第五回【なんでしょう句会】投句一覧

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〇お題1 若布
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1 点鼻薬しゆるしゆる若布戻る水
2 みそ汁のわかめのどこか異形なる
3 淋しさやわかめスープの長い匙
4 厨暗し女三代若布炊く
5 湯気立ちて昆布と若布黙礼す
6 底にワカメなにもかもうまくいきます
7 漆椀若布見えぬと言い訳す
8 水面の月に触れたき若布かな
9 昨晩の若布シンクにひっそりと
10 狐狸庵やワカメスープもワカメ過多
11 午前2時乾燥わかめは膨れたる
12 ひらりゆらり気泡に煽られ舞う若布
13 ひととせを漂ふばかり若布かな
14 隣室に若布引きづる幼女をり
15 暗がりのお椀にふえてゆくわかめ
16 若布食ふ兄嫁やがて乾ききる
17 若布はな侵略種だと力説す
18 淋しさや豆腐にワカメ貼つてみる
19 シャラリラと乾燥ワカメ鳴らしをり
20 もどさない若布やプラスチック片
21 俎板の若布をつかむため睨む
22 給食のわかめご飯や男子女子
23 姑や若布の塩抜き忘れおり
24 美人海女殺しの凶器初わかめ
25 わかめだけすくって椀を戻す人
26 思春期の人魚のリボンみな若布
27 三陸の若布の匂い思ひ出す
28 春雨や玉子スープのワカメゆれ
29 海坊主若布かぶりてIs This Love
30 わかめ吸ふときは多めに汁を吸ふ
31 こわいものが増えたボウルに照るわかめ
32 若い布と書いて若布や露たたへ
33 もうワカメ食べられないよムニャリムニャリ
34 訃報あり煮過ぎたわかめ味噌に浮き
35 舌痛き干若布なり山背風(やませ)吹く
36 人魚だろう口からわかめが垂れている
37 ワカメスープ生まれた日に摂る孝の国
38 持ちかける旅行のはなし新若布
39 ぎゅぎゅぎゅっと絞って若布と鉢に盛る
40 亡骸も若布も同じ海に在り
41 憤怒せり濡れし若布で頬を張る
42 家々に若布めぐりて里知らす
43 柔らかな若布に託し恋歌う
44 おみおつけ若布で出汁取る幼妻
45 帰るたび若布すすめてくる母よ
46 母老いぬ若芽の汁の味薄し
47 目を瞠る魚の隣の若布かな
48 若布などずつと嫌ひと妻が言ふ
49 責められてワカメになっていく三時
50 野球場かたく握った若布飯
51 湯気に消ゆ乾燥わかめひとつまみ
52 海中のデータ読み込む若布かな
53 へばりつく若布無人のスープバー
54 エアポートワカメ捨て泣く女子四人
55 ワカメ待つカップの底にて復活を
56 若布だけ自由に泳ぐ椀二つ
57 思われていたはずでした若布ぬた

