藤◯【評】人間がサングラスをかけて見守る中、氷つぶてみたいに固くてぴかぴかした雪の反射光が、タイプライターのキーをがっちゃんがっちゃん押して書きものをしている。印字された文字もたぶん雪語で読めない。

崖 【評】実はほぼ同じ句を作っていた。冬帽子タイプライター叩くかな、というものだ。ユングの言う集団意識かと思ったら、自分の句であった。雪眼鏡がぜんぜん効いてないと思う

光◯【評】タイプライターを規則的に叩く「つまらなさ」を紛らわすために、時折雪眼鏡で窓辺の雪を鑑賞する。なんとなく「不機嫌」を感じてひっかかった句。

白◯【評】雪眼鏡、がよくわからなかったんだけど、冬のタイプライターはいい。という点だけで。Royalの どっしりしたやつだといいなあ。

炭◯【評】不勉強ながら「雪眼鏡」と言うものを知らず、カート・ヴォネガットみたいなおじいちゃんがひっそりと小説を書く景が浮かびました。本来の雪眼鏡なら、地理学者かな?

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127 サンセットブールヴァードに冬日落つ 
<特選> 栗 (2 点) <並選> 栗栗,酒,波,丼,る,助 (7 点)
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酒◯【評】日が落ちるという名の場所に日が落ちる。物凄い発見ではないしそれを詠む気障さも少し感じるが、その景を見たらこう詠みたくなるだろうなという共感がある。ロスのあっけらかんとした陽の色も目に浮かぶ気がする

丼◯【評】マーロウ、今日は大変な一日だったじゃないか。バーでギムレットでも飲もうか、それとも家でチェスの棋譜と向き合うかい?とか独り言をいう私立探偵が車を走らせる景が見えました。

波◯【評】カタカナは文字数をとるので、難しいと感じたが、長ーい地名を入れてなお、季があり、さらに、栄枯盛衰を感じさせられた。お題を上手にクリアした感じ。

る◯【評】日が沈むなあ、サンセットだものなあ、という納得感と、カタカナのカッコよさがうまく調和していて見事。ブールヴァードという難しい言葉を使いこなしていて海外文学とか詳しそう。

栗◎【評】「サンセット大通り」はハリウッドの裏側を描いたビリー・ワイルダーの名作。名声を忘れられず、狂気に落ちて行くかつての大女優グロリア・スワンソンの姿が、冬日落つに重なった。

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128 元旦のタイムズスクエア白い息 
<特選> 里 (2 点) <並選> 里里,少,C,夕 (5 点)
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里◎【評】有名なカウントダウン、豪勢な紙吹雪、参加者の派手な装束や盛り上がり様など、熱気が溢れかえる場だが、そう言えば冬のマンハッタンは氷点下だと「白い息」で思い出され、その対比がすごく良かった!

夕◯【評】初めて見る日本とは違う華やかなカウントダウンを圧倒されながら眺めている様子が浮かびました。寒さに手を口元にやって白い息で暖めながら綺麗さにただただ「わぁーっ」て思っていそう。

少◯【評】新年を迎え、盛り上がる場。それを衛星中継でのレポートを見ているような感じ。白い息は熱気を伝えるレポーターのものかしら。

C◯【評】自分には俳句にするのが難しいお題だった。ちゃんと季語があって、俳句になっていてアメリカ。上手だなと思った。このお題、王道で勝負している句は少なかった。

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129 金管と姦淫そしてコーラ飲む 
<特選> <並選> 帽,朝,黄,鯖,助 (5 点)
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鯖◯【評】金管と姦淫で期待させといてコーラかよとも思ったが下戸にも爛れた夜はある。コーラ飲まないバージョンもつくって欲しい。

帽◯【評】コーラよりも金管アメリカを感じた。たんなる並列なのか、それとも金管と姦淫しちゃったのか。

黄◯【評】ジャズか何かのバンドなのかな。バンマスの女といい関係になってしまったのだろうか。暗く漂う淫靡な世界。スカッと爽やかにならないけどコーラ飲んじゃうんだろうな。きっと

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130 ジェイソンが沈んでいたと脅かされ 
<特選> <並選> 彗 (1 点)
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131 日記買ふ原子力空母停泊す 
<特選> 藤 (2 点) <並選> 藤藤,崖,森,酒,波,る,黒,鶴,地,茅,巻 (12 点)
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崖◯【評】なんでしょうさんの句かな? 取り合わせの妙味があります。原子力空母の把握が、読み手にとても委ねられているけど、意思表示も明確にされているようで良かったです

酒◯【評】「日記買ふ」は、年の瀬の平穏な日常で、毎年繰り返される営み。「原子力空母」は、不穏だが事実存在することが日常で、開発運用が繰り返されている。個人的な好みで言えば正直苦手なタイプの句だが、上手いなあ!と。

森◯【評】横田基地に入ったことがあるけど、鉄柵の向こうは「外」でなく「内」だったんだなぁと改めて感じた。港で見かけた空母にその類のことを意識したんだろうけど、日記って三日と続かないんだよね。僕の場合。

茅◯【評】原子力空母はただ居て、ともあれ居るなあ、でかいな、と思う。年末だから日記を買って、でもそのことは書かないのかも。

巻◯【評】セーラー服の生徒会副会長みたいな生硬さに○。あの半径50マイル圏外への退避勧告が解かれ、彼女が日記を求めた11年4月20日原子力空母GWは横須賀へ戻った、とか厚手の中性紙にしかと記録されたい。

藤◎【評】原子力空母が馬鹿馬鹿しいまでの巨大さでこの人の心象風景に浮いているけど、でもきっと日記にそのことは書かない。空母と日記の極端なサイズの差にすごく惹かれました。

波◯【評】こういう漢字がいっぱいの俳句ってあるけど(なんか固有の呼び名があるのかしら)、さすがに原子力空母。文字が詰まったかいがある。とはいえ、日記買うにはちょっと疑問もある。それじゃなくてもいいのかも。

る◯【評】基本テクニックである大小の対比を分かりやすく使いつつ、横須賀あたりの実景としても自然。終止形+終止形できりっとした印象。

鶴◯【評】原子力空母停泊す、という言葉の存在感に圧倒されました。短い言葉に圧力をもたせていることに驚いた句。日記買ふ、は他の表現もあり得そうと私も思いました。

黒◯【評】新年に海辺を散歩していたら原子力空母が停泊していたよ、という句ですよね。「原子力空母」の重々しい雰囲気が意外と新年にマッチしている気がする。

地◯【評】「原子力空母」はただそこにあっただけだと思う。大げさなくらいに重厚な言葉がおもしろくて選んだ句。「日記買ふ」の軽やかさとの対比もいいと思った。

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132 色ばかり食べてるような色のグミ 
<特選> 鯖,少,雪,白,は,光,助 (14 点) <並選> 鯖鯖,少少,雪雪,白白,はは,光光,助助,珍,森,蓬,ち,甘,子,ひ,朧,藤,寝,芽,黒,じ,千,彗,知,裏,崖 (32 点)
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崖◯【評】人気句になりましたね。いやはや、すごいです。アメリカといえば、あのケバケバしいグミですし、お題の解釈としても凄いと思います。

甘◯【評】真っ白い部屋一面にジェリービーンズがばらまかれてるイメージ。ポップでキュート。色彩感覚に訴えかける句。

森◯【評】個人的にアメリカは感じられなかったけど、お題抜きにいい句だなぁと思い選。あのどぎつい色って身体に悪そうなんだけどそこが魅力的でもある。グミは食べないけどM&Msは好きです(なにその報告)

少◎【評】極彩色のグミ。とてもじゃないが、おおよそ何かわからない味。以前、ボンコバ先生が「言葉を飲んでる」と表現した事があったが、与えれば色も味に変わるんだろう。

珍◯【評】色だけ、形だけ、アイデアだけの(舶来)菓子、あるある。と納得させる表現の巧みさおもしろさにただただ感心。特選句に比べるとアメリカがやや遠かったので並選に。まず浮かんだのがハリボなもので。

藤◯【評】ああいう体に悪そうなお菓子って食べてると舌がしびれて味がわからなくなりますよね。もうやめたいと思いつつ、食べ尽くすまで食べて体のなかを色でぐちゃぐちゃにしないではいられない感じがすてき。

鯖◎【評】みた瞬間に特選だと思った。以上。

蓬◯【評】よく見ると文法がおかしい気もするんだけど、伝わるものがそれに勝る。あの甘さは確かに「味」ではなくて「色」。

寝◯【評】グミがいまだに良くわかりません。ガムでもアメでもなく、まさに色を食べている。素直に共感しました。

光◎【評】アメリカと言えば原色の食物。「味」と呼べるほど繊細でない、もっと暴力的な味覚の印象が「色を食べる」に凝縮されている。アメリカのあの食べ物達がくっきり思い起こされて特選。

ち◯【評】本当にそうですねぇ。アメリカ縛りのお題で、あのグミのグミグミしい色を思いつかれたことにただただ敬服。

子◯【評】自分では青いケーキをうまく句に出来ないでいたが、そうか、色って言えばいいのか!と驚いた。グミといえば感触とか形だと思うけど色か、と。でもグミといえばハリボなので特選に出来なかった。