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〇お題2 右
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58 右だけ度ワタシ前から知ってたわ
59 薊咲くあたりが仮の右中間
60 春山に踏み迷いけり右大臣
61 ようちゃんがガラスの右腕(みぎ)で注ぐビール
62 花いちご右手は海の道ぞひに
63 春の野に新右衛門さん転びたる
64 風光る右目が先きに見えなくなる
65 春雨や五十鈴も濡れる右太衛門
66 二重跳び右へ右へと春の宵
67 コストナー右回転し春来る
68 三月の右乳ばかり吸う子供
69 春はいま右へと通り過ぎました
70 白梅やランナー消えし右カーブ
71 振るために右手を出したはずだった
72 邂逅は右に左に養花天
73 白魚の右目をつまようじでつぶす
74 春歩道右手を上げて一年生
75 11の右に読点打ちて、春
76 佐保姫も初心ね右ワキ処理甘し
77 落椿指輪右手に付け替へり
78 右ねじを説く君の手や試験前
79 右折車のスモールランプ春の宵
80 草萌ゆる上り列車は右が吉
81 夜桜やみな右巻きに散りぬるを
82 ひとまずは右に除けたり春大根
83 右手にはぼんやりとパリ花ぐもり
84 春めいて右手が君の頬触れる
85 右と言う手には箸の朧かな
86 右車線陽炎を踏むデモ行進
87 右の眼を欠いた親猫伸びる午後
88 右頬を差し出してゐる春愁
89 右袖をめくり見るきずキスで消す
90 一度箸を持つ仕草してから右を指す
91 教室は窓が右きき向け黄蝶
92 右腕の橈骨神経麻痺や春
93 無計画右往左往の伊勢参り
94 右隣男子の座る耳鼻科かな
95 右へならえ指先触れる卒業式
96 春泥や膝に預けし右の耳
97 雀右衛門黄泉の桜に舞ひをるや
98 右肩に仔猫を乗せてテトと云う
99 春雷や右手に文庫左に君
100 茂吉忌の送球逸れて右に落つ
101 春の鳥右肩に爪を立てており
102 右前の家のミモザよさようなら
103 恋に解なし右に回すんだっけ螺子
104 草餅を咥ふ右手のキツネ逃ぐ
105 春ショールつなぐ彼女は右が好き
106 下萌やいずれお前の右に出る
107 チューリップ右頬だけの笑窪かな
108 春の恋全部右脳のせいにする
109 春の酒ならんで右にあたるひじ
110 春風や右手にカスタネットの子
111 右袖をまくりて春の日射しかな
112 右の奥歯にスイッチが春疾風
113 交差点右へ曲がるの声は無く
114 開幕や左打席は右の方

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〇お題3 家電しばり
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115 春日にて傷目立ちたり黒電話
116 コードレスアイロン遍路の如く踏む
117 春昼や吸引力の落ちぬ妻
118 春灯10年光るぜLED
119 佳き聲の炊飯器あり春の暮
120 銀婚の哀しきズボンプレッサー
121 掃除機の尻嗅ぐパグの尻や春
122 夜更けへのラジオとともに猫さかる
123 東風吹いて島の午前のラジオかな
124 充電器にもテレビにも春光線
125 涅槃西風ラジオで枝雀ちょける夜
126 春眠しモーター音さえここちよく
127 小春日や明日はテレビも届くかな
128 音のない家電揃いし春のよかん
129 春の闇触れるものみなレンジでチン
130 プラズマを流れる桜花裂く末脚
131 美顔器に積もる埃や初蝶来
132 花曇りミシンをかける音ありや
133 朧夜の脱水の音薫りけり
134 押し込んだ再生ボタン春の闇
135 レンジから蝶が生れる思考実験
136 留守電の伝言消して悔やむ春
137 春の昼電気ケトルは待たせない
138 三月の節電タップの全落とし
139 チャンネルの仇敵の注ぐ春の酒
140 アイエイチ意味知らぬまま炊く米ぞ
141 乾け染み彼が来るまであと二分
142 ココマデの線ひたひたに水の春
143 春の昼ねむい毛玉取り器うるさい
144 液晶に容れて持ち寄る桜かな
145 炊飯器持って駆けたいほどに春
146 春塵や各社共通紙パック
147 吸引音白きかかとを眺め春
148 荷風忌やアナログテレビまだ映る
149 ラジカセの◎(マル)貝ボタン貼るや祖父
150 電源を入れずにぬくい春炬燵
151 あたたかやルンバのほかはみな眠る
152 げんげ田へつまみを回すテレビかな
153 ステレオのための北窓開けにけり
154 洗濯機の渦に乗りたる土筆かな
155 欲しいのはルンバ都々逸花筏
156 畏れなき電子レンジや染卵
157 ついたてのごとき52インチかな
158 パンを焼くときは目盛りを少し右
159 なあルンバ君はアトムの祖先かい
160 昼ごはん合格の鐘背で聞く
161 春光や除湿機に海見せられき
162 亀鳴くやファックスが吐き散らす夜半
163 そうじきの音で春眠破られり
164 花白し電気毛布にくるむ夜
165 春塵やうなるプラズマクラスター
166 受難節ミキサー何もかも砕く
167 ビデオデッキの真実の口春浅し
168 鯥五郎ベッドの下の埃食む
169 啓蟄や脱水槽よなぜ騒ぐ
170 卒業の朝電子レンジは静か
171 絨毯の放熱だけの春の宵