朧◯【評】あのけばけばしい食べ物は、味じゃなくて色を食べてたのか!(ぽん!)と言葉にしてもらってすとんと腑に落ちました。

白◎【評】アメリカ色のパレットを見せられたことにも、はっとしたが、味を食べてない食べ物の存在にもはっとした。

帽 【評】口調がカマトトな感じ。「あるある」としても弱い。個人的にはグミはドイツのイメージだけどそれが禍したわけではありません。

黒◯【評】カラフルなばかりでどれを食べても同じ味のあのグミのことですね。「グミ」ではなく「色」を食べるとしたところが面白いと思いました。

雪◎【評】あのグミだ、と一気に了解させる力がすごい。食べている自分まで絵の一部になりそうな、なげやりで少し怖い平面感もよかったです。この平面感はわたしの中のアメリカだった。

知◯【評】アメリカのお菓子の色はまさにアメリカなので。グミよりジェリービーンズやキャンディのイメージだけど、2文字のものがグミだったのか。

じ◯【評】僕は印象としては歯切れの悪さを漠然と感じましたが、そこが着色料たっぷりのグミっぽくてなんかいいなぁと思いまして取りました。

ひ◯【評】馴染みの駄菓子屋に大人を連れてゆくのって、何だか面映かったものですが、それは大人にとっても面倒な行為。苦虫を噛む様に放り込んだグミが柔らかい。ジェリービーンズだった…ジョン・レノン気分。

芽◯【評】グミ、それもシュガーコーティングされたジェリビーンズが浮かびます。外もすごいけど、咬んだ中の色もすごいのがいっぱいマシンに詰まってる、いろんな色の塊。舌もすごい色に。

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133 残り火や二つ名付きて年を越し 
<特選> <並選> 崖 (1 点) 
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崖◯【評】あれ、この句が無得点なんですか・・・ちょっと信じられませんでした。うーん。「年を越し」は俳句的ではないかもしれませが、二つ名と年越にカタルシスありました。

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134 NYの冬がつらくてDJ帰国 
<特選> <並選> は,じ,知,助 (4 点)
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知◯【評】NYの冬はつらそうですが、それくらいで帰ってくるDJに意気地なしと、言ってやりたくてとりました。

じ◯【評】アホらしいのに良いなあと思う。「寒い、帰るわ」くらいで帰ってこれるこいつは大物だよ。

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135 蕩尽の渡米前夜や冬座敷 
<特選> <並選> ひ,碍,幽,芽,茅 (5 点)
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茅◯【評】「俺アメリカ行く」とかかっこつけても実家で荷造りはするんですよね。畳の部屋にベッド置いてありそう。行く前からちょっと寂しくなっていることは気取られないようにしないと。

幽◯【評】前半のテンションが、下五の冬座敷で急に冷え切った感じが良かった。ふっと我に帰ってる。さっきまで賑やかに感じた渡米という2文字も不穏なものに見えてくる。

碍◯【評】選句してから気づいたけど、これもしかして、渡米前夜の送別会で蕩尽てこと? そうじゃなくて、戦前とかに、留学の心構えを説く父の前で「渡米したら蕩尽してやろう」と不敵な思いを抱いている、と読みました。

ひ◯【評】博打事の本場に向かう心構えか、書生の外遊か(メキシコだと良いな)、いずれにしても、きりりとした寒さが感じられました。行ってきますと仏壇に手を合わせる。

芽◯【評】ご遊学か。皆で集まりはなむけの宴をした後のうら寂しさを感じます。集まった人全員が渡航を喜んでくれているわけでもなく…ちょっと行きたくなくなっちゃってたりして。

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136 ニューヨーク同じ緯度ですそうですか 
<特選> <並選> 子,朧,重,千 (4 点)
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子◯【評】NYと同じ緯度はどの辺りなのかしら。米以外の国で、ニュース画面に大雪のNYでも見ているのかも。同じ緯度だものそりゃ寒いよね、と。特に何も言ってないけど冬以外の季節が想像出来ない。

朧◯【評】気づいたときはもっと気持ちが大きくなりそう(うっわ同じ緯度!)だ。でも棒のようによむこの作者のセンスが好きです。

重◯【評】同緯度であることを謳う町の広報とかがあるのかしら。ニューヨークなら同緯度であることを誇示してみたくなる。が、ニューヨークでさえ同緯度であることにそんな感慨はないよな、といろいろ同意。

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137 チェルシーに霊集まりし淑気かな 
<特選> 林,知 (4 点) <並選> 林林,知知,帽,幽,栗 (7 点)
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林◎【評】どういう土地かは実は不勉強で分からないのだけど、冬のつめたく清々しい空気のなかで霊たちが新年を寿ぐ情景(というか透明で静かなムード)に魅かれた。独立戦争とは無関係かな…他の方の解釈を頼りたい。

帽◯【評】どういう土地かはうっすら知っているが中七下五との関係は知らぬまま採った。中七の着想と下五の季語選択、そして〈かな〉と、形も言葉選びもぴりっとしてる。

幽◯【評】チェルシーに対するイメージがまるでないのですが、「霊」の文字で古い時代のアメリカをイメージ。下五で霊たちのあっけらかんとした感じが出てきて楽しい句です。

栗◯【評】シドヴィシャスの最期の地であり、ディランら多くの芸術家が暮らしたNYのホテル。新年には今はなき才人たちの魂が集うのか。近くに住んだことがあり、グッときた。淑気という季語を初めて知りました。

知◎【評】シド&ナンシーやパティスミスも住んでいたホテル。NYの象徴の一つ。色々な有名人の霊がいそうで、ゾクゾクします。淑気よりおどろおどろしいイメージですがチェルシーで霊というのが良いです。

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138 焼けた肉でっかいかたいおおざっぱ 
<特選> ち,飼 (4 点) <並選> ちち,飼飼,妹,白,藤,は,彗,炭,助 (11 点)
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妹◯【評】「焼けた肉」が違う語でも充分アメリカっぽくなりそうな句。アメリカといえば、問答無用で大味、ってイメージ。

藤◯【評】外国といえば雑!いちいち雑!という私自身の思い込みを後押ししてくれる句。句自体の雑さもまたよし。

ち◎【評】句自体がおおざっぱに作ってあってすごい!「大きい」んじゃなくて「でっかい」を選んでてすごい!まったく力みがない句ですごい!パーフェクトな「おおざっぱ感」に圧倒された…

白◯【評】まるごと大雑把だなあ。なんか、慣れない英語で肉の感想を言っているようにも聞こえました。

飼◎【評】このイメージはまさにアメリカ。口に出した時のリズムもいい!

炭◯【評】アメリカへの偏見が詰まった句。同じく偏見でテンガロンハットの父とがっちりした母、デブの息子のBBQパーティーをしている景が浮かぶ。ホームパーティに誘われても遠慮しておきたい。

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139 冬トンネル抜ければ光ハワイかな 
<特選> <並選> ひ (1 点)
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ひ◯【評】トンネルは薄暗い搭乗ゲートか、それとも円筒形の飛行機の胴体を指すのかな。高度成長期の幸せな「洋行」を感じました…トラベルではなく、ツアー。

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140 プロテイン抱え白い歯それワンツー 
<特選> <並選> ち,黄,じ,地 (4 点)
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ち◯【評】実際のところ、こんなアメリカ人にはまだ出会ったことがない。メガネに出っ歯でカメラを胸からぶら下げてる日本人、のアメリカ版かしら。「それワンツー」のいいかげんさが好きです。

黄◯【評】西海岸。カリフォルニアの青いバカって感じで楽しくて良いですね!こういう脳天気で陽気な一面もアメリカならでは。「それワンツー」が更に拍車をかけて。あぁ愉快

地◯【評】最高にバカバカしくて素敵です。「それワンツー」がたまらなくいいです。声に出して読みたい。バンダナとタンクトップが似合いますね。

じ◯【評】なんかもう全体的にわざとらしさが出ててすごくアメリカっぽいなぁと思って笑って取りました。プロテイン抱えたままなんて普通無いですよね。

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141 ジム・ヘンソンじっと見つめる鏡餅 
<特選> 凡,彗 (4 点) <並選> 凡凡,彗彗,蓬,く,C,炭 (8 点)
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く◯【評】じわじわきた。次に新登場するマペットに期待。(ジム・ヘンソンだからこそ成り立つおかしみだなあ)

C◯【評】作者の着眼点とセンスにただただ脱帽。いや嫉妬。どうやったら鏡餅ジム・ヘンソンを結び付けられるのだろう。

蓬◯【評】存じ上げなかったので検索。セサミのパペットを作った人か! みるみる浮かんできました。視線の先でみかんに笑顔が現れ、丸餅に手足が生えてくる光景が。

凡◎【評】「おおざっぱ」的に揶揄するのではない、優れたアメリカの印象を、人名でうまく俳句に持ち込んだ。ジム・ヘンソンでは生半可な句はもうよめなくなった、と思うほど(その材での)決定的一句が出た!

炭◯【評】セサミストリートの生みの親ですか!じっと見つめる彼の頭に、新たなキャラクターが生まれているのでしょうか。日本とアメリカの二物衝突も好き。

彗◎【評】うちは昔からプラスチツクでコーティングされたのを使っていて。マジックペンで目や口を書いて遊んでいた。彼なら独特の方法で動かしていたのではあるまいか。時間切れで諸事情により一つだけ選評。

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142 コロンボの肩にシーズン初の雪 
<特選> 蓬,く,鶴,裏 (8 点) <並選> 蓬蓬,くく,鶴鶴,裏裏,珍,妹,朝,黄,甘,子,碍,雪,白,藤,夕,茅,知,巻,栗 (23 点)
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甘◯【評】画面越しに感じる冬の到来。天気予報じゃなくてドラマで知るってのがいいな。なんとなく当たり前に見過ごしちゃいそうなのに、そこにちゃんと気付くことに作者のコロンボへの愛を感じる。

妹◯【評】「シーズン初の雪」っていう言い回しと、一句通して発声したときの気持ちよさ、好き。肩の雪は天然なのかな、降らせた雪なのかな。コロンボが架空の刑事であることを、強く意識させられた。

巻◯【評】なんともすてきです。そのまま光背になるような雪。

茅◯【評】「シーズン」は「第2シーズン」とかのドラマのくくりかも。冬休みの一気見で早回しの季節感がようやく今とリンクして、連続ドラマだから季節が移り変わるんですよね、そういえば、と。

夕◯【評】あのくすんだ色のコートにはらりと落ちた雪。コロンボは気づいたかな。気づいたら「うちのかみさん」に話すかな。すごく渋い感じもするのに想像を掻き立てられて少し楽しい気分にもなります。

珍◯【評】「雪」はフケのメタファーか? とすると「シーズン」もドラマの区切りのこと? と思って外しかけたのだけど、その読みは意地悪すぎた。素直に取っていい句だなと。コロンボの「雪かあ」でエンディング。

藤◯【評】テレビのこちらとあちらでは季節が違って当然。そんなこと慣れてる。でもシーズン初の雪は、こっち側がどんな季節でも、なぜだかこっちの肩にもいっしょに落ちてくる気がする。かもしれない。

く◎【評】上手い!よれよれのコートに真っ白い雪。コロンボっぽい!考えてみると、夏のお話もあるはずなのに、コロンボはいつも冬のひとみたいな気がする。

子◯【評】コロンボといえばあのよれよれのコート。それを直接言わなくても、「肩に雪」の言葉だけであのコートが思い浮かぶ。こどもの頃に持つアメリカのイメージはTVの中にあったから、これはとてもアメリカ。

鶴◎【評】参りました。迷わず特選。一番アメリカを感じた句。それも「よい」アメリカ。好きなコートをずっと着るのも、コロンボみたいな刑事がいるのも(ドラマがあるのも)、肩の雪を払わないのも。かっこいいぜ。

白◯【評】コロンボの時は、ドラマを「第×シーズン」って言ってなかったかもですが、毎年肩に初雪をのせて、それが永遠に続くような、いい意味で作り物っぽいアメリカを思いました。

黄◯【評】「シーズン初」にやられました。そうきたか。と。ドラマ撮影で作り物の雪が降っていたスタジオ。スタジオを出ると今まさに初雪が。なんてドラマチックな出来事の後の一句のような。

栗◯【評】よく考えたらコロンボはLAが舞台だから雪は滅多に降らない。引っ掛けだが、それすら虚構の街ハリウッドにはありかと。アメリカの夜のように。シーズンは日本ではバラして放映されてたから季節と取った。

雪◯【評】シーズンって、季節のことじゃなくて、「TVシーズン」っていう言葉がある! と驚いて。新しい言葉を発見してもらった気持ちでした。TVドラマの作り物感と、自然物の雪のぎこちなさもいい。

知◯【評】コロンボが少し懐かしくアメリカらしい。LAは雪は降らなそうだが、いつもコートを着ているので、冬のイメージがある。コロンボの肩に雪というのがいい。

碍◯【評】これって事件解決後だよね。エンディングテーマが流れる中、後ろ姿の刑事の肩にひとひらの雪……(って、コロンボって、こんなふうに終わるんだっけ?)。ピーター・フォークへの追悼句としても読めます。

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143 自由といひ正義といふ国初明かり 
<特選> <並選> 珍,朝,碍,鯖,鶴,飼,林,崖 (8 点)
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崖◯【評】あまり風刺があるのも俳句的ではないので迷ったのですが、あそこまでいくともうユーモアの世界だから、諧謔と解釈しました。ちなみに、川柳の方々と句会したことがありますが、違和感なんしだった

林◯【評】端正な表現。巨きな国の功罪を十七字に圧縮することで冴えた風刺になるんだなと、俳句の面白味を感じた。初明かりには今後への不安も希望も見える。人の世に何があろうと太陽は淡々と昇るなぁ、とも。

珍◯【評】ストレートな風刺に腰が引けつつも、「初明かり」には期待や希望も読み取れるし、なによりスケールのデカさに惹かれて○に。形もカッコいいですね。

鯖◯【評】最初アメリカを斬る的な句かと思って外したけれど風景として読んだらけっこういいかもと考えなおした。

鶴◯【評】アメリカという国の持つ悲しさのようなものが伝わってきました。鳥瞰の摩天楼にそそぐ、優しい初明かり。せつない。

飼◯【評】大言を掲げ好き放題する厄介な国。正直うんざりしているのだけど、新しい年の明かりにわずかでも希望を託したい。

碍◯【評】シニカルな上五中七につけた下五の玄人っぽいセンスがいい。大義を振りかざす国にも、その敵である国と同じように、元旦はほのかな初明かりからはじまる。一年の始まりを大きなスケールでとらえた句。

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144 うす味の母の味噌汁アメリカン 
<特選> <並選> 里,少,雪,光,大 (5 点)
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里◯【評】お題がアメリカなのにすごく和風。語呂も良く素直に笑いました。季語がないのが気になりましたが、「味噌汁」であるからこその日常的な残念感がありました。

少◯【評】うちの母がインスタントみそ汁に、「塩分多いから」って多めに湯を注ぐんですが、意味がない!実体験すぎます。

光◯【評】身近に存在する「アメリカンコーヒー」から想起されて、薄味の汁を「アメリカン」と表現するところが、「日本人の中の最もステレオタイプアメリカの印象」をあっさり表現していて良かった。

雪◯【評】日本の中のイージーアメリカ観が、日常からふつうに出てきたところが好きです。調子のいい兄が食卓でこっそり言い出して、母親以外の全員がにやにや。実はなかなか思いつかない言い回しでもあると思う。

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145 あいつだよ町を救ったヒーローは 
<特選> 森,妹 (4 点) <並選> 森森,妹妹,黄,光,大,栗 (8 点)
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森◎【評】いちばんアメリカっぽさを感じ胸が高鳴ったので特選。前日の大活躍劇、それが翌朝すぐ、皆見たかのように噂と広まる光景がはっきり目に浮かんだ。町の一員になったような心地良い感覚。

妹◎【評】言いたい!街じゃなく「町」なのが、スーパーマン的でない「俺達のヒーロー」っぽくて、皆に英雄視されてる感がより出てる。『ザ・スター』の長瀬優也か、あいつ。話は日々、大袈裟に盛られていきそう。

光◯【評】「町」に「ヒーロー」がいる。アメリカじゃないか。噂されるヒーローが肩で風をきって田舎町を歩いている光景が浮かんで笑えた。

黄◯【評】強いアメリカ。ヒーローっていかにもアメリカンな感じがして好印象。かの国ではいつもヒーローが待望されているし待望しているんだろうな。

栗◯【評】スモールタウン・ヒーローは、アメリカ映画ではおなじみの題材。街ではなく町。昨日まで彼を無視していた人たちが手のひらを返すさまが、見えるようだ。よくも悪くも、その単純さがアメリカらしい。

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146 悪い子はハンバーガーに挟んでやる 
<特選> 千 (2 点) <並選> 千千,屁,里,幽,は,飼 (7 点)
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里◯【評】ハンバーガーに挟まれると、むしろ嬉しい気もするが、もしアメリカで本当に「おしりペンペン」的に使われていると想像したらすごく面白い。子「ハンバーガーに挟まれるのだけは嫌だあー!」

幽◯【評】そんなに嫌なことじゃない気がするんです。ふかふかして楽しそう。言ってる当人も形だけしかる形式を取ってるけど、そんなに怒ってないんでしょうね。その距離感が良かった。

飼◯【評】現実のアメリカはこんなに甘くない。挟むかわりに挽肉にしている。でもこれ位の国になって欲しいと思うので。

屁◯【評】人を挟めるくらいおっきなハンバーガー。アメリカならありえるな、と。全体的ないたずらっぽさもアメリカらしい。

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147 テキサスで殺されて早三十年 
<特選> <並選> 朝,ち,朧,科,C,黒,じ,地,千,栗 (10 点)
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C◯【評】誰の視点かで味わいが変わる。面白おかしい、楽しい句。殺されてなのに「お客様に愛され続けて30年」と同じ意味なんだ。

ち◯【評】本当は殺されてないのでは!生きてます!腹の傷を自慢気になでながら牧場とかやってる姿が水晶玉から見えました!ぬけぬけのうのうとしすぎてます!

朧◯【評】慰霊碑なのか墓なのか、そうゆう無機物を目の前にしてよんだのであってほしい。人はまわりに居なくて砂まじりの風だけ吹いてる。

黒◯【評】三十年前に殺されたってことは、この人は幽霊?「殺されて」とか物騒な言ってるわりにはのほほんとしている感じ。

栗◯【評】悪魔のいけにえ!!テキサス・チェーンソー・マサカーが、まさか哀愁ある句になるとは。これぞアメリカの底知れん、でかさだな。被害者の視点からの無念が感じられるのがいい。

科◯【評】広大で粗野な雰囲気を、「広大で粗野」という言葉を使わずに表現している。主人公以外はもう事件を憶えてもいないんだろう。「殺」の字を使っているのに陰湿でなく、むしろドライで陽の光を感じさせる。

地◯【評】「早三十年」が特にいい。五十年も百年も死んでいる事は継続していくのに数えてしまった所がいい。無念さがまったくなく、さっぱりとしている。物騒な感じがないのはなぜだろう?

じ◯【評】「今」詠まれた句じゃないような気がする。テキサスってどうしてもガンマンなイメージだから、三十年後のその時は、現在からさらに何十年か前な気が。しみじみとしてしまいました。

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148 アラスカの日輪白く海豹来 
<特選> 波 (2 点) <並選> 波波 (2 点)
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波◎【評】アメリカというお題の中で、ほかの句が、アメリカとの差異やアメリカの特異な点を詠もうとしている中で、この句にある寒さは、私たちにも想像される、いわば共通点を詠んでいると思えた点に感嘆した。

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149 初詣セント一枚投げ入れる 
<特選> 地 (2 点) <並選> 地地,森,妹,く,屁,丼,寝,重,光,林,彗,裏 (13 点)
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林◯【評】シンプルながら、アメリカに暮らす日本人たちのお正月を感じた。海外にいる時の方が、日本の文化を大事にしたくなるものかも。日本食のスーパーではkuromameやkintonが売られているだろうか。

森◯【評】日本の正月とアメリカを強引にぶつけてなお清々しい心地よさを感じた。もちろんウエスタンな格好で、親指で弾いてお賽銭して欲しい。そのあとやっぱり十字を切るのかしら。

丼◯【評】円高ですものね、1セントなんてお賽銭ぐらいにしか使えないよね、と投げ入れる不届きなところがハードボイルドでアメリカンな感じです。

く◯【評】かっこいい。この神社はアメリカだといいなあ。セント玉を投げ入れるのが、敢えて、ではなくて普通の行為であってほしい。しかしこのセントは1セントなのだろうか…(1円じゃん!)

光◯【評】「よくばりでもケチでもない額の小銭ね」と説明されて、よくわからずに自国のコインを投げ入れる。そんな「初めての日本文化」が伝わった。アメリカの印象でなくアメリカ人からの印象という逆説が光った。

寝◯【評】アメリカで初詣に行ったら、お賽銭の相場は1セントなのかしら。そうかー、そうだよな。円以外のお賽銭が新鮮に感じました。

地◎【評】アメリカとお正月が同居しているという理由で特選。他の言葉は普通なのに、「セント」でビクッとした。日本の神社で日本人が投げ入れていたほうがうれしい。(なら、アメリカの句じゃないのか?)

屁◯【評】一攫千金の夢舞台としてのアメリカと、その夢に破れた男の再出発のワンシーンを想起。というとカッコイイけど、懲りずに「一山当てられますように」なんてお願いしているような気もする。

重◯【評】リービ英雄っぽい。いや彼なら日本円を入れそうだが、でも「っぽい」。賽銭箱に入った音や、鐘を鳴らす音や、拍手の音を詠み込まなかったのが功を奏しているような。賽銭箱の中身を想像してまた楽しくなった。

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150 右に炎左に板持つフランス人 
<特選> <並選> 蓬,少 (2 点)
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少◯【評】コスプレというにはあまりに雑な装備。周りに言われイヤイヤだったはずが、最後はノリノリになってそうだ!

崖 【評】フランス人が人智を超えた能力を持って「炎を持てる」時、それはアメリカ人になった瞬間だと思う。つまりは移民である。まぁ、フランスも移民受け入れは積極的だけど、英語通じないし

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151 寒紅のなほ艶めくやチェリーパイ 
<特選> 珍,夕 (4 点) <並選> 珍珍,夕夕,朝,波,屁,里,ひ,寝,芽,光,地,林,巻 (15 点)
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林◯【評】コケティッシュな女性の唇に見とれているおじいさんが詠んだ(寒紅という言葉が渋いので…)と勝手に想像して、なんだか萌えました。「なほ」は「ますます、いっそう」の意味と取ったけれど、どうなのだろう。

里◯【評】チェリーパイ大好きなので選びました。チェリーパイは春のイメージなので少し気になりましたが、唇とチェリーパイの両方が相乗効果で艶めいているのが、セクシーで美味しそうでした。

巻◯【評】ヴィヴィッド! あるいはヴィヴィッドすぎて、結句の空白にチェリーパイを投擲するような豪放な感覚。

夕◎【評】ツインピークスしか浮かばなかった。あの青っぽい画面に毒々しいほど艶めくチェリーパイ。あのダイナー行ってみたかった。

珍◎【評】季語の「寒紅」とチェリーパイを取り合わせてお題をクリアする手際の見事さ。いつまでも艶めく紅色の毒々しさもアメリカ的。うまい、と思いました。

波◯【評】そうそう、アメリカンチェリーはつやつやとした赤と黒の色で、日本には確かに無い色をしているよなあという驚きを感じつつ、眺める先には金髪で赤く唇を塗った女がチェリーパイなぞ食うておる。

崖 【評】なほが少し気になる。艶めくこともチェリーパイであれば提示された時点で分かるので省略可。とはいえ、寒紅のチョイスはいい。チェリーとかぶるがもう1つ赤みを入れると、凄い句になる予感

光◯【評】毒々しく艶めくチェリーと寒紅のぽってりとした唇の色っぽさ。手で直に食べて、指なんか舐めちゃうんだ。アメリカだ。

寝◯【評】真っ赤な口元に運ばれるツヤツヤのチェリーパイ。見入ってしまいますよね。まるでその光景を見たかのように、見入ってしまう句でした。

地◯【評】これは「ツインピークス」でしょう。あの寒々とした町の深紅のチェリーパイ。これはわたしの考える「裏のアメリカ」のイメージ。ドラマの登場人物のように陽気なイメージではなく、影の部分。

屁◯【評】ぶっちゃけアメリカ感はあんまり感じなかったのですが、映画『タンポポ』のような食のエロさにほだされました。

ひ◯【評】チェリーパイの光沢よりも、描かれていない登場人物の唇の艶やかさを妄想してしまいました。口紅の、春の新色のポスターの様な。

芽◯【評】母親手製のチェリーパイの艶やかさと寒梅の初春の華やかさに温かい感じを覚えました。どっちかと言うとさっぱりしたイメージを持ったのです。

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152 ギターよりバンジョー軽し松の内 
<特選> 好,酒,巻 (6 点) <並選> 好好,酒酒,巻巻,帽,碍,鯖,丼,重 (11 点)
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酒◎【評】ギター属の楽器を全般的に演奏する奏者は、ことカントリー方面には少なくない。音色の必然ではなく、持ち運びの楽さで楽器を選ぶ気楽さは、いかにも年始のセッションらしい。古い日本語と米楽器の取り合わせもいい。

巻◎【評】たしかにバンジョーはギターより軽そう。思わず膝を打つわたし。そしてブルーグラスと「松の内」との(メタ領域での)接近遭遇の楽しさ、軽やかさ。◎。

丼◯【評】新春寄席に色物として楽器をもった三人組が登場しました。軽やかなバンジョーの音色が新年を寿ぎます。その後、のこぎりに全部持っていかれてしまうのですが。

鯖◯【評】寄席だな。アメリカじゃない。でも日本におけるアメリカ文化の受容と変容を考えるうえで外せない風景なんですよ!とか言い訳して並選。

好◎【評】そうなんですよ!バンジョーはギターより軽いの(すべてではないけど)。松の内のおめでたさが何故かぴったりするなあ。ナッシュビルのお正月ですね。

帽◯【評】季語から想像するに浅草芸人(なんとかボーイズ、みたいな)。めでたい。素直にめでたい。

崖 【評】音楽についてまったく興味がない私がこの句に魅せられる理由は軽いという発見と松の内という限定された時間にある。明ければ再び、ギターが軽くなるのだろう。そう想起させる力があるのだ

重◯【評】「ナントカよりナントカ軽し」という構文が好きで選んだ。松の内という語は、新年の季語にしては時間の幅がある面白い言葉ですね。寄席の情景はみなさんの評を読んでやっと浮かびました。

碍◯【評】流しのギター弾きは、お正月の松の内だけ、ギターをバンジョーにもちかえるのね。ふだんは哀愁漂う曲を弾いているのに、お正月はバンジョーにふさわしい軽やかな曲。お正月らしいおめでたい感じの一句。

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153 双六の骰子振らぬ星条旗 
<特選> 丼 (2 点) <並選> 丼丼,帽,妹,甘,林 (6 点)
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林◯【評】意味わかってないのですが、ピシッとした表現が気になって選。政治音痴ごめんなさい。短い俳句の中では隠喩や換喩って活躍するのだなぁ(季語もその類??)、そういうことも考えて作ってみたいなぁ、とも思いました。

甘◯【評】アメリカは運を天に任せる国じゃなくて自らルール作る国だもんなと。それを双六に例えたのが上手いなぁと関心。しかもちゃんと季語だし凄い!

妹◯【評】世界が大きな双六盤だったとしたら、サイコロ降らずに進みたい数だけマスを行くのがアメリカ、ってイメージはどっかにある。双六じゃなくて桃鉄だったとしても、やっぱりレアカードしこたま持ってそうだ。

丼◎【評】パワーゲームの覇者はゲームの支配者であり、骰子は振りません。パクス=アメリカーナだ感謝しろとばかりの傲慢さが透けて見えるようです。そんな時代ではなくなりつつあるのでしょうが。

帽◯【評】川柳のような諷刺解釈はヌルくて退屈なので敢えて俳句的に空想するとこの双六は世界一周双六。川上澄生ふうのレトロ異国情緒デザインの。めでたくていいでしょ。

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【なんでしょう句会 「アメリカ」評】togetterまとめ
 http://togetter.com/li/239211
